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連作短編集『 十六の標本 -愛の物語- 』

【標本No.6】星は輝く

作者: 湯琉里羅
掲載日:2026/04/13


――座標を、感じる。




地上の重力は、あまりに醜く、あまりに重すぎる。


愛し合うほどに心は澱み、抱きしめるほどに肉体は崩壊へと向かっていく。


だから私は、君をこの泥濘から解き放つことに決めたのだ。


君の心臓を止めた私の指先は、驚くほど冷たく、そして澄んでいた。


君はもう、老いることも、病に怯えることもない。


この白銀の円筒は、棺ではない。君が永遠の旅路へと就くための、鋼の揺り籠だ。



私は清々しい顔で出勤した。


彼らが私の功績を知ることはないだろう。


窓から見える青空の先に、漆黒の海を彷徨う彼女がいる。


そこに炎を宿しながら、星のように進み続ける。


そう考えただけで、心が満たされる。


座標として存在する彼女は、いつでもどこでも目を閉じて感じることができる。



たしかに、見ることも、触れることはできない。


でも、感じることができる。


それだけでいいじゃないか。以心伝心は素晴らしいことだろう?



彼女は知るだろう。


宇宙の全てを。


その真理を。



太陽を通り過ぎ、新たな惑星に衝突し、時に崇められ、太陽系をも逸脱する。


私の命が尽きようとも、彼女は長い長い旅を続けるだろう。


そして私は、この命が尽きるまで、彼女を感じ続けるだろう。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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