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モノノケカミカミ  作者: 水島緑
マウンテン爺婆姫
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友と自称できるか

「ちょっとミキ! どこいってたの!?」

「うんうん、ホント心配したんだから」

「あ、あはは、道に迷っちゃって。えへへ」

「んもードジなんだから」

 ミキ、と呼ばれた少女の額には冷や汗が滲んでいた。目線はちらちらと泳ぎ、離れたところにいる衛達の様子を窺っていた。それもそのはず、鳴海と最上兄がこれでもかというほどに脅迫して口止めしたのだ。怖々と見るのは何かされないかと確認しているのだろう。

 それを見た衛は苦笑して、自分が気絶している間に全てが終わっていた事にちょっと悲しくなった。

 ふと気になって振り返ると、手を繋いだ鳴海と桃花が笑顔で談笑していた。地下部屋から出た後から、二人はずっと一緒にいた。

 前を向けば妹に話し掛けている兄の姿があった。いつものように最上妹は喋らないが、どこか和気あいあいとした雰囲気で、最上兄も嬉しげであった。

 そんな最上兄妹に、鳴海と手を繋いだままの桃花が声を掛けた。

 衛の予想通りそれは感謝の言葉で、鳴海もそっぽを向きつつ、小さく、ありがと、と囁いた。

 てれてれとにやける最上兄に、妹は踵で爪先を踏み抜くとすねたようで離れていってしまった。

 ぽきり、と小気味よい音がしたが、衛は聞こえない振りをした。

 蹲ってうめく最上兄に、あわあわと慌てて鳴海の手を引っ張る桃花、表面上は面倒そうに、しかし内心では頼られて嬉しく思いながら最上兄に近づく鳴海。芝生に足を取られてこけそうになったがなんとか体勢を直して一息つく。ちょいちょいと手を引っ張られる感覚に振り向くと、桃花が青い顔で鳴海の足下を指差した。見ると妹に踏まれた最上兄の爪先の上に鳴海の踵が力強く陣取っていた。

 わーきゃー姦しい知り合いを遠くから見つめる。

 鳴海のように、桃花のように、半分だけ人間の自分にとって友人とは誰なのか。幼い頃からの知り合い、中学の同級生、半分怪物の僕には誰がいるんだろう。目の前の人達はどうだろう。一人は同類、一人は敵対者、一人は霊感のある人間。自分の中のモノを知るこの人達の友達に、僕はなれるのかな? 半分が怪物で、もう半分が人間のどっちつかずな僕はどっちにも受け入れられないんじゃないか?

 ……本当にそうか? ただ逃げてるだけじゃないのか?

 ぶわっと突風が舞い上がり砂と一緒に衛の中の曇天を竜巻のように巻き上げて、ぐるぐると回るそれが心だった。

 深く暗い思考の海に漂う衛には集合の合図の笛の音すら届かない。

「あ……。マモルクン集合だよ!」

 ん、と声を漏らして頷いた衛と連れ立って教師の元に集まり、毎度のようにいつの間にかいなくなった最上妹と合流し、流れるような動作で兄をぼこっと殴った。

 オウ! などと欧米じみたうめき声を上げて頭を撫でる最上兄は隣の衛をちらりと横目で見た。

 うつむきがちな横顔は暗く沈み、酷く弱々しく思えた。今にも折れてしまいそうな衛を見て、最上兄は励まそうと言葉を選んで、迷って、結局何も言えずに口を閉じた。軋むほど奥歯を噛み締めても、何も出来なかった。

 数時間前に見た登山口に戻ってきて、いつものように明るい調子でふざける兄の背中に、少し前からよく見るようになった兄の悲壮に歪んだ表情が重なって見えて、それを振り払うためにいつものように兄の頭をどついた。

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