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モノノケカミカミ  作者: 水島緑
こんこん
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占い途中


 暗闇の奥へ沈んだ視界の上からまばゆい光が差し込んだのは、ザラついた感触の床が存在することを理解したすぐ後のことだった。戸惑うばかりのトーコとは違い、突然現れた光源の所為で激しく明滅する視界をぐっと細めた衛は瞬時に辺りに嗅覚を利かせ、最上兄は現状の把握に勤めた。だが二人の行動は意味を成さなずに終わった。

 何度も見たことのある部屋と家具の配置、山中の澄んだ空気の中で微かに感じる神事の残り香。足に感じるザラつきは畳の感触だったらしい。

 目の前には屹立する狐の耳。

 ほっと安堵の溜め息をこぼし、力を抜いた二人とは対照的に、トーコは警戒心を剥き出しにして衛の背中に隠れて顔だけを覗かせた。

 縋る視線と強く服を握られる感覚を感じながらも意図的に無視し、今にも泣きそうな顔で衛と最上兄を交互に見るお稲荷様に意識を向けた。

「うぅ……狼くーん」

 ぐずぐずと鼻を鳴らすお稲荷様に話を聞くと、なにやら良くないことが起こったらしく、友人の神様とお喋りしていたお稲荷様は突然の出来事に大慌てでなんとかしようと思ったが、いきなりのことに頭が回らず、その神様の助言通りに頼れる人物を召喚して、今現在の、泣きながらの謝罪だった。

 いくら慌てていたといってもなんの相談も無しに巻き込んだこと、衛たちの都合を考えなかったことやその他諸々を必死に謝罪するお稲荷様様だが、衛たちは最初から怒ってなどおらずなんとかお稲荷様をなだめて、ちんぷんかんぷんなトーコにも事情を懇切丁寧に説明した。

「えっと……紺ちゃんは神様で、アタシたちがここに連れて来られたのは紺ちゃん一人じゃ危ないからってことなの?」

「そうだね。大体合ってるよ。一つ違うといえば思いのほかトーコチャンとコンチャンが仲良しになったことかな?」

「うん」

 衛と最上兄の目の前には、持ち前の明るさを発揮して「可愛い!」と連呼しながらお稲荷様に抱きついてふさふさの尻尾を愛でつつ、もちもちの白い頬同士を擦り付けているトーコが。お稲荷様自身も自分の存在を気にせずに接してくれる人は大好きなようで、頬を赤くして照れながら控えめではあるが自ら進んでじゃれ合っていた。

 美少女二人が絡み合い、服が乱れて息が荒くなるに連れて眼福の度合いは増すものの、同時に桃色のオーラが広がっていくのを感じた男二人、最上兄は鼻の下を伸ばし、衛は早々に意識を飛ばしていた。

 そんな衛を見て三人が笑った。

 堅苦しい空気が、図らずも軟化して穏やかな雰囲気になった。当の本人は情けなくもぐったりと失神していた。


「え……なに、これ」

「ちょ、ちょっとちょっと! 冗談……だよね?」

「指離したの誰!? 手順間違えなきゃ何も起こらないって言ったよね!?」

「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? あぁもう! こんなことになるならやらなきゃ良かった!」

「どうするの? ……もしかしなくてもヤバい、よね?」

「に、逃げよ! ほら早く!」

「置いてくつもり!? ふざけないでよ! あたし絶対行かないからね!」

「で、でも」

「危なくったってあたしは動かないよ。絶対見捨てたりなんかしない!」

「……そんなこと言われてわたしだけ逃げたらマジ友達失格じゃん」

「じゃあ、どうしよっか」


 夕日が半分ほど沈んだころ、異常を感じたお稲荷様が先導する後ろを粛々とついていった。お稲荷様の顔にはいつぞやの狐面が覆っていた。神社から出る際には必ず付けるようだ。流石に今回最上兄が笑うことはなかった。

 黒と赤に彩られた道を進み、目的地に近づくにつれて人気はなくなっていく。動物的な本能なのか、不気味で奇妙な場所に近づく人間はいないようだ。

 夕暮れ時とはいえ昼間よりは涼しいが、それでも暑さを倍増させる騒がしい蝉の声が鬱陶しく感じる。

 目の前には衛たちの通う高校、桜庭高校が存在する。お稲荷様は感心しきりでとてとて動き回って校舎を別角度から眺めては感嘆の声を上げる。彼女の耳はそこかしこから聞こえる蝉の共鳴を完全に遮断しているのかもしれない。

 長く長く伸びる四つの影法師が夕日に当てられて赤く染められた校門をくぐって、人っ子一人いないグラウンドを横断した。

 風に転がる片付け忘れたサッカーボールがいやに不気味だった。


まず、すいませんでした。

ふつーに忘れてました。

……次回はきっちり更新します。

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