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時代が変わったと友は言った

長らくお待たせしました!

やっと更新です!

「エル……」


 ライトマンの上目遣いのジト目が痛い。


「……何でございましょう?」

「いくらなんでも、壁に穴開けちゃいかんだろ」

「……あ、あれは、ミハエル、先生が……」


 僕はライトマンに迫られ、しどろもどろになっていた。

 確かに、壁に穴を開けてはいけないだろう。

 だが、それで保たれるものもある。

 それは、教師としての「威厳」。

 僕はそれを保つための手伝いを……、サポートを……、アシストをした!


 つもりだったのだが、ライトマンに言わせればそうではないらしい。


「ミハエル先生が? どうしたんだ?」

「あー、そのー、まぁ、……弱いから?」

「ミハエル先生が弱っちくて、ショボくて見栄っ張りで家名任せのクソボンボンだから? だから、手助けをしたと?」


 ライトマン、それは言い過ぎだろ?

 いくらなんでもそこまで……


 いや、まぁ。それが本音なんだね、マイフレンド。

 そこでライトマンは大きくため息をついた。


「どうしようもないボンクラだが、家の名前は大きい。正直、この学院は貴族や高名な魔法使いたちからの寄付や義援金で成り立っているからな。いくら能無しとはいえ、蔑ろには出来んのだ」


 あー、それでか。

 これでどうして教師のレベルが低いか、合点がいった。

 親の脛をかじっている甘ったれ共が、更に甘ったれ共を教えているわけか。

 それってしかし、とんでもない悪循環じゃない?

 何か対策がなかったのだろうか?


 僕は目の前でため息をつきつつ、お茶を啜る友に問うた。


「ライトマン、だったらなぜ改革をしなかったんだ?」

「改革?」

「そう、寄付と義援金。要するに学院は公共の金で運営されているわけだ。とすれば生徒たちの負担は大きいわけじゃない。そこを変えればいいんじゃないか?」

「そこを変える? 国からの予算を辞めて、学院自体で運営するようにするってことか?」

「そうだ。そうすれば……」

「そんなこと口にしてみろ。寄付を出してる貴族共が黙ってるはずが無い。一方的に予算を打ち切られて、運営どころじゃなくなるぞ」


 ライトマンは、渋い顔を見せながらそう言った。


「私だって、やれるものならそうしていたよ。だがな、歴代の学院長共が、貴族からのバックマージンという甘い汁を吸い続けたお陰で、今はこのザマだ。低レベルの授業しか出来ない、お粗末な学校さ」

「でも、僕らがいた頃は……」

「あの頃とは違う!」


 そこでライトマンは立ち上がった!

 僕の目の前に立ちはだかるように!


「あの頃とは時代が変わったんだ、エル!」


 友の僕を見る目はどこか寂しげで、それでいて怒りがこもっているようにも見えた。

 そして、奥歯をギリギリと噛みしめる音が聞こえた。

 見ると、ライトマンの顔は醜く歪んでいる……

 とても悍ましく……


 絞り出すような声で彼は言った。


「変わったんだよ……」


 ーー


 学院長室を後にした僕は、教室に向かって廊下を進んでいた。

 色々大変なんだなー、学校経営って。

 ダメ教師に生徒はあぁだしなー。

 一体僕に、何をどうしろって言うんだよー?


 あぁー! 誰か相談に乗ってくんないかなー?

 一日目でこれじゃ先が思いやられる……


 そんなことを考えながら歩いていたとき、廊下で一人の教師とすれ違った。

 僕はおもむろに振り返る!

 その教師からとんでもない魔力を感じたからだ!

 それは向こうも同じだった!

 あちらも僕を振り返っていた。

 それも驚いた表情で!


 て、あれ? その顔、見覚えあるな?

 青白い肌に金色の目に肩まで伸びるサラサラストレートヘア……

 僕の記憶の深いところから呼び起こされる、その顔……


 僕たちはお互いに声を上げていた。


「「あぁー!!」」


 そして互いに指を指しながら、互いの名を呼びあったのだ。


「魔王ーーー!!」

「エエエエ、エル・レクターだとぉぉぉぉぉ!」


 およそ三百年振りの再会は……


 あまり感動出来るものではないようだ……


「なんで学院(こんなところ)に魔王が!?」


 僕は構え、魔力を貯めた!


「それは余の台詞である! なぜ貴様が?」


 僕は構えど、魔王は驚きのポーズのまま。

 なぜ構えない!

 それに魔王ならば配下の一人や二人を連れ歩いているはず。

 それがいないのはどうしてだ?

 そうか、余裕か? 余裕なんだな、魔王よ!

 こんな学院程度、一人でなんとでも出来るってことか!

 いや、それよりも気になる!

 その小脇に抱えたボードが!


「魔王、僕の質問に答えろ! その脇に挟んだボードはなんだ!?」

「む? これか? これはただの出席簿だが?」

「出席簿? まさか、この学院の生徒から未来の魔王軍幹部を連れ出すつもりか!?」

「貴様はアホか! 何が悲しくて余が今更そんなことを!」

「じゃ、なんでここにいる!」

「余はこの学院の教師である!」



「……え?」




 ……





 …………







 ……ちょっと待て。

 今なんて?


「魔王、何を冗談を……」

「冗談ではない! 余はこの学院で魔法を教えておるのだ!」


「え、教え……魔王が魔法? え、え?」


 僕は驚いた。

 とても、かなり、ものすごく。


「ええええええええええええええええーーーー!!!」


 世も末なら末。

 魔王が魔法を教える時代が来るなんて、誰が考えただろうか?


「時代が変わったんだ……」


 ライトマンの言葉が脳裏にこだました……

ここまでお読みくださり、ありがとうございます!

皆様からの感想、評価はとても励みになります!

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