第三話
陽も陰ってきたその日の放課後、歌は腕を伸ばしながらトボトボと歩いていた。
「疲れたぁ・・・何で学校になんか行かなきゃいけないんだろ」
「勉強するためだろ」
歌のため息混じりの呟きに、どうでも良いようにユウが応える。
「勉強なら家でだって出来るでしょ」
「なら、対人関係を学ぶためだろ」
「友達なら中学校でもつくれるわ」
「社会勉強の意もあるんだろ」
あくまでどうでも良いように、どうでもいいなら応えなければいいのにユウが律儀に応える。
歌は今日三度目のため息を付いた。
歌は夕飯が出来るまで宿題をやることになっている。
ユウは料理も上手い。
たまに守護霊ってなんだっけ?と思えてくるほど生きた人間とやることは同じだが、人間より数倍何でも出来る。
これはもちろんユウだけじゃなく他の守護霊もそうらしい。
こんなに完璧な人が沢山いるとは思えないけど・・・。ここまで出来ないと人なんて護れないってユウが言っていたしなぁ。
死んでから守護霊になるまでに特訓でもやるのかしら。
「・・・ユウ。今日多くない・・・?ナスが」
「そうか?いつも通りだろ」
今日の献立はナスの煮物にナスの肉詰め、ナスの味噌汁とナスの入った混ぜご飯。と、ナスのオンパレードだ。
「私がナス嫌いなの知ってたの?」
「・・・さあな」
知ってたわね、これは。
ため息を付いたものの、決心したのか鼻をつまんで勢い良くナスを口にほおりこむ歌を眺めながら、ユウは静かに食べ進めていった。
涙目で箸を置いた歌はお茶を一気に飲み干した。
「なんだ歌、全部食べたのか。おかわりいるか?」
「・・・それ軽く虐めよユウ」
食器を片付け、椅子に座りなおした歌の前にユウが食後のデザートを置いた。
「プリンだ!どうしたの?これ」
「頑張って食べてたからな。ご褒美だ」
「やっぱりナスが嫌いなの知ってたんじゃない」
「なんだ?いらないのか」
「いる!」
ユウが取下げようとする手を平手打ちしてプリンを取り戻した歌は嬉々としてスプーンを手に取った。
ヒリヒリと痛む手をさすりながらユウは歌が美味しそうにプリンを食べる姿を見て苦笑した。
「おかわり、いるか?」
なかなかユウのキャラが定まらない・・・。