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モノノケカミカミ  作者: 水島緑
こんこん
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占い始め

 冷房の良く効いた喫茶店の中で、レモンティーの入ったグラスを抱えてストローを銜えながら気まずげに俯くのはトーコ。対面には最上兄が苦笑を浮かべながら優雅にアイスコーヒーを飲み、斜め前には落ち込だままで無気力な表情をしている衛がいた。

 店内は学校帰りの学生たちで賑わっており、城をイメージした外観と内装のセンスの良さと「キャッスル」というシンプルかつわかりやすい店名が受けて近辺の学生たちには大人気の喫茶店だ。

 全体的に和やかな雰囲気が溢れる店内だが、奥まった席の一つに着席した一つのグループは解散寸前のバンドのような、それはもう気まずい雰囲気で一杯だった。周りの客もそれに影響されてか、どこか沈んだ空気だった。

 その周囲に多大な被害を与えている席はというと、膠着状態から暫しの時を経て、ようやく状況が変動するところであった。

 申し訳なさげにちらちらと衛の様子を窺いながら手持ち無沙汰に木製テーブルの塗装が剥げた部分をいじくり回しているトーコに不憫さを感じたのか、最上兄は未だに落ち込む衛の肩を叩いた。

「それでマモルクン、この可愛い女の子は誰だい?」

「とも……だち? うん、友達だよ。その……多分」

 先程の声を大にした「知りません宣言」がよっぽど効いたのか、口をへの字に結んでふてくされた顔のまま半ば睨む目つきでトーコを見た。

 鋭い視線を受けたトーコはうっ、と声を詰まらせた。滲み出てくる涙をこぼさないように我慢して衛に頭を下げた。

「ごめんなさい……。アタシ、びっくりして、あんなこと言うつもりなくてっ、あの、その……ぐすっ」

 先日、衛を誘惑した人物だとは思えないほどに小さくなり、生まれたての子鹿のように弱々しく震えて目尻の涙を拭うトーコに衛の怒りは吹っ飛んでいった。とはいえ素直に許せるというわけでもなく、しかし泣き止んで欲しい気持ちもあり、元々人間関係が希薄な衛には難しい板挟み状態に陥ってしまっていた。

 そんな衛たちを見て、最上兄は心の底から驚いていた。自分はどう接すればいいのか上手くわからずに近づけなかったが、トーコは違ったようだ。そして自分とは違って衛の心を開かせたトーコに寂蓼感が混じった嫉妬を覚えるも、それ以上に感謝の念を抱いた。

 まるで友達のように、いや友達同士で喧嘩している二人を微笑ましげに最上兄は見守っていた。

 だが、次の瞬間、真っ黒なカーテンに似た歪む帯が衛たちを包み、視界を奪いさっていった。

 ぎょっとして勢い良く立ち上がる衛とテーブルに手をついて中腰のまま立ち上がり形の良い眉を寄せる最上兄に続いて、トーコも泣き顔のままで恐る恐る周りを見渡す。

 明らかな異常が起きているにも関わらずに、他の客は気にするどころか気づいている様子もなく、この黒い帯に包まれているこのテーブル席は恐らく見えていないのだろう。

 次第に帯越しに見える景色が少しずつに歪んでいき、捻じくれて原型もわからぬほどになった店内の様子を最後に、黒い帯は一気に衛たちの頭上に広がり三人の体を包み込んだ。


 音もなく“はい”に滑って移動した十円玉に四人の女子高生は目を見張った。

 蒼白になる、黙り込む、立ち上がる、と冷静に画用紙を見る一人を除いて様々な反応をみせる三人は一様に引きつった顔で自分の指先見た。

「嘘でしょ……ホントに動いた」

「ちょ、ちょっと! あたしやだよ! もうやめよ? 動いたんだらからやめようよ!」

「ど……どうするの?」

「このまま続けるよ」

「でもヤバいって……あたし本当にやだよ……。なんかあったらミキのせいだかんね!?」

「そんなにビビることないって。手順を間違えなければ何も起こらないんだから」

 同意して頷くのが一人だけと残りの二人はしっかりリスクを理解しているようだが、コックリさんという呪いを始めた時既に代償は払われている。

 もう、遅いのだ。

さて、物語も中盤……でいいのかな。ずいぶん進んできました。

ランキングには程遠いところでゆらゆらしているこの作品ですが、それでも見つけ出して読んでくれているというのは嬉しいことです。

今回は定時通りに更新です。

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