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ガーディアンルポ03「洪水」第6回「黒き使徒達」は、「主しゅ」が創造した生物で、フネに攻撃を。 さらに主は海底に戦闘艦の残滓を発見、イメージを増幅し空母と潜水艦を再生しフネに攻撃を加える。

ガーディアンルポ03「洪水」第6回(1979年作品)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/


■ガーディアンルポ03「洪水」第6回■


海底の泥流の中に、一個の知性体が存在していた。主である。


その中枢記憶回路はムの一族の禁制地域にあった。


フネに攻撃をかけ、失敗した「黒き使徒達」は、主が創造しか生物だった。


『せっかくの私のプランをムダにしたか。黒き使徒達よ! 君達は私が創造した生物で、最悪の失敗作だ』


 フネに収容きれる目的で、ム=ウムを創り出すのに、何年かかったかと主は自問した。


ム=ウムの一族の先祖を主の想念で作り出し、成長繁殖させた。


何代にもわたり生成し、一人の真人として、ム=ウムを生みだしたのだ。


 その主と自ら名のる生物は、シュクセイキ後の地球の混乱期を生きのびてきた。


 彼の意識は、地球の海を総て被っていた。


主はシュタセイキ浚、生命体としてあるものから新しい形態へと進化していった。


彼の意識は、かつての人類の廃墟の中で、静かに、しかし確実に成長し、大いなる創造者として完成しつつあった。


 彼がフネの存在を認知したのは、彼の時間の経過からすれば、そう遠い昔のことではない。


いつからかフネは海を漂っていた。主の感覚枝がフネの存在に気づいた時、主はフネを敵として理解した。


ある種の不気味さを感じたのだ。


自分以外の巨大な知性体としてのそれに危惧を抱いたのだ。


フネは彼の思惑通りには動かなかったし、彼の干渉を拒絶していた。


フネは、主の世界の中で、意向に従わぬ唯一の異物であった。


 主は、自分自身の記憶域を探索し始める。


それまでのフネに対する計画は瓦解していた。新たな攻撃法が必要だった。


自らの散在、「フネ」という概念で、フネ自らの記憶域の中をかきまわす。


過去、主は記憶をたぐる。戦闘のイメージが湧きあがってくる。



戦闘1戦い。

フネ。


戦闘フネ。


違う。


戦闘艦? 


確かシュクセイキ以前だ。


軍艦!


さらに記憶を手繰る。


潜水艦? 空母? 


明確なイメージ、形態が彼の心の中に呼び起こされてきた。


そうだ!


主はついに発見した。


シュクセイキ以前、人間達がそういった種類の船を建造していたことを。


主の感覚枝は全地球を巡っている。


つまり、海底世界に自分の神経網がはりまぐらせている。


軍艦を探すのだ。


はるか昔、人類たちに作られ、その人類たちが放射線のため死に絶えた後、何年かの間、自動操縦装置により無人で動き回り、やがて海に沈んていった何隻かの戦闘艦。



それらは、何世紀かの間、海底の泥流の中に埋れているはずだった。


彼は感支柱を使い、軍艦の残骸を数隻見つけた。


過去の人類の遺産はまだ完全に朽ち果ててはいなかった。


比較的状態のよい艦二隻に浮力を与え、海面上に持ち上げた。


彼は記憶域から明確なイメージを固定した。


サビや付着物を、感覚枝で払い落とす。


不足部分を過去のイメージから複製した。残像がある。


その軍艦は古代、人によって原子力空母エンタープライズと呼ばれていた。


もう一隻は原子力潜水艦ソードフィッシュと名づけられていた。


二隻の艦の体裁を完璧に整え、装備を完了し、彼はフネヘと向かわせた。


艦には誰ひとり人間は存在しない。人間という存在の記憶がない。


すべて、自動で動く。ただ、主の思念のみがその内部機構を作動きせていた。


人が存在しない自動機械なのだ。


潜水艦のミサイル発射筒には、核弾頭が装備されたポラリス・ミサイルが複製されている。


 空母甲板には戦闘機F15トムキャットが、70機以上塔載されていた。


フネは恐らくこういった種類の物理的攻奮を受けた事が々いだろうと主は考えた。


ム=ウムはフネの粘液の中でもがき苦しんでいた。


ム=ウムは真人であるがゆえに黒い使徒達の様に圧殺されはしなかった。フネは主の影響をムから取り除こうとしていた。


ムのその身勣きてきない苦しみは、フネの中枢記憶回路を刺激していた。


フネはかつて自分も同じ様にもがき苦しんだ経験があるというかぼろげな記憶を有していた。


フネは自分の過去の記憶バンクを探索し始めていた。


類似経験? 


しかしその間にも、ム=ウムの苦痛は一層倍化していた。


ム=ウムの体は次第に丸まっていき、手足を縮め、人間の胎児の形を取り始めた。



 潜水艦ソードフィッシュは、フネに対する攻撃行動を開始していた。


その原子炉から発するエネルギーは最大速力30ノットで総体を推進させていた。



しかし、フネまての距離はまだ数千キロメートルもあった。


 一方、エンタープライズは、俊足に、フネに近づきつつあった。


だが全長三百四十一メートルの巨大な姿もフネの前には、ケシツブにしかすぎない。


 エンタープライズは無人の状態で攻撃機F14トムキャットを断続的に発進させていた。


トムキャットはフネの回りを飛行し、ミサイルや爆弾の雨を降り注いだ。


しかし、フネの外皮には何の変化も見られなかった。


フネは泰然としていのだ。


トムキャットのバルカン砲、ミサイル程度の攻撃ではびくともし々いことを主は理解した。


最後の手段を取ることにした。


が、この攻撃は、海や主自身に対する悪影響ははかりしれないと思われた。


フネに向かって航行中のソードフィッシュ、そのミサイル発射筒のハッチが全開された。


内蔵されていたポラリス・ミサイルが、次々連続して、16本発射された。


それはフネに対する主の剣であり、大の矢であった。


ポラリス・ミサイルの破壊力は広島型原爆の10発以上に相当する。


シュクセイキでさえ、究極兵器と言われていた。


主はその破壊力の恐ろしさを理解していた。


海面上に大きな水しぶきを上げて、それは上空に消えて行く。非情な決断たった。


フネが死ぬか主自身が死ぬかだった。


恐らく彼が創りあけたこの海に獄む種々の生物群は多数、死に絶えてしまうだろう。


しかし生物群を失うこと以上に、フネに対する憎悪は深い。


それは、フネは主の理解を越え、さらに主の影響力を受けない地球上唯一のものだったからだ。


ポラリス・ミサイルが目標をはずすわけはない。


フネは海面上に漂う唯一無二の存在だった。大きさは小さな島に相当する。


閃光が走った。


音が響いている。


キノコ雲が湧き上がっていた。


フネのまわりの海は一瞬のうちに水蒸気となる。

熱風が吹き荒れる。

シュクセイキ以後の地球にかこった最も大きなエネルギーの開放だった。


フネのまわりを遊戈していたエンタープライズはその塔敵機と共に消滅していた。

さすがのフネも大きな損傷を受けていた。しかし全面崩壊はしていない。


だが表皮はまっ赤になって燃えあがり、あるいは内に包みとかようにはがれめぐりあがっている。盾所にひび割れすらかとってい

た。


フネは爆発の瞬間、意識を失った。


一瞬、主に対する憎悪の念が浮かび、それが増大され残った。


爆心地へ、海水が消滅した空間へ、海水がなだれこむ。海底までも核爆弾はえぐり取っていた。


そこにフネは横だわっていた。


普段の威光はない。


半死半生の傷ついた姿だ。


フネは流れ込んだ激流に飲みこまれ、翻弄される。やがて浮力により水面上に持ち上げられる。しかしその姿は痛々しい。


昏倒からようやく目ざめたフネは憎悪のかたまりと化していた。


混濁の世界から抜け出したフネの記憶はシュクセイキを思い出していた。


今の原爆を体に受けた体験は過去の放射線の記憶へと繋がっていた。


フネは、今、シュクセイキの時の記憶を再生し始めた。


怒りはフネの全神経組織を狂わせ、憎悪の噴出として、巨人がフネの内部から送り出された。


巨人はム=ウムの変化した姿だった。ム=ウムは胎児の姿でフネの内部に閉じ込められていた。


徐々に彼は主の支配下を離れ、フネの統制下にはいっていた。


ポラリス・ミサイルをフネがその体に被弾した時、ムも痛みを感じた。


それは遠い昔から統いてきたム=ウムの一族の言いしれぬ悲しみを具現したような痛みてムをうならせた。

気づいた時、ム=ウムは生まれ変わった姿で大海原を泳いでいた。



今までの自分とは別人のようだ。


ム=ウムは、何かの怒りにとりつかれたように、水をけっていた。


■(続く)

ガーディアンルポ03「洪水」第6回(1979年作品)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

http://ameblo.jp/yamadabook

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