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「幼馴染を優先するのは当然だ」と言い続け、私との婚儀にその幼馴染とやらを連れて現われた婚約者の末路~クズな婚約者ですもの。いくらでも譲りますわ~

作者: ぽんた
掲載日:2026/05/01

「ったく、おまえはほんとうに気の利かない女だな。つぎの王家主催のパーティーでおれがエスコートするのは、メリッサだ。彼女は、おれの愛する幼馴染だ。前に言ったよな? おれの優先順位は、一番がメリッサ。二番が賭け事だ。おまえは、一応婚約者だから三番にしてやっているんだ。どうせ結婚するんだ。それまでは、優先順位の高いレディとすごさせてもらう。いいな?」


 婚約者のバート・ゴールドバーグは、ぬけぬけとそう言った。


「ですが、バート。わたしたちは、社交界でほとんどいっしょにいることはないのです。婚儀を目前にしているいま、王家主催のパーティーまで別々にすごすというのはどうかと思いますが」

「おまえは、気が利かないだけでなくわからずやだな。それから、見栄っ張りだ。どうせたったひとりで出席するのが恥ずかしいんだろう? これだから、オファロン家の令嬢はいやなんだ。令嬢だけじゃない。おまえの親だってそうだし、兄貴だってそうだろう? なんなら、いっそのこと婚約破棄してもいいんだぞ。そうだ。その手があるか。でもまぁ、すでに婚儀やそのあとのパーティーの手配も終わってるんだろう? 祝儀だって集まっているんじゃないのか? だから、いまさらおれに婚約破棄されただなんてムダにプライドの高いおまえにはできっこない。だったら、おとなしくおれの言うことを聞くんだ。それならば、婚儀をしてやろう。もっとも、婚約破棄も離縁もいつでもできるがな。まぁ、すべてはおれの気持ちひとつだ」


 バートは、そう言って大笑いした。


「バート、いまのは本心ですか?」


 怒りと屈辱を抑えようとがんばっているが、表情と声に出てしまっただろう。どちらも冷え冷えとしていたはずだ。


「ああ。本心さ。王家が定めたくだらない結婚だ。たとえ結婚しても、おまえを愛することは絶対にない。正直、おまえのその不吉きわまりない黒髪と黒い瞳を見たくない。おまえとの結婚で、これからの人生を縛られるなんて冗談じゃない」

「なるほど。いまのがあなたの本心。本音なのですね。わかりました。では、あなたの要望に添うことにします」

「ハンッ! エラそうに。ワガママ放題、贅沢三昧で育ったおまえらしいな」


 バートは、鼻で笑った。彼のわたしへの誹謗中傷は、子どもの頃からなので慣れっこだ。


「つぎのパーティーで、おまえが壁の花になるのを楽しみにしているぞ」


 彼は、そう言うとサロンから出て行った。


「とんでもないやつだな。同じ男として恥ずかしいかぎりだ。よくもまぁ二十年以上、あんなやつの婚約者でいられたものだ」

「そのとおりだ。マミ、きみは女神のごとく慈悲深くて忍耐強い人だね」


 テーブルの間を縫うようにして、ふたりの男性が近づいて来た。


 じつは、サロンを借り切っていたのだ。もちろん、バートはそのことを知らない。この時間帯のサロンは、ふつうなら人がすくなくない。すくなくとも、わたしたちと男性ふたりの二組だけということはない。


「そうね。自分でも驚いているわ。自分自身を全力で褒めてあげたいくらいよ」


 椅子の背にもたれ、おおきな溜息をついた。


 この男性ふたりが証人だ。


 二十年近く耐えたのだ。もういいだろう。


「行きましょうか、ジェントルメン?」

「マミ、わたしがエスコートしよう」

「いや。マミは、わたしがエスコートする」


 立ち上がると、ふたりが同時に腕を差し出してきた。


「では、ふたりにお願いするわね」


 笑いながら、ふたりの腕に自分のそれらをからませた。



 バート・ゴールドバーグとわたしことマミ・オファロンは、いわゆる生まれながらの婚約者だ。ちなみに生まれながらの婚約者で顔見知りではあっても、幼馴染という存在とは異なる。すくなくとも、バートにとっては幼馴染は至高の存在らしい。


 それはともかく、わたしたちの婚約はずっと昔に王家が定めたのだ。その内容は、オファロン家に女児が生まれた場合、ゴールドバーグ家子息と夫婦になるというものだ。


 その内容に合致したのが、よりにもよってわたしたちというわけ。


 そのありがた迷惑、というか正直「勘弁してちょうだい」的な命が王家からいつ出たのか、あるいはどうして出されたのかはわからない。そして、そんな伝説級の命に生真面目に従うのもどうかと思う。


 しかしながら、いまだに政略結婚や契約結婚は貴族の間ですくなくない。それは、上位貴族になると顕著だ。つまり上位貴族に生まれてきたからには、それらが当たり前で従わねばならないわけだ。


 だから、わたしも従った。それこそ、言葉が話せるようになった頃から。が、バートは違った。


 子どもの頃から、彼は優先順位に固執した。ムカつくくらいに。ちなみに、子どもの頃の彼の優先順位の一番は、女の子と遊ぶこと。具体的には、幼馴染の女の子とだ。その幼馴染が、メリッサというわけだ。はやい話が、彼は子どもの頃からメリッサといい遊びも悪い遊びも楽しんでいた。しかも、それを公言していた。わたしは、そんな彼のことが好きではなかった。わたしのことを嫌っている相手を好きになることは難しい。が、それでも努力はした。婚約者として恥ずかしくないよう、自分なりにがんばった。彼に歩み寄ることも含めてだ。


 しかし、彼はダメだった。そもそも、婚約をしているという自覚がないのだ。当然のことといえば当然だろう。


 しかも彼は、浮気だけではない。賭け事や危ない投資もやっている。ゴールドバーグ家の名をチラつかせ、あらゆるところから借金をしている。いまやゴールドバーグ家は家運が完全に傾き、爵位を剥奪されるのも時間の問題だ。


 彼の両親、つまり現当主夫妻も悪いのだ。息子の素行を諫めるどころか、見てみぬふりをしているのだから。


 ゴールドバーグ家は、いまや嫌われていて忌避されている存在。使用人たちでさえ、とっくの昔に見切りをつけてしまった。


 それでも、バートは浮気や悪行をやめようとしないからある意味大物なのかもしれない。


 おとなになってからも、わたしは彼にさまざまなことを言い続けた。しかも、わたしたちの婚儀が近づいている。


 とはいえ、そのつどバートに優先順位を突きつけられ、話し合う気をなくしてしまうのだが。


 今回もそうだ。しかも、婚約破棄まで宣言された。


 そう。婚約破棄までもちだされたのだ。


 これ以上、なにもしないわけにはいかない。わたしだけのことではない。オファロン家そのものの矜持が踏みにじられたのだから。


 ぜったいに許すつもりはない。積年の恨みと憎しみを全力で叩きつけてやる。


 とはいえ、すでに計画は進んでいる。バートのことをよく思っていない、あるいはわたしに同情してくれているありとあらゆる人たちの協力のもとに。




 王家主催のパーティー当日、宮殿の大広間に多くの人たちが集まった。


 バートはわたしに宣言した通り、彼の優先順位一番の幼馴染のメリッサを伴って現れた。そのメリッサのド派手できわどいドレスは、バートが代金を踏み倒すつもりで購入したものに違いない。


 彼は、メリッサとともにおおいに飲んだり食べたりした。王家主催のこのパーティーは、飲食がメインではない。招待客たちが親交を深めるのがメインだ。そんな中、ふたりは周囲がひくほど食べ、飲んだ。その量はすさまじく、このときのために飲まず食わずですごしたのではないかというほどだ。その様子に、周囲にいる人たちだけでなく大広間のありとあらゆる人が眉をひそめた。あるいは、嫌悪感をあらわにした。そして、ふたりはすっかりできあがった。当然だろう。あれだけ飲んだのだから。そのうち、周囲に絡み始めた。同性にはケンカを売り、異性に媚を売ったのだ。それがまた、あらゆる人たちの反感を買った。


 見まわすと、バートの両親であるゴールドバーグ家の当主夫妻の姿はない。おそらく、今夜のパーティーは欠席したのだ。


 息子の出席を止めることができなかったのだ。せめてその醜態や迷惑行為を目の当たりにしたくないのだろう。


 ちょっとしたタイミングで、バートと目があった。彼はまるで質の悪い野生動物のように、標的を定めたようだ。彼は美貌の男爵子息に絡んでいるメリッサの腕をひっぱると、まっすぐこちらに向かってきた。


「おやおやおや。これは、「ミス壁の花」じゃないか。哀れなものだな」


 彼は、舌なめずりをしながら言った。


「おれのパートナーを紹介しよう。おれの優先順位一番のメリッサだ。彼女は、おまえと違ってセクシーだろう? 愛くるしいだろう? それにくらべておまえはなんだ? ムカつくぐらい不吉な容貌じゃないか?」


 彼の誹謗中傷に、周囲の人たちのヒソヒソ話をはじめた。


「メリッサ。こいつがおれの優先順位三番だ。とはいえ、もうじき圏外になるがね」


 バートの大笑いに、メリッサはただ鼻を鳴らしただけだった。


「それにしても、おまえはほんとうに気の毒なやつだな。盛大なパーティーにたったひとりか? せめて父親か兄貴にでも頼めばよかったものを。ああ、そうか。それさえ断わられたのか?」


 彼は、またしても下品な大笑いをした。


 そのひどすぎる誹謗中傷に、視界の隅にわたしの愛する家族が拳を握りしめるのが映った。


 手出し口出しは無用。そうお願いしているが、家族はさすがにガマンできないらしい。


 その瞬間、肩を抱かれた。


「答えは簡単です。彼女は、父上や兄上にエスコートをお願いする必要はなかったからですよ」


 ウットリするようなテノールボイス。わずかに右横を見上げると、やさしい笑みを浮かべる美貌の青年がこちらを見下ろしている。


「なぜなら、わたしが彼女をエスコートしているからです」

「なんだと?」


 その宣言に、バートは気を悪くしたようだ。


「聞こえませんでしたか? それとも、理解が追いついていないのでしょうか? なんなら、もう一度言いましょうか?」


 わたしのパートナーの野性的な美貌にある双眸は、いまや冷たく光っている。


「ああ、なるほど。金で雇ったということか? さすがはワガママ放題、贅沢三昧の女だけのことはある。なんでも金で解決。ほんと、イヤなやつだ」


 バートは、わたしに視線を戻した。


「まっ、いいさ。せいぜい報酬料分だけの相手をしてもらうことだな。ああ、そうそう。婚儀にはメリッサも出席する。彼女の席は、特等席だ。準備をちゃんとやっておけよ」


 バートは、そう言うとわたしのパートナーに色目を使っているメリッサの腕をひっぱった。


「メリッサ、飲み直しだ。酔いがさめちまったからな」


 それから、未練がましくわたしのパートナーに媚びを売るメリッサをひっぱり、わたしたちの前から去った。


 この場にいる全員が、バートの愚かきわまりない言動を目の当たりにした。そして、その愚かさを痛感したことだろう。



 婚儀当日、大聖堂には多くの人たちが集まってくれた。だれもがわざわざ挨拶に来てくれた。


 バートが不吉きわまりないと罵り続けたわたしの黒髪と黒い瞳は、純白のドレスに映えた。だれもがそれを褒め称えてくれた。


 まぁ、社交辞令なのだろうけど。それでも人々の笑顔はほんものだ。快晴なことも手伝い、だれもが厳粛な婚儀がはじまるのを心待ちにしている。


 が、わたしの準備が完璧に整ってからでもバートはやって来ない。どうせまた優先順位一番のメリッサとイチャイチャか飲み明かして寝坊でもしたのだろう。


 多くの参列者たちをこれ以上待たせるわけにはいかない。というわけで、いわゆるバージンロードを父のエスコートで歩みはじめた。


 王家の命による結婚のため、王家に信任の厚い大司祭が式を執り行ってくれる。その大司祭の前までやって来た。父が退き、わたしは大司祭の前でポツンと立ち尽くした。


 参列者たちは、会衆席に座って辛抱強く待っている。もちろん、新郎になるべきバートがやって来るのを。


 そしてついに、大聖堂の大扉に彼の姿が現れた。


 逆光でよく見えないが、彼はひとりではなかった。


「優先順位はかえようがない」


 バートは、そう叫んだ。


「だから、この婚儀はメリッサとする」


 さらに叫んだ。それから、傍らにいるメリッサといっしょにバージンロードを歩きはじめた。


「ああ、神様。なんてことを……」

「バート、おまえというやつは……」


 最前列に座すバートの両親の絶望の叫びは、生涯忘れることはないだろう。


「さあ、そこをどけ。そこに立つのは、優先順位一番の愛する幼馴染のメリッサだ。彼女こそがふさわしい」


 すぐ近くまでやって来ると、バートは手を振ってわたしを追い払おうとした。


 どこかからかレンタルしたのだろう。メリッサは、鮮血と同色のウェディングドレスにその身を包んでいる。


 大司祭が眉をひそめ、わたしを見た。


 わたしは、その大司祭に笑みを浮かべてみせた。


「どうしてわたしがここからどかなくてはいけないのかしら?」


 これまで、バートには敬語で接していた。が、もうその必要はない。


「おまえは、やはり空気の読めないワガママ女だな。これを見ろ。おれの妻にふさわしいのは、おまえじゃない。優先順位一番のメリッサだ。それがわからんのか?」

「わからないわね。だって、あなたはここに立つ資格がないんですもの。それがどうしてあなたの優先順位一番とやらがここに立てるわけ?」

「なんだと? なにをわけのわからんことを」

「バート、わけのわからないのはあなたよ。この婚儀は、あなたのためのものじゃないんですもの。わたしのためのものよ」

「はあああああ? おまえ、ショックのあまりおかしくなったんじゃないのか?」

「あら? わたしは、いたって正常よ。ほら、ここに立つ資格のある人がやって来たわ。だから、あなたはどいてちょうだい。もちろん、あなたもね」


 バートを、それからメリッサを見、追い払うかのように手を振った。


「待たせたね。わたしの最愛の人よ」


 うっとりするテノールボイスに、バートとメリッサは弾かれたように振り返った。


「おまえは、この前の雇われパートナーじゃないか? ははん。婚儀まで雇われたのか? それとも、見栄っ張り女と契約結婚でもするのか?」

「バートとメリッサだったかな? まずは、礼を言わせてくれ。マミをわたしに与えてくれて、心から感謝するよ」

「あああああああ? おまえ、頭がおかしいんじゃないのか? それとも、演技か?」

「頭はおかしくないし、演技でもない。マミとわたしは、学校時代からの親友でね。ずっと片思いだった。彼女には生まれながらの婚約者がいて、この想いを伝えられなかったんだ。学校を卒業してからも、彼女のことを想い続けていた。バート、きみの噂は聞いていたからね。マミが婚約破棄するのをずっと待っていたわけだ。もっとも、きみから婚約破棄宣言をするとは思わなかったがね。というわけで、彼女を自由にしてくれたことに礼を言いたいわけだ」

「おいおいおい。おまえ、やはりフツーじゃないぞ。こんな女、どこがいいというんだ? ああ、そうか。金か? オファロン家の財産を狙っているんだな? だとすれば、納得がいく。まっ、最低な野郎だってわけだ」


 バートの聞くに堪えない悪口雑言の数々。バートが勝ち誇った笑みを浮かべるまでもなく、参列者の中から十数人が立ち上がり、前まで駆けてくるとあっという間にバートをとりおさえてしまった。


「な、なんだ? なにをする?」


 バートは、大聖堂の床にとりおさえられて激しく抵抗しはじめた。が、がっちり系の男たちにとりおさえられているからビクともしない。


「わたしは、レイランド国の王太子クリス・フェルトン。わたしの護衛騎士たちは、じつに忠実でね。不敬罪にあたるきみを即刻隣国へ連行し、然るべき処罰をくだすだろう」


 クリスは、やわらかい笑みで怖ろしい内容を告げた。


「レイランド国の王太子? こっちの方がいいじゃない。だって、大金持ちで強くてカッコいいって噂の王太子でしょう? っていうか、もうすぐ国王になるんだっけ?」


 メリッサは、瞬時にしてバートを見捨てた。


「おまえ、どういうつもりだ? っていうか、こいつらをどうにかしろ」


 バートがそんなメリッサに怒るのもムリはない。


「クズは、しょせんクズね。バート。あなた、わたしに婚約破棄されたばかりか勘当されたわよ。というか、あなたの度重なる愚行と悪行でゴールドバーグ家は爵位剥奪。ついでに破産よ。まっ、あなたには関係ないでしょうけどね。レイランド国で断頭台に立つかも、だから」


 笑いが止まりそうにない。


「ちょっ、ちょっと待て。おかしいだろう? おれは、真実の愛を貫いただけだ。こいつのことだって、おれの婚約者をかっさらったから言ってやっただけだ。ってかおまえだって、浮気していたんだろう?」

「あなた、ちゃんとクリスの話を聞いていたの? わたしは、一度だってあなたを裏切ったことはない。クリスとだって、兄や友人たちといっしょにいるときにしか会わなかった。あなたがわたしを裏切り、捨て、蔑ろにした上で婚約破棄宣言をしたから、わたしがあなたにかわって王家に婚約破棄を申し出てあげたのよ。もちろん、王家もあなたにたいして怒り心頭。あなたのことは、レイランド国に生殺与奪の権を譲るそうよ」

「というわけだ、優先順位至上主義君。まっ、あの世で後悔することだね。それから、レディ。きみにはこのスレイド王国でそれ相応の罪を償ってもらう。きみも詐欺罪や殺人未遂など、いろいろやらかしているみたいだから。ふたりを連行しろ」


 クリスの非情なまでの言に、バートもメリッサもいまや真っ蒼になっている。


「あらためる。謝罪する。だから、許してくれ」

「わたしは関係ないわよ。こいつが勝手にわたしを愛していたんだから」


 バージンロードをひきずられて連行されるふたり。その声が聞えなくなった。


「では、はじめましょうか?」


 大司祭は、やわらかい笑みとともに告げた。まるでなにもなかったかのように。


 それから、ありきたりの誓いの言葉を述べはじめた。


 そして、誓いの口づけ。


 クリスのことは、わたしも好きだった。訂正。愛していた。というか、愛している。しかし、婚約者がいたからその気持ちを心の奥底に封じていた。


 今回、彼は公務で忙しい中、わたしの危急を救いに来てくれた。兄とともに、さまざまな準備を行ってくれた。


 クリスの気持ちに嘘偽りはない。


 クリスの優先順位は、一番にわたし。そして、いまのわたしの優先順位の一番は彼。


 口づけが終わり、彼と目と目を合わせながら誓った。


 今度こそ、ほんものの愛を逃さないのだと。おたがいに優先順位をかえないのだと。


 ああ、違った。子どもができれば、変更されるかも。


 優先順位の一番は、子どもと彼。すなわち、家族だと。


 ちなみに、爵位剥奪で破産したゴールドバーグ家は、わたしの実家が援助することになっている。


 わたしがクリスに嫁いでレイランド国に行っても、バートのご両親がなんとか生活出来るように。


                                  (了)





 

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