進化
風の音で目が覚める。辺りを見渡すと木々に囲まれていて他のゴブリン達が緊張を紛らわす様に楽しそうに話している。
「あっ、起きたー!」
弟がドタドタと近付きそれだけ言い残すとまたドタドタ去ってて行く、体を起こし少し動かす、体が軽い?それに背中が冷たい様な…
「シュルピィ!」
「うぇっ!?」
背中にスライムが張り付いていていきなり動くから変な声が出てしまうおら、念話で『ごめんね…』と伝わってくるので「いいよ、気にしないで」とスライムを捏ねながら答える。
スライムと遊んでいると師匠と弟それにお母さんが入ってくる。
「起きたか、何があった、何処まで覚えておる?」
「師匠、それより父さんとお兄ちゃん達は大丈夫なの?」
「ああ、そのスライムのお陰でなんとか一命とりとめておる、安心せい」
「そっか…よかったあっ、何処まで覚えるかだったよね」
「お兄ちゃんそれ貸してー!」
弟がスライムを指差す、スライムを渡すと念話で『えぇ…』と聞こえた気がするけど気にせず師匠達に話し出す。
逃げ回っていた事、隙を付いて罠にはめたこと、リーダーを倒した事、倒れてから覚えていない事。
「そうか大変じゃったな…生きてて良かった、わしが知っている事はスライムがお主を背負って帰って来た事だけじゃよ」
『そうだよ~!』
弟に遊ばれているスライムが器用に手を振っている、スライムで手ってどうやって作ってるんだろ。
「そっか、ありがとう」
手を振り返すとキュピィ!と返事が帰ってくる。
か わ い い
「そう言えばお主、前より強くなっておらぬか?」
「えっ?そうかな?」
師匠とおらを見比べてみるとおらの方が肌が明るくなって身長も少し伸びた様な。
「聞いたことがあるぞ、強さには限界があり強さが限界に達すると姿などに変化が起こる事があるとお主はその限界に達したのではないか?」
「強くなった実感がないです師匠…」
「まあそれよりじゃ、これからどうするかのぉ…」
寂しそうに回りを見渡す師匠、修行の休憩時間に楽しそうに村の話していた師匠、村にたくさんの思い出があるのだろう。その時、スライムが弟から逃げ出し勢い余っておらに向かって突撃してくる。
『場所 ある!』
「ん?おら達が住める場所なの?」
『なんとかする!』
「お、お主誰と話しておるのじゃ?」
「このスライム念話って奴で話せるんです」
「ほう、念話?で、住めるとは村の様な場所があるという事なのか?」
「ピ ピギュ ピギュ」『村 違う 洞窟』
「村違う洞窟って言ってます」
「そうか…よし、わしらは行く宛もない行ってみるか!じゃがわしの一存で決められる話ではない、少し皆と相談して動くのじゃ」
『シュピ!』
「お主も張り切っておるのか?そうじゃ、少しこのスライム借りるぞ?」
「あ、はい」
念話で『えぇ…』と聞こえるのを無視してスライムを差し出す。師匠が出ていくとずっと黙っていたお母さんが口を開く。
「先に謝らせて欲しいのごめんなさい」
「…」
「産まれてすぐ話し出したり、村長しか使えない魔法を使ったり多文化私は貴方の事が怖かったんだと思うの」
「…」
「でも、貴方が戻らなかったと聞いた時自分でも分からないけどとても辛くなったの」
「…」
「虫のいい話なのは分かってるそれでも今までの私を許してくれないかしら」
「お母さん…今はまだ心の整理が出来ないからもう少し待って欲しい」
「そう、そうよね…分かったわ」
「分かった」
「聴いてくれてありがとう」
そう言い残しニコッと笑顔をしてから出ていくお母さん。
おらは正直お母さんが苦手だ、やる事はやってくれていた、ただそれは作業であって愛情を感じなかった。ただ家族だ、いつか話せたらなと思いながら修行をしていた、お母さんは変わろうとしている。おらも変わるなら今なんじゃないかと分かっている。あぁ、考えが纏まらない一旦保留!
そう言えばおら限界を越えたとか言ってなかったっけ?っと思いだし久しぶりにステータスを見てみる。
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レベル1 ♂ 種族 ホブゴブリン 状態 健康
体力 D
魔力 D
力 D
防御力D
魔攻 D
魔防御C
素早さD
運 F
スキル
棍棒術LV3 盾術LV1 火魔法LV2 魔力感知LV5 魔力操作LV2 念話LV3 身体機能LV1 自然治癒LV4 火属性耐性LV3 氷属性耐性LV2 毒耐性LV1
称号
転生者 神に好かれし者 四人兄弟
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ふむふむ、種族がホブゴブリンになってレベルが1にステータスがそこそこ上がって魔力感知、念話、氷属性耐性のLVが上がって毒耐性が増えたと。
神様が言っていた進化の石は種族を上げる石だったんだろう。美味しかったなぁ…進化の石って何処にあるんだろうか?珍しいって神様は言ってたけど地面掘ったら見つかったりしないかな。
そして魔力感知のLVの上がっている最近使った攻撃魔法は無いからもしかして念話かな?念話は魔力を言葉にして飛ばしたり受けとる能力なのかな?
何はさておき、
「生きてて良かった」