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わたしは、たからもの  作者: 津久美 とら
3/3

血のつながり

8つ離れた兄がいた。

わたしが5歳の時には兄は13歳。多感な時期であったと思う。


身体の弱かった私にばかり掛けられる、母の手、声。

そういったものをただ聞きながら、兄は高校生になった。

入学した高校は、その地域では有名な由緒ある男子校。その特進コースへと進学した。

絵の才能のあった兄は、美術部へ所属。

並行して自宅で描いた小さな絵を、夜になると商店街に並べては画材代を稼いでいた。


「自分の描いた絵が売れた」


それは、混沌としていた彼の人生で、唯一自分という存在を認められた瞬間だったのだろう。

学校以外での友人もでき、彼の生活にようやく明かりが見えてきたころ。

彼は美術部を強制的に退部させられた。


「絵や芸術は、お金のために創作するものではない」


そう、当時の顧問は言ったそうだ。お金のために創作するものではない。

商店街で自作の絵を売っているところを目撃したのだという。

それから、兄は徐々に変わっていった。

家出、家庭内暴力、ひっそりと大麻を育てたりもするようになった。

家出した兄を探すため、母が何度も警察とやりとりしている光景が、今も思い出される。

高校生になった兄は、荒れていた。


その当時の心の傷、これから歩む人生での心の傷。

それらはゆっくりと、しかし着実に、彼の心を蝕んでいくのだ。

ゆっくり、ゆっくり。

確実に。


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