2月14日(小森都子の場合)
見ちゃったの!
私見ちゃったんですよ!
うちのクラスの丸林君が、これまた同じクラスの兵藤君の下駄箱にピンクの包みを入れている所を!
委員会の仕事でちょっと早めに登校したから見ることが出来たんだけど、ほんっと驚きです。
だってだって、これってそう言うことですよね!?
あのちょっとクールな丸林君がおバカキャラで小柄な兵藤君の事をってことですよね!
クラスの男子の中でも特に仲の良い3人組。
ちょっとクールな丸林智樹君。
粗暴なのに真面目な皆本仁君。
おバカなムードメーカー兵藤聡史君。
別に三人ともイケメンって言えるほどカッコいいわけじゃないんだけど、何と言っても3人の距離が近すぎるんです。
前々から怪しいとは思ってたしネタにもさせてもらってたけど決定的な証拠!
イヤー!
これからどうなっちゃうのかしら!?
―――
――
―
信っじられません!
バカキャラでもやっていいことと悪いことがあります!
登校して丸林君からのチョコを見つけた兵藤君は、あろうことか大きな声で自慢した。
その様子を見て丸林君は頭を抱えています。
これはいけません!
このままでは2人の恋路が絶たれてしまうかもしれません!
「兵藤君! いい加減にしてください!」
そう思ったら思わず声を上げていた。
クラス中の視線が集まるが、そんなことよりも丸林君と兵藤君の恋路の方が大切です!
気合を入れて声を出す。
「兵藤君、そのチョコレートは兵藤君を好きな子が勇気を出して送ったものなんですよ」
そう、同性同士でチョコを贈るなんて相当な勇気が必要だったはずです!
「下駄箱に入れたのだって他の人には知られたくないけど、思いは伝えたかったからじゃないでしょうか」
許されぬ恋。
知られてはならぬ恋。
そんな思いが詰まっての下駄箱チョコのはずです!
「そんな人からの心のこもった物を無闇矢鱈に人に見せて自慢するのは良くないと思います」
丸林君の気持ちに気付いていなかったとしても、多くの人に話しちゃうのは良くないと思います。
だからこそ丸林君はあんなに元気なく机に座っているんです!
「だからちゃんと、兵藤君も真剣に相手の気持ちに向き合って欲しいんです」
そう、丸林君の気持ちに!
「……そうだな、小森。俺、チョコもらったのなんて初めてだから浮かれてたよ。
ありがとう、俺真剣に向き合うよ!」
よかった、わかってくれたんですね!
「うん、その方がいいと思います。あ、そうだ。もしかしたら手紙とか入ってるんじゃないです?」
だから、アドバイス。
こういう場合は手紙を入れて呼び出すのが王道ですもんね!
予想は的中。
包みを開いた兵藤君が手紙を取り出し、読む。
私はその隙にチラッと丸林君を見る。
すると丸林君は机に突っ伏すところだったが、目が合ってしまった。
少し逡巡。
けれども丸林君に向かって小さくガッツポーズ。
そして――
「ガ・ン・バ」
と声にせず口の動きだけで伝える。
障害は多いだろうけど私は応援するよ!
という思いを込めて。
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