3 私の親友
「芽衣、大丈夫だった!!」
次の日、登校した途端に楓が私のもとに走ってきた。
「大丈夫。楓にあのメール送ったのも、助けてもらった後だったし」
彼が寝てから、男の人に言い寄られていたせいで反応できなかった、楓からのメールを返信した。
途中で私からのメールの更新が途絶えたせいで楓からは心配メールが山ほど着ていた。
申し訳なかったので、さっきまでの現状を説明したら、また心配された。
「それでも、心配するよ。だって、芽衣は私の大親友だし」
「ありがとう。私も楓のことは親友だと思ってる」
「ありがとう!それで、どんな人だった!楓を助けた王子様!!」
楓の目が興味津々でキラキラしている。
「そんなに気になるの?」
「気になるよ!!!だって、芽衣が絡まれているところに『お前ら、うるせぇ!!』って言って助けてくれたそんなワイルドな王子様どんな人か気になるよ!!」
「そういうものなの?」
時々、楓の言うことが私にはよくわからないことがある。
あと、彼はワイルドなのかな?
「えーと、同じ学校の制服を着ていたかな?」
「えっ!!マジ!!そんなワイルドでかっこいい人、この学校にいるの!!」
楓のトーンが1段階上がった。
これって、そんなになるものなのかな?
「そうじゃないかな?」
「どんな感じの人!!」
「えーと、顔はちょっと怖かったかな?でも、喋ってみたら全然普通の人だったかな?」
「顔が少し怖いなら、柔道部の中村先輩とかかな?」
「あっ、でも。体格はそんなにしっかりしてなかったよ?割と普通の感じで」
「あっ、そうなんだ。名前とか聞いてない!!」
「うんん、聞いてない」
「そっか。それじゃあ、誰だかわからないね」
楓は少し残念そうだった。
もしかして、会わせてくれようとしてくれたのかな?
別にちゃんとお礼は言ったし、会う必要性は‥‥‥‥‥‥あっ、でも、ちゃんとしたお礼はしたいかな。
押し切られて、電車で起こすだけになっちゃったから。
それも、結局、間に合わなかっし。
「芽衣、大丈夫?なんか、ボーっとしてるよ」
「あっ、うん。大丈夫」
いけない、つい、考え込んでボーとしていた。
「もしかして、助けてもらった彼のこと考えてた?」
「えっ?どうしてわかったの?」
「えっ!!マジ!!本当に考えてたの!!」
「う、うん」
楓がなんでまたハイテンションになったかはわからないけど、考えていたのは本当だし。
「何、芽衣、恋しちゃった!!その王子様に!!」
「魚?」
「いや、定番のボケはいらないから!!」
「うーん、ただちゃんとしたお礼をしたいだけかなぁ」
「芽衣って恋なんてしたことないでしょ」
「うん、ないからよくわからないかな」
中学時代の友達が付き合ったって報告してきたことはあったけど、わたしには未だに関係ないなぁ。
人を好きになんてなったことないし。
恋人が欲しいと思ったこともないし。
「確かに芽衣は無さそうだよね。男の人と一緒にいること想像できない」
「それはどういうこと?」
私って、そんなに変な顔なのかな?
「ああ、決して芽衣がモテなさそうとかじゃなくて、芽衣ってなんか男の人といると壊れそうな儚さがあるからさ」
「そうなの?」
自分から見る自分ってよくわからない。
「わたしはそうだと思うよ。はあ、芽衣が恋を知る季節はまだまだ先かな」
「それを言うなら楓もでしょ」
楓だって、彼氏はいない。
わたしばっかり言われるのは不公平だ。
「ふふふ、甘いね。甘いよ、芽衣。チョコレートぐらい甘いよ」
「チョコレートは苦いよ」
「いや、確かに苦いのもあるけどけど。まぁ、とにかく芽衣は甘々なんだよ。わたしは彼氏いるからね」
!!!!!!!!!嘘でしょ。
「どう、驚いた」
「うん、かなり驚いた」
「それならもっと顔に出して欲しかったんだけど」
昔、クラスの子から表情が分かりにくいって言われたんだけど、私って表情そんなに豊かな方じゃないからな。
「えっ、いつから?」
「結構、前からかな?私から告白したらOKもらいました」
「すごい。行動力あるね」
「うん、まさかその時はOKもらえると思わなかったから、嬉しかったし、言ってよかったなぁって」
「興味あるな、楓の彼氏」
この楓についていける人なんてそうそうないと思うのだけど。
「えっ、じゃあ今日来る?彼氏が友達に私のこと紹介することになってるから、私の友達来てもきっと大丈夫だよ」
「じゃあ、行ってみようかな」
「OK!じゃあ、あとでメールしとくね」
「うん、お願い」
「了解。チャイムが鳴りそうだからまたあとでね」
「うん」
楓と別れて、自分の席に座る。
恋か‥‥‥‥‥。
楓の言う通り、わたしにはまだ早いかな。