始まりの1.5時間
今日で春休みも終わり。春休みとは本当に短いものだ。
「宿題が終わらない...」
もう1時間は経過しているだろう。しかし私のプリントは半分進んだか進んでないか位だ。
「社会嫌い...」
そう呟いたときだった。
ドアが勢い良く開いて私の漫画は綺麗に折れた。
「お母さん!ドアはノックしてからにしてっていつ...も...」
しかしそこに立っていたのはお母さんではなかった。
「やぁやぁみゆきくんお困りのようだね」
松嶋翔太だった。
「いい加減にしてよ。私は《なな みゆき》じゃなくて《ななみ ゆき》」
私の名前はよく間違えられる。
私自身幼稚園に入るまでずっと《みゆき》だと思っていた。
「べつにいーじゃん。ところでここに完璧な俺のプリントがある。さあどうする?」
「教えてください...」
翔太は頭が良い。(ついでにバスケが好きでよくモテる。)
それに対して私は理系以外は平均以下かもしれない。体力に自身はあるが足は遅い。50㍍は恐らく8秒代だろう。
「じゃあとりあえず自力でやろっか。今から10分ね」
家庭教師気取りの翔太が言った。
少ししてからまた声をかけられた。
「どこまで進んだ?」
私はプリントを見せた。1問しか解けなかった。しかし
「おー!それ一番難しい問題だよ!自力で解けたのかー凄いな。」
と、頭を撫でた。これこそがモテる理由だと思う。
「あと少しだから頑張ろーな。あ。おばさんに珈琲もらってこよーか?」
「うん。ありがと。」
プリントは無事に終わった。1時間かかったが。
「終わったー!」
「お疲れさまー」
「お礼何がいい?」
少し考えてから照れた顔をして
「幸と喋ってたい」
吃驚した。いつもなら『幸のクッキー!』とか言ってくる。
「そんなのでいいの?」
「うん」
「珈琲お代わりいる?」
「ほしい!」
「ちょっと待ってて」
私はカップを2つ持ってキッチンへ向かった。