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第12話 確認とお祭り当日

「いらっしゃいませー……ってレイシア?」

お祭りまで後一週刊も無い状況。お祭りの準備も最後の追い込みになっているときにレイシアがいつも通りお客さんが居ないお店にやってきました。

彼女は私の声に反応して右手をスッと上げると店内をぐるりと見渡しながら私の居るレジの前にやってきます。

「あなたのお師匠さんはまた部屋に居るの?」

「うん、居るよ。呼んでくる?出し物は作り終えたみたいだからすぐ出てくると思うよ」

「あ、そこは心配ないみたいね」

「状況を確認しに来たの?」

私がレイシアに声を掛けると彼女は少し疲れた感じで「それもあるわ」と言いました……私たちが色々している間彼女も色々あったみたいです。

「出し物がちゃんと出せるレベルの物かどうかの確認とか、色々とね……今回は首都からお偉いさんが来るからってそこら辺ちゃんとしろって父さんうるさくって……」

「大変だね。レイシアも」

「まあ、そこら辺はあなたの師匠なら問題なさそうだし、その辺りは良いわ」

「でも適当なんだね」

「流石に全部真面目に見てられないわ」と言いレジに体重を乗っけるレイシア。いつもはしっかり者の彼女が怠けている貴重な一面です。

「それ以外にも色々あるの。とりあえず呼んできてくれない?」

「うん、分かった。ちょっと待ってて」

私はレジを離れ、師匠の部屋へと向かいます。ついこの前まで怪しげな爆発音や何かを削る音などが聞こえていた師匠の部屋ですが、今は打って変わってとても静かです。暫く真面目だった反動でしょうか?とりあえず師匠の部屋を三回ノックします。

「はいはいはい、何ミリア?お茶?」

期限に追われることが無くなり気が緩んでいるのか、少し上機嫌気味な師匠がノックの回数だけ返事をしながら部屋から出てきました。

そして師匠がお店の中にやってきてレイシアの姿を見た後、首をかしげます。

「ん?レイシアちゃんどうしたの?お買い物?」

「レースさん、出し物の事で少し聞きたいことがあります。出し物の順番を聞いて回っているのですが、何か要求は有りますか?」

「順番?」

「ああ、そういう事」

レイシアの言葉に首を傾げる師匠。私としては彼女の言葉で納得と大変だなあというちょっとした同情の気持ちが湧いてきました。

「そんな事も聞いて回ってるんだ。レイシアも大変だね」

「大体の人は何処でも良いって言うんだけどね。レースさんは何か要求ありますか?」

「うーん、じゃあねぇ」

私たちの会話を聞いた後、師匠は顎に指を乗せて少し考え、そして指をレイシアに向けた後聞いてきます。

「できる限り後にしてもらえる?」

「後?そうなると夕方から夜位になってしまいますけど……」

「うん、それで良いよ。寧ろそっちの方が良い」

「……?」

師匠の言葉に首を傾げるレイシア。……師匠は本当にどんな物を出し物として出すつもりなのでしょうか。師匠のご機嫌な様子に反比例して不安が増えてきます。

「まあ、レースさん以外に夜を指定してくる人はいませんから要求は通ると思います」

「うん、お願いね」

「では、私は次の所へ行かないといけないので……ミリアもじゃあね」

「うん、レイシア頑張って」

「レイシアちゃんファイトー」

そう言うとレイシアはメモ帳らしき紙に色々書きながらお店から出ていきました。私たちとは違ってとっても忙しそうな空気が体全身から出ていました。







そして私たちは特にこれといった事は無く街祭りの当日になってしまいました。

街祭りは中央広場や、商人通りを中心に沢山の人で盛り上がっています。出店を出して美味しそうなお肉や、綺麗なガラス製の道具を出す人々。大きな弦楽器を街中で弾いて注目を集める三人のグループ。何というか……

「……旅人通りの夜の感じ」

「トリエラさんもそう思ったんですね」

私の隣に立っていたトリエラさんが私たちから見て少し遠くで騒ぐ人々の様子をそう評しました。

私たちが居るのは職人通りと中央広場の境目の様な位置でレイシアから色々借りて出店を開いています。商品は勿論お店に有った普通の大衆にもそこそこ受けそうな商品。師匠特性の傷薬や審議は怪しい美容液などです。お店の売り上げは……お察しくださいといった感じです。お祭りのときは職人通りの人も出店を出してるからこっちにも人は来るんですけどね……。

「……人、多い」

「本当ですね。街に居る人全員が外に出てるんではないでしょうか……所でトリエラさん、ここで店番に付き合わないで見に行っても良いんですよ?」

トリエラさんは私がお店を出した時からずっと横で立っていて私と街の様子を見ながら話し相手になってくれています。私としては暇を紛らわせて助かりますが、ここに居るより商人通りの方へ行けば色々楽しいと思うんですが……。

ちなみに師匠は出し物の最終調整とのことで自室に引きこもっています。

「気にしなくて良い……人混みは余り好きじゃないから」

「そうですか?なら良いんですけど」

そう言うとトリエラさんは顔を中央広場の方へ向けます。視線の先にはいつもは商人通りで顔を見る髭を生やしたおじさんが棒のような物を回して、体格に似合わない踊りを披露しています。

そして空中に勢いよく投げた棒を綺麗にキャッチして深いお辞儀。舞台の前に置かれた椅子に座る人や立って見ていた人たちから大きな拍手を贈られます。

「……凄いなぁ」

「……そう?」

それを眺めていて思わず感想が出た私。そしてトリエラさんがそれに対して少し不思議そうな声を出します。

そんな私たちを余所に舞台に上がっている人は大きな声で自分のお店の宣伝をして、周りから笑い声や拍手を再び沸かせた後舞台から降りていきました。

「そっか、舞台に出ればああやって宣伝することも出来るんだ」

成程、ああやって目立てば認知度が上がる。そういう意味ではレイシアのアイディアって結構的を射てるんだと再び納得していました。まあ、師匠の作った出し物の出来にもよるのでしょうけど。

「……つまり目立ちたいってこと?」

私の独り言を聞いたトリエラさんが視線を舞台から外し、こっちに向いてきました。

「いや、目立ちたいんじゃなくて、ああやって目立てばお店の売り上げもちょっとは上がるのかなあって思っただけです」

「……成程」

私の言葉を聞いたトリエラさんはいつも通りの無表情ながら暫く考え事をしていました。そして意を決したかのように私の方を向きました。

「……ミリア、空き瓶ある?」

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