2 .俺の日常と報告
「はぁ」
机に座ったまま、学校の窓の外を眺める。
昨日のあの一件以降、頭の片隅にはいつも彼女のあの時の笑顔が残ってしまっている。
まぁ、ぐっすりは眠れたけど。
「どうした?元気ないように見えるけど?」
「さてはケン、今回も英語爆死したね」
眼鏡の男子と長身の男子が俺に話しかけてくる。
眼鏡の方が山倉 翔悟、愛称はショウ。
長身の方が永川 秀樹。愛称はヒデ。
ちなみに俺は大野 謙介。愛称はケン。
2人とも俺の中学時代からの友達で高校でも一緒にいることが多い。
「あー、なんでもないんだよ。英語は爆死したけど」
「だよな、俺も死んだ。今回は作った先生運もあったけど」
「岡崎はまじめにアウト。問題の難易度が鹿原より明らかに難しいもんな」
「だな。毎回、鹿原先生が作ってくれないかな。それでショウはどうだったんだよ、今回の英語」
「普通かな。確かに問題の難易度は高めだったけど、ある程度は取れた気がするよ」
「お前、前回の高1最期の期末も普通って言って97点とかいう点数叩き出していたじゃねーかよ」
「流石、学年1位は違うわ」
「違くないと思うけど。それに、ケンだって英語さえなければ僕といい勝負じゃん」
「そう言いつつも前回は結局、全教科負けたけどな」
「まぁ、待て、2人とも。テストに関しては蚊帳の外の俺がいうのもなんだが、話がそれはじめているから」
「そうだった。ケン、何かあったの?」
まぁ、こいつらなら信頼できるし、話してもいいか。
「恋をした」
「「はぁ??」」
「昨日、初恋をした」
そこまで言うと、2人は思いっきり吹き出した。
「ハハ、お前さぁ、それマジで!」
「結構、マジで」
「ハハ、駄目。ちょっと落ちつかせて」
それから、2人が落ち着くまでに2分の時間を要した。
「まとめると、昨日、電車で出会った少女に恋をしてしまったと」
「まぁ、そういうことだ」
「ケン、もしかして不機嫌?」
「そりゃあ、あんなに笑われたらな」
「悪かったって。俺ら、そっち方面に耐性ないから」
「それはわかっているけど」
だって、共学なのに誰1人として彼女いないし。
「でも、よかったよ。恋した人が次元を超えてなくて」
「次元超えてたら大問題だからな!」
「それで、名前は。同じ学校なんだろ」
「知らない」
「お前、なんで聞いておかないんだよ」
「しょうがないだろ。好きになったのが、彼女と別れる直前だったし」
「それでもお前、男子高校生が女子高校生とお近づきになれるチャンスなんて早々ないんだから、聞くのは当然だろ」
「わかってるよ。どれだけ、後悔したことか」
「と言うことは僕たちはまずケンの思い人を探すところから始まるわけだけど」
「こういうのは女子に聞いた方がいいけれど、俺にはいないしな。ヒデは?」
「俺にいるわけねーだろ」
「まぁ、ヒデはシスコンだしね」
「聞きづてならねーぞ、ショウ。シスコンと言う言葉は」
「じゃあ、ヒデ。ヒデの妹は?」
「そりゃあ、世界一可愛いけど」
「君のその発言のどこに弁解の要素があるんだよ」
確かに俺から見てもヒデの妹は可愛かったけどな。
「ショウは?」
「僕は少しだけなら」
「流石、生徒会長で学年1位なだけはあるな」
「まぁ、そうなのかな」
「そうだよ。それにさ、俺、もし会えたとしてもなんて言えばいいのか全くわからないんだけど。ショウはわかるか?」
女子友いない時点でヒデは戦力外だ。
「少しなら。だって、僕、彼女いるし」
「「はぁ?????」」
なんだろう。
どさくさに紛れてとてつもないカミングアウトが飛んできたんだけど。
「ちょ、お前いつから」
「去年の秋ぐらいからかな」
「だってお前、いつも俺らと一緒に帰ってたじゃん」
「噂になりたくなくてさ、2人と別れる駅で待ち合わせして帰ってたから」
「この、裏切り者!!!」
ヒデがショウの肩を揺らす。
「シスコンだからいいじゃん」
「なんか言ったか?」
「なんでも。だから、ケン。今日、2人に彼女、紹介しようと思ってたからその時に聞いてあげるよ。彼女なら信用できるし」
「ああ、頼む」
「了解。そういうことだから、2人とも今日の放課後は僕についてきてね」
「おう、ショウの彼女をしっかりと吟味してやる」
「よろしく」