捕獲 恐怖
おらは弱い、弱者、何が出来る、考えろ、思考。
「作戦変更、捕獲、あのゴブリンを捕らえる。出来るだけ傷を付けるな」
「おう」「はい」「了解!」
取り敢えずここじゃダメだ、父さん達が居る離れよう。
「よし、逃げよう」
「「「「は?」」」」
カッコよく出てきたけど怖いよ!時間を稼ごう。
「お主、何故出てきた!」
「おらが時間を稼ぐから早く逃げて!」
「俺…が…やる…」
「今のわしらに現状を返せる物が無い、残念だがあやつを頼るしかない…不甲斐ないわしを許してくれ…」
師匠が暴れる父さんを引きずり森の方に逃げる、反対におらは村側に逃げる。
「あのゴブリンは捨てるそれよりこいつの方が金になる!この仕事が終わったらはしゃぐぞお前ら!」
剣士の突撃、まだ血が流れている父さんの右腕を拾って走り出す。
「父さん…力を貸してくれ…」
「逃がさない!ウォール!」
「ひえぇぇぇぇ!?!?」
前方の地面が盛り上がりおらの逃げ道に壁が出来る、このままじゃすぐ追い付かれて終わる!
咄嗟に盛り上がる壁を掴むとグングン体が持ち上がり2m程浮き上がる。反撃はきっとここだ!壁を背に隠れる。
「逃がさないわよ!」
予想道理、おらが逃げたら壁を越えて追いかけてくる、ここだ!持っていた短剣を突き上げる短剣は足を掠め女冒険者が小さな悲鳴を上げ転げる。歩幅を広げまた走り出す。
「大丈夫か?」
「ええ、問題ないわ」
「これだからドジっ娘は!火よ弾けろ」
火球がおらに向けて飛んできたと思ったら弾けた、弾けた火球はおらの四方八方を火で囲む。急いで父さんの腕を取り出し血を体に塗り勢いを増す火の壁に突撃、いける、逃げれる!
「逃がすかよ」
リーダーじゃない男が森蔭から現れるいつの間に!?
考えろ、おら!現れた男の方に迫真、そしてすぐ引く確かその辺りには…
「こちらに来るなら好都ご、何!?」
男が地面が崩れるそう、そこはおらが作った落とし穴がある場所。
「ブリック!大丈夫か!?」
「こいつッ!少し木が刺さったが問題ない!そいつ…ゴブリンにしては賢い、気を引き閉めてかかった方がいい」
「おう!」
少し振り返ると足を怪我した女と男をもう一人の女が支えてまだ追いかけてくる、その先頭には勿論剣を持った男が。
「逃がさない…」
怪我した女が短剣を8本投げてくるその短剣はおらの足に4本突き刺さる。
「うあっ」
痛い、痛い!でも師匠のお掛けで刺し傷には慣れてる!
刺さった短剣を抜き森側に駆ける。~血がタラタラと足から流るそれに次第に体の動きが鈍くなってくる。
「追い付かれる、父さん達はもう逃げれたかな…」
ガサガサ
「来た…足がもう動かない…隠れなきゃ…」
「ここに逃げたって事は分かってんだよ!お前が血を被って逃げた時は驚いたがそれが今じゃいい目印だぜ!」
剣士、ニルは自分の鼻に自信を持っていた、ニルは人間と獣人のクォーター見た目はほぼ人間だが五感が普通の人間より鋭く、特に嗅覚は絶対と言っていい程自信があった。
「ここか」
いつもと同じ様に自身の鼻を頼りゴブリンの位置を捕らえた、よく見ると草影に緑色の手が見えている。
「ふっ、良くもまあ俺達からここまで逃げられたなそう言えばあいつの事父さんとか言ってたな確かに諦めないってとこはよく似た親子って所か?話せるゴブリン…やっぱいい値打ちが付きそうだぜ!」
バレた、バレてる、無理だ、終わった。ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい。ど、どうせなら最後に一撃いれてやるッ!
目を瞑って心を落ち着かせる音を出さないように深呼吸、
「スゥーー、ハァーー」
良し、逝くぞ!
「流石に角はまずいか?それじゃ面で」
ブンッと剣が振り下ろされる。
耳元に風が通る。
その風に押される様に。
ゴブリンの身体は落ちた。
木上から飛び降りニルの脳天目掛けて短剣を差し込む、ニルが無防備に振り下ろした剣は腰ほどにまで延びた下草を、何もいない下草を切断していた。
ハッとした表情でゴブリンがいる場所、上方を見るニルその顔は何故?と疑問を浮かべている。
グサッ…
全体重は短剣に乗る、左眼球からそれは深々と刺さり、うなじから先端を表す。
深く、地面にまで短剣を刺さり込む、時間が止まったかの様にその場は静かになり、赤く大地を染め時が動き出す。
「やった、殺った!すぐ冒険者がくる逃げな、きゃ…」
緊張の糸が切れたのかバタッと後方に倒れるゴブリン、顔の横には時間が経ち血液が赤黒く色を付けた右腕が転がっていた。
シュピ!ぷるぷる!ぬさー…ガサガサ…ぬさー…ガサガサ…ぬさ…ガサガ……ガサ…………
少し時間が経ち、森には悲鳴が響いた。
勝者 緑色の逃亡者………とスライム