♡♥︎♡♥︎♡千恵美 4/10♡♥︎♡♥︎♡
「でさでさー!」
「えーまじぃ!?」
「あっ!おいこら返せー!」
「やーだねー」
「宏太めー!」
(あぁーあ、やっぱ無理だょぉ…)
私、鎌ヶ谷千恵美はただ一人、椅子に座って教室のざわめきを聞いていた。
皆もうとっくに関係が作られていて、引っ越してきた私のことなど、見向きもしなかった。
(ダメだった…。自分から声を掛けるって、決めたのに…)
「はぁ…」
思わずため息をついてしまう。
すると。
「どした?」
「…え?」
ふと声がして、そちらの方をみると…
「…!!」
男の子がいた。
その時二人の顔は向き合う形になり、その二つの顔の距離は10cmくらいだった。
(ち、近っ…!)
その男の子は私を見てもう一回
「ため息なんかついて、どーした?」
と聞いた。
「ぇ…ッと…いや、なんでも…」
顔を赤らめながら私が言うと彼は
「ん…そっか」
と言って、周りにいた男の子達とまた喋り始めた。
「おー宏太、やっさしー!」
「一人の子に声かけるとか、イッケメンじゃーん!」
「おいっ!変なことゆーなよー」
「ハハハ…」
「…」
そんなざわめきの中で、ただ一人。
私は、椅子に座って顔を真っ赤にしていたのだった…。
そしてこの時、私はまだ知らなかった。
初めての恋。
そう、初恋が始まっていたことに…