因縁の一騎討ち
「無理だ!逃げろ!死ぬぞ!」
師匠が叫ぶ。
盾を構え進む。
「死んでもいい、こいつらは俺の村を襲った奴等だ」
「何!?」
「作戦があったらから俺は黙っていた」
「逃げるのも作戦だ!逃げるぞ!」
「負ける位なら足掻いたって良いだろ?もう…居なくなるなんて嫌なんだよ…」
「何やってんだこいつら?」
「仲間割れじゃないかしら?」
「ゴブリンもそんなことするのか?興味深い」
「喧嘩位当たり前じゃない!馬鹿じゃないの?」
「「「お前だけには言われたくない」」」
剣士が前に出る。
「そうだ、お前だ」
止める師匠を無視して父さんが前に出る。
「一騎討ちかぁ?嫌いじゃねぇお前らは手出すなよ」
両者が笑う。
一方は因縁を断ち切る為、一方は楽しめる獲物を見つけた為。
「許さない」 「遊ぼうぜ、ゴブリン」
戦士が動く、一気に駆け斬りかかる。
「忘れられる訳がない、その剣で俺の妹を殺したのか?」
木の盾で勢いを流す。
「その剣で俺の兄を殺したのか?」
「やるなっ、だがまだだ!」
流された剣を振り上げる様に斬り上げ、盾で防がれ父さんが押し返す。
「防がれた!?やるなっ」
父さんが動く、飛びあがり盾の縁で頭部に殴りかかる。
「喰らえっ!」
ゴッと鈍い音がなる。
「当たった!」
「ニル!」
勝った!…
「いってぇなぁ!これで終わりか?」
剣士の顔に血が伝い、勝ち誇った顔で謳う。
「ゴブリンにしては楽しかったぜ!『クラッシュ』」
間に合う、父さんなら防げる!
剣が振られるさっきより遥かに速い…が間に合う!
盾に刃が当たった瞬間、加速、切断。
盾を砕き父さんの右肩が切断されその衝撃で転ける。
「まだ…だっ!」
立ち上がろうと盾を杖に苦痛の表情で立ち上がるバランスが取れないのか蹌踉けるがそんな事どうでもいいと目が語っている。
「まだ立つかだか、これで本当に終わりだ」
剣士が剣を振り翳す…その時、何かが飛来して剣に当たる。
カツンッと金属がぶつかり合う音が響き一匹のゴブリンが現れる。
「父さんに…触れるな!」
「「「「ゴブリンが喋った!?」」」」
「「「「どうしてお前がいる!?」」」」
気付いたら動いていた、飛び出していた、あんなに震えていた身体が嘘の様に静まっている。
凄く怖いしおらが出たところで何も変わらないと思う、でも、でも。
「おらが相手だ!」
飛び出さずにはいられない。
これだけ言わせてください。
≪野生のゴブリンが現れた!≫
ありがとうございました。