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意外に強い

 そんな成り行きとはどんな成り行きか自分でも全く理解できていないのだが、確かに孤児の受け入れを許可したのは自分だった。

 現代日本は少子高齢化が進んでいて、このままでは生活保護や年金などのシステムは近いうちに破綻する、と騒がれ続けていた。いっぽうで捨て子や児童虐待などの件数はうなぎのぼりで、これもまた対策を練らなければならなかった。

 「児童保護システムβ」とは、企業が登録して孤児を受け入れる、国が開発した画期的なシステムだ。各地に散らばる孤児院が子どもの同意を得て登録し、条件に見合う企業が受け入れる。

 そして企業は預かった子供を、システムに対する理解のある社員に引き渡す。うちの会社ではそれが俺だった。確かに小さな会社だし、ほかの社員は新婚だったり前科持ちで信用ならなかったり……。それでもいきなり、こんな小さな子を育てろといわれたって、方法が全く分からない。


 「……あの」

「え?ああ、えーと……。由紀ちゃん、だっけ。大丈夫だよ、一応おじさん家部屋は二つあるから。ちょっと、いやかなり汚いけど掃除するし!」


 初っ端から不安そうな顔をしていたら、子供だって不安になるに決まっている。ましてや相手は年頃の女の子だ。変なおじさんだったらどうしよう、と頭の中は疑いでいっぱいになっているはずだ。

 最近は仕事が忙しくて、ひげも適当にしかそってない。それから台所はカップ麺の容器で溢れてるし風呂はちょっとカビが生えかけてるし床は雑誌やら何やらでわずかしか顔を覗かせてないしそれからそれから……。考えると頭が痛い。


 「おじさん、ちょっと部屋掃除してくるから、会社で待っててくれないかな?5時くらいまでにはなんとか」

「お、お仕事は、いいんですか」

「あー、社長も事情話したら納得してくれると思う。たぶん。それに午後からは有休とるよ」

「だめです!あの、わたしお世話になるんだから、お掃除くらいできます!それに家のお仕事得意です!料理とか、洗濯とか」


 そんな家事を預かった子供にさせるわけにはいかない。第一この小さな子、由紀ちゃんは独身男の部屋の汚さを知らないのだ。そこはもう、魔窟というか魔境というか、女の子なんて踏み入らせたあかつきには悲惨な末路をたどること請け負いである。

 それこそ絶対にだめ!と首を振ったが、由紀ちゃんは意外にもしつこく、「できることならやりたい」「絶対に迷惑はかけたくないんです」と何度も何度も繰り返した。

 そしてついには、俺のほうが折れた。


 「……想像してるより、10倍は汚いと思ってね?」

「はい!大丈夫です!」

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