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気付けばそこは保健室だった

拙い文章ですが、よろしくお願い致します。


「んで、君が今日からこの学院に転校してきたって言う……」

「はい、エルって言います」


 ライトマンの部屋から転移魔法(テレポート)でやってきたこの空間。

 どうやらこの学院の保健室だったみたい。

 そして、僕の目の前にいるのは、保健室の先生。


 な、の、だ、が!


「……へえ」


 と言って机に頬杖をつき、片手で腰元まで伸びた長い髪をかきあげる仕草。

 白衣の下は青いカッターシャツに黒のタイトスカート。

 そのシャツがパンッパンになるほど膨らんだ見事な……

 それが頬杖つく机に片方乗っかっててごらんなさいよ。


 目のやり場が無さすぎる!


 さらに、僕を見るその目!

 なぜにそんなに潤んでいるのだ!?

 僕、何かしたか?

 転校と偽ってハゲの友達に無理やりカムバックさせられただけなのに!

 何も悪いことしてないのに、どうして目の前のあなたは僕がさも悪いことをして罰を受ける子供を優しく見守る母親のような眼差しで……


 いや、違う。

 これは面白がってる、いたずらっ子の目だ!

 そうだ! そうに違いない!




 きっと、そ、う、だ!





「興味、あるなぁ……」


 と、そのポッテリとしたピンク色の分厚い唇が揺れた。


「……おぅふ……」


 やばい……撃ち抜かれた……

 あなたのその潤んだ瞳と言葉が、僕のいたいけで傷だらけのハートを今、撃ち抜きましたよ……


「ねぇ、教えて。君のこと……」


 彼女はゆっくり、ゆっくり僕に顔を寄せて、その厚い唇を近付けて……


「もっと、し、り、た、い……」


 彼女の言葉に、僕の脳みそは沸騰寸前になってしまった……





 ーー


 僕の目の前にグラスが置かれている。

 中には水が並々と注がれて。

 その向こうには、彼女がいる。

 白衣に青いシャツ、黒のタイトスカートは変わりない。

 もちろん、ムフフでウフフな展開なんかなかったから裸でもない。

 普通にお互い向かい合ってコップの水をすすっている。

 それだけだ、たった、それだけ。


「美味しいでしょー、この水!」


 彼女がキャピルンと可愛く言うので、僕は「ええそうですね」と頷く。


「取り寄せなのよ〜、国内じゃまず、こんな美味しい水は飲めないわねぇ」


 ウンウンと頷きながら、僕はコップを煽る。


「それにしても、噂の転校生がこんなおぼこい子なんて! キャー! フィー、興奮しちゃうー!」


 と一人、フィーは自分自身を抱き締めて悶絶している。ハッキリ言って見たくもない。

 それにその言葉。

 嘘だ、絶対嘘だ。

 興奮なんてしないだろ。せいぜい、期待させといて思いっきり裏切ってガッカリするのを見て楽しむんだろ?

 あー、くそ!

 僕としたことが、こんなクソガキ(注:僕は百歳越えてる)にからかわれるなんて!


 大賢者の名がすたる!!


「でも、噂の大賢者がこんな子で良かったぁ」


 フィーはそう言ってコップに口を近付けた。

 あぁ、フィーっていうのは彼女の名前だ。

 年齢とスリーサイズその他もろもろは非公表にしているらしい。


「噂って、どんな噂ですか、?」

「だから、噂よぉ。学院長が連れてくる転校生は、かの大賢者と同じ名前を持つ少年だって言うからぁ」


 あぁ、何だ。

 バレバレだったんだ。

 素性隠して損した。


 彼女はそのおっとりとした口調で話を続けた。


「さすが学院長ねぇ、眉唾かと思ったけど。マジでそそるわ、あなたの魔力ぅ」


 は? 魔力? そそる?

 何を言ってるんだ?

 僕はフィーの言葉を訝しんだ。


「何がそそるって?」

「だから、あなたの魔力。尋常なんてもんじゃないわよ。どこまでも深く、深く、深く……。それこそ魂の奥底から溢れてくるって感じかしら?」

「……え?」


 何だこの女?

 見抜いたのか、僕の魔力を?

 僕は瞬時に警戒を示した。

 彼女から離れ、距離を取る。

 と言っても狭い室内だからそんなに距離は取れない。

 が、接近しているよりはマシだ!

 いざとなれば、転移魔法で逃げればいい!


「もぅ、そんなに尖んないでよ?」

「うるさいです。何が目的ですか?」

「それはこっちのセリフぅ。あんたみたいな化け物が、どうしてこの学院に?」

「それはーー」


 質問した筈が、逆に質問されて僕は言葉に詰まってしまった。

 迂闊に言い出せないよ、迷宮探索が目的なんて、さ。


「別にあなたには関係ないことです。それに話したところで、あなたに利益のある話でもない。聞くだけ野暮ですよ」

「あら、残念♪ じゃ、気が向いたら教えてね」


 と軽くウインク。

 くそ、クラッとくるじゃないか……!


「じゃ、僕はもう行きますから」


 と席を立ってこの部屋を立ち去ろうとする僕に、フィーは声を掛けてきた。


「いつでも来なさいねぇ。それと、転移魔法はあまり使わないほうがいいわよん」

「あまり来たくはないですけど。それより、それ。どういう意味ですか?」

「えっとねー、この学院からは転移魔法では出れないってこと。結界が張ってあるらしいから。生徒の規律を守るためとか言ってたけど、夜中にこっそり逢引するのがいいのにねぇ」


 逢引って……割と古風な言い方だな……

 それより気になるぞ。

 結界ってどういうことだ?


「あ、あの、結界って?」

「はいはい、もう授業始まるよー。生徒諸君は行った行ったー!」


 と背中を押されて追い出されてしまった。

 ドアの外に出された僕は振り返る。

 確かにそこには「保健室」と掛札がしてあった。


 ーー本当に保健室の先生だったのか?


 僕は首をひねりながら、自分の教室へと戻ることにした。






保健室の先生、フィーは一体何者なのか?

怪しさ満点の白衣美女でございました。


皆様からの評価、感想は大変励みになります。

よろしくお願い致します!

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