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わたしは、たからもの  作者: 津久美 とら
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つかのまの

物心ついた時から、両親は別居していた。


詳しい理由は、二十数年経った今でもよくわかっていない。

詰まるところ、父の仕事の多忙さや、両親の折り合いが悪かったということなのだろう。

ゆえに、私にとって、

「パパはたまに現れて、一泊したり、祖父母の家に連れて行ってくれる人」

だった。


それ以外にも、事務所兼住居として借りていた部屋にたまに泊まらせてくれたり、そこで一緒にお風呂に入ったりもしていた。ちなみに、その際に父が振舞ってくれた「納豆餃子パスタ」が人生最大においしくなかったことは現在に至るまで鮮明に覚えている。


その頃はまだ、誕生日やクリスマスといった行事の度に、家族で繁華街にある高級イタリアンで食事をしたり、父の仕事の師匠であるアメリカ人の初老男性も交えて、ホテルのレストランでフレンチのコース料理を食すなど、家庭は裕福で、円満であるかのように思っていた。

そんな時折行われるコミュニケーションの為か、私の中では父であるという認識は変わらず、世の中の父というものはみんなそんなものなのだと思っていた。


「父は、普段は家にいないけれど、たまに泊まりに来たり、遊んでくれる人」


そんな父子のコミュニケーションも母の手によって段々と減っていき、それに反比例するように、母は私に対し、こう繰り返すようになっていた。


「ねえ、あなたはパパとママ、どっちが好き?」


毎日のように行われる質問。

次第に母の雰囲気が鬼気迫るようになり、私は「ママのほうが好き」としか答えられなくなっていった。

それは私が小学校に入ったばかりの頃のことだった。


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