【標本No.6】星は輝く
――座標を、感じる。
地上の重力は、あまりに醜く、あまりに重すぎる。
愛し合うほどに心は澱み、抱きしめるほどに肉体は崩壊へと向かっていく。
だから私は、君をこの泥濘から解き放つことに決めたのだ。
君の心臓を止めた私の指先は、驚くほど冷たく、そして澄んでいた。
君はもう、老いることも、病に怯えることもない。
この白銀の円筒は、棺ではない。君が永遠の旅路へと就くための、鋼の揺り籠だ。
私は清々しい顔で出勤した。
彼らが私の功績を知ることはないだろう。
窓から見える青空の先に、漆黒の海を彷徨う彼女がいる。
そこに炎を宿しながら、星のように進み続ける。
そう考えただけで、心が満たされる。
座標として存在する彼女は、いつでもどこでも目を閉じて感じることができる。
たしかに、見ることも、触れることはできない。
でも、感じることができる。
それだけでいいじゃないか。以心伝心は素晴らしいことだろう?
彼女は知るだろう。
宇宙の全てを。
その真理を。
太陽を通り過ぎ、新たな惑星に衝突し、時に崇められ、太陽系をも逸脱する。
私の命が尽きようとも、彼女は長い長い旅を続けるだろう。
そして私は、この命が尽きるまで、彼女を感じ続けるだろう。
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