フィリアと交わした約束
...フィリアが起きて来てしまった。
俺はフィリアに何をされるかが急に怖くなった。
そしてしばらくの沈黙のあと、フィリアが口にした言葉は...
「...ごめんなさい。」
「...!?」
意外にもまともな返事をしてきた。
「い、いや...。こっちこそ悪いな...勝手に俺んちに
連れて来ちゃって...。」
「い、いや...。大丈夫...。」
俺達はここからまた、しばらく黙り込んでしまった。
そして、数分たっただろうか。俺はなんか話そうと思って、今までの経緯を口にしようとした時、フィリアの口が開いた。
「このままじゃつまらないし、お話でもしましょ。」
と優しく微笑んで言ってきた。
「...そうだな。」
俺は今まで、心の中にあった恐怖はこの会話によって、いつの間にか消えていた。
なので俺はまず、ここに連れてきた経緯を話すことにした。
一連の流れを話し終わったあと、フィリアは再度「ごめんなさい」と言ってきた。
...何故だろう。ついさっきまではあんなに豪快な人で話すことも拒んでいたが、今はむしろその逆だ。もっとこの人のことを知りたいと思っている。向こうの方もあの視線をみる限りは俺と同じようなことを考えているのであろう。
そこで俺は再び口を開きこのようなことを言った。
「まずは、といってもなんだが自己紹介でもしないか?」
正直、自分でもこの世界に来て自分のすべてを話すのはマズいかと思ったが、結局言うことにした。
そのことを口にした瞬間、少し驚いたように顔を上げたがすぐにコクンとうなずいた。
「じゃあまずは俺からだな。俺の名前は剣崎刀矢だ。日本の東京出身だ。って言ってもわからないかもしんないが、これはマジだ。俺は日本では、学生をしてきた。まあ、学生って言ったってネトゲーのやり過ぎで、全く学校に行ってなかったけどな。今、話せる事はこのくらいかな。で、次はそっちの番だな。」
「き、急に言われても...。まあ、いいわ...。私はフィリア、ここではみんなから「剣豪のフィリア」って呼ばれてるわ。私の出身はこの世界の遠く離れた場所。私は小さい時に養子に出されて育ったから、正確な場所はわからないの。だからね、私は今までずっと私の生まれ故郷を見たことがないの。それで、私はどうしても生まれ故郷を見てみたくて...。いや、これ以上話すともっと長くなっちゃうから、ここで一旦やめるね。もっと話しちゃったら不公平だし。」
と言って、フィリアは微笑んできた。
「...そうだな。」
俺はこの世界に来て初めて出会った人のこのような過去を聞かされて、内心が複雑になったが俺は一回深呼吸をしてから、フィリアにこう言った。
「おしっ。じゃあ俺もお前の過去への冒険に付き合いたい。」
このことをフィリアに告げた瞬間、フィリアは一瞬目を丸くしたが、しばらくしてからこう言った。
「...なんで、初めて会った人にこんなに優しくしてくれるの...。」
この時俺はなんて言ったのか、全く覚えていない。
ただ覚えているのは、フィリアが俺の膝で朝まで泣いていたということだけだ。
今、自分の過去を少し振り返って見たが、これは自分の記憶を取り戻すための冒険なのかもしれない。そして、この冒険は二年経った今も続いている。だが、俺は二年経った今も、このこと以外の全てのことを覚えているので、すべてを振り返って見ることにしたのだ。
フィリアと剣崎刀矢の想い出の全てを...。