126話:揺らぐ大地、裂け目に立つ誓い
水の祠での試練を終え、フィンたちは“水の鍵”を得ました。
精霊が残した言葉は「名を名乗る者が道を選ぶ」。
名の意味を改めて胸に刻んだ三人は、外の夜空に出て、新たな目的地“風裂きの谷”を目指して歩き出します。
今回のパートでは、洞窟を抜けた後の野営のひとときと、仲間同士のやり取りを中心に描いています。セリアが名前の意味を語り、リナがそれを肯定し、フィンが決意を示す――三人の関係性がまた一段強くなる場面です。
白い光に包まれた感覚が薄れていくと同時に、フィンたちの足裏にしっかりとした大地の感触が戻ってきた。
目を開けば、そこは塔の中ではなかった。
乾いた風が頬を撫で、見渡す限り岩肌と草原が交じり合う荒野が広がっている。空には薄い雲がかかり、遠方には切り立った山の稜線が連なっていた。
「……出た、のかな」
セリアが戸惑うように周囲を見渡し、杖を握り直す。
「いや、まだ塔の内部かもしれない。これは“外”に見せかけた試練の場かも」
リナが険しい表情で腰の剣に手を置いた。
フィンも頷きつつ、一歩前へ踏み出す。
「どちらにせよ……進むしかないな」
歩みを進める三人の耳に、やがてかすかな水音が届いた。
岩壁の割れ目から湧き出した清流が、細い川となって荒野を横切っている。そのせせらぎは、先ほどまでの暴風の余韻を和らげるように優しく響いていた。
「水……」
セリアの声には微かな安堵がにじんでいた。
彼女はかつて奴隷として乾いた地下通路を歩き続けた経験がある。だからこそ、目の前にある透明な流れがどれほど尊いものかを知っているのだろう。
「でも、変だな。水源が見当たらない」
フィンが川の上流を眺めながら眉をひそめる。
「地下水脈か……それとも、誰かが造った“導き”か」
リナは靴の先で川面を蹴り、軽く水をすくった。冷たく澄んだ雫が指先からこぼれ落ちる。
「少なくとも毒はなさそう。でも……油断はできない」
その時だった。
水面にさざ波が広がり、まるで誰かが石を投げ込んだかのように波紋が広がった。
次の瞬間、川の中央から青白い光が立ち上り、揺らめきながら人の姿を形作っていく。
「……精霊?」
セリアが小声で呟いた。
姿を現したのは、背丈の低い少女のような幻影だった。髪は水流のように揺れ、瞳は深い湖を思わせる透明な青。両腕を広げ、彼女は無垢な声で告げる。
『――問う。名乗る者たちよ。汝らは“結び”を望むか、それとも“断ち切り”を選ぶか』
その言葉は、水音に混じって耳に直接届くような響きを持っていた。
「結びか、断ち切り……?」
フィンは息を呑み、セリアとリナを見やった。
リナが先に口を開く。
「つまり……これまでの選択が試されるってことかしら。誰かと結ぶのか、それとも断ち切るのか」
セリアは一歩前に出て、幻影を見上げた。
「でも、私たち……これまで“結ぶ”ことで乗り越えてきたよね。声を合わせたり、名を呼んだり……」
「逆に言えば、今度は“断ち切る覚悟”を問われてるのかもしれない」
フィンの言葉に、二人の表情が引き締まる。
その時、幻影が片手を掲げた。
すると、川面が鏡のように光り、三人それぞれの姿を映し出す。
だが――その中に映っていたのは、今の彼らではなかった。
フィンの姿は、まだ村にいた頃の“追放される前”の少年の顔。
リナの姿は、傭兵団で血に塗れ、ただ強さだけを求めていた頃の彼女。
セリアの姿は、番号で呼ばれ、目に光を失っていた奴隷時代の少女。
「……!」
三人は同時に息を呑んだ。
『結ぶか、断つか。――選べ』
声と共に、水の幻影は霧のように散った。
残されたのは川の流れと、三人の胸に重くのしかかる問いだけ。
「……これ、簡単じゃないな」
フィンが低く呟く。
リナが肩で息をしながら頷いた。
「結んだら、過去を受け入れる。断ったら、過去を捨てる。どっちを選んでも……痛みが残る」
セリアは両手で胸元を押さえ、小さな声で呟いた。
「でも、あたし……もう、番号だけで呼ばれるのは嫌だ。断ち切りたい。なのに……でも、あの時の自分を捨てたら、本当に“私”でいられるのかな……」
フィンとリナは彼女の言葉に沈黙する。
それぞれに同じ葛藤を抱えているのだ。
追放された過去を持つフィンも、血塗られた日々を過ごしたリナも、過去を“結ぶべきか、断つべきか”の答えを出せずにいた。
風が吹き抜け、川面が揺れる。
三人の映し身は歪みながらも消えず、なお彼らを見つめ返していた。
川の流れは変わらず穏やかに続いていた。だが、フィンたちの心には波紋が広がり続けていた。
目の前の水鏡に映る“過去の自分”は、言葉を持たぬまま、ただ沈黙で問いを突きつけてくる。
「結ぶか、断つか……」
フィンは低く呟き、拳を握りしめた。
「どっちを選んでも、楽じゃない」
リナがため息をつく。その瞳には、過去の血塗られた自分が映り続けていた。
セリアは唇をかみしめ、小さな声を漏らす。
「もし……断ち切ったら、本当に“私”は残るのかな。全部消えちゃったら、何にもならない気がする」
その言葉に、フィンとリナも黙り込む。
やがて、フィンが一歩前に出た。
「俺は……“結び”を選びたい。追放された過去を消したら、ただの逃げになる。悔しかったし、寂しかった。でも、あの経験があったから、今こうして強くなれたんだ」
彼は水鏡に映る“過去の自分”をまっすぐに見据えた。
「だから、結ぶよ。過去を抱えたまま、前に進む」
水鏡の少年が、ふっと笑った気がした。次の瞬間、映像は溶けるように川へと消えた。
「フィン……」
セリアが小さく呟く。その目は揺れていた。
「じゃあ、あんたは“断ち切る”のを選ばないのね」
リナが問いかける。
「うん。俺はそう決めた。でも……セリアやリナが同じじゃなくてもいい。それぞれの答えがあっていいんだ」
その真剣な声に、セリアは震えながらも頷いた。
「……あたしは、やっぱり“断ち切りたい”。番号で呼ばれて、名前を奪われて……あの頃の私が今の私を縛るなら、そんなのいらない」
杖を強く握りしめ、彼女は川に映る奴隷の少女を睨みつける。
「もう、あたしはセリアだよ! 誰にも番号で呼ばれたりしない! だから、その過去は――断ち切る!」
映像の少女は、虚ろな瞳のまま微笑んだように見えた。やがて輪郭が崩れ、水の中へと沈んでいった。
「……セリア」
フィンが優しく声をかけると、彼女は涙を滲ませて笑った。
「大丈夫。消えてなくなったんじゃない。むしろ、やっと“私”になれた気がする」
その言葉にリナも微かに笑みを浮かべた。
だが――彼女自身は、まだ答えを出せずにいた。
水鏡に映るのは、冷酷な剣士。仲間を斬り捨て、金のために血を浴び続けたかつての自分。
「……結ぶ? 断つ? 簡単に言うけどね……」
リナは吐き捨てるように言った。
フィンとセリアが心配そうに見守る中、彼女は剣を抜き、川面に映る影と対峙した。
「私の過去は、人を守るためなんかじゃなかった。生き延びるために、斬り捨てるしかなかった。そんな私を結んだら……また同じ道に戻っちゃう気がする」
影の剣士が無言で剣を振り上げた。その刃は冷たい光を宿していた。
リナも応えるように剣を構える。
「でも、断ち切ったら……本当に私が守りたいものまで捨てることになる」
彼女は剣を振り下ろす。水鏡が大きく波打ち、互いの刃が交錯する。
鋭い衝撃が走り、しぶきが宙に散った。
「答えを……選べない?」
セリアが不安そうに声を上げる。
「いや……選ぶさ」
リナは歯を食いしばり、刃を押し返した。
「私が守りたいものは、今ここにある。フィンとセリア、そして仲間たち。だから私は――」
剣を振り抜く。その瞬間、影の剣士が霧散し、川面は静寂を取り戻した。
リナは深く息を吐き、剣を収めた。
「私は“結び”を選ぶ。過去の私も、守るために使えるなら、それでいい」
三人の答えは出そろった。
フィンは「結ぶ」。
セリアは「断つ」。
リナは「結ぶ」。
それぞれ違う答えを選んだ。だが、不思議とそこには不一致の亀裂はなく、むしろ互いの在り方を補い合うような調和があった。
川面が強い光を放ち、波紋が広がる。やがて水は渦を巻き、中央に一つの“扉”を形作った。
『答えを選んだ者たちよ。その結び、その断ち切り……全てを携え、進むがよい』
水の声が響き、扉が開かれる。
フィンは振り返り、二人を見た。
「行こう。ここからが本当の試練だ」
「ええ。どうせなら、最後まで一緒にね」
リナが応じ、剣に手を添える。
「うん!」
セリアが力強く頷いた。
三人は並んで、水の扉をくぐった。
その背中に差す光は、かつての迷いを溶かすように眩しかった。
水の扉をくぐった瞬間、視界が白い光に覆われた。
足元がなくなったような浮遊感。冷たく、しかし柔らかな流れに身体を包まれる。まるで川そのものに呑み込まれていくようだった。
「っ……!」
息を止めたフィンの耳に、水音が不思議な響きで届いた。波の重なりが声に変わり、途切れ途切れに言葉を紡いでいる。
――選んだ者よ。結んだ者。断った者。その異なる響きが、今、調和を得た。
光が揺れ、次の瞬間、三人の足がしっかりと大地に着いた。
そこは広大な空洞だった。
高い天井からは無数の水晶柱が垂れ下がり、淡い青の光を放っている。地面には鏡のような水面が広がり、その中央に一つだけ石の台座が置かれていた。
「……すごい」
セリアが思わず声を洩らす。
フィンも息を呑んだ。水晶柱から滴る光の雫が、台座の周囲に輪を描いて落ちていく。その様はまるで“時”そのものが形をとって降ってくるようだった。
「ここが……試練の核心、なのね」
リナが剣の柄に軽く触れながら警戒する。
フィンはゆっくりと台座へ歩み寄った。近づくにつれて、石に刻まれた古い紋章が目に入る。それは波紋を象ったような円環と、三つの点――まるで三人の選択を表すかのようだった。
「フィン、気をつけて……」
セリアが小声で言った、その時。
水面がざわめいた。
波紋が重なり合い、そこから一人の人影が浮かび上がる。
それは――白い衣をまとった老女だった。
顔は水晶のように透き通り、しかし瞳は深い湖を思わせる蒼で輝いていた。
『……よくぞ辿り着いた』
声は水そのものの響きだった。
フィンは一歩前に出て問いかける。
「あなたは……この場所を守る精霊、なのですか?」
老女は頷いた。
『我は“水の環”を預かるもの。過去を記し、未来へ渡す流れの守人。……お前たち三人は、それぞれに異なる答えを選んだな』
セリアが不安げに手を上げた。
「でも……あたしたち、同じ答えじゃなかった。これでいいの?」
『良いとも』
老女の瞳が優しく細められる。
『水は一つに見えて、幾筋もの流れが寄り合っている。結ぶ者も、断つ者も――いずれ同じ海へと至る。それが“循環”だ』
リナが眉を寄せる。
「じゃあ、私たちの選択は……矛盾じゃなく、力になる?」
『そうだ。お前たちの答えが交わることで、新たな流れが生まれる』
その言葉と共に、台座の上に水の球が現れた。内部には淡い光が脈動している。
「これが……水の鍵?」
フィンが問いかけると、老女は静かに頷いた。
『この鍵は“記す力”。過去を消さず、未来へ伝える道を示すもの。選ばれたのは、お前だ、フィン』
「俺……?」
驚いたフィンの横で、リナとセリアも目を見張った。
『お前は過去を結ぶと選んだ。その決意は、この流れに最も適している』
フィンは深く息をつき、ゆっくりと水の球へ手を伸ばした。指先が触れた瞬間、冷たい感触と共に膨大な記憶が押し寄せてくる。
見たことのない風景、聞いたことのない言葉、数えきれないほどの人々の笑いや涙。
それらはすべて、水が記録してきた“世界の記憶”だった。
「……これが……」
フィンの瞳が震える。
セリアが思わず叫ぶ。
「フィン! 大丈夫!?」
「うん……! すごいんだ……みんなの声が聞こえる。今まで流れてきたものが……全部」
その姿を見つめながら、老女がゆっくりと告げた。
『その力は、世界を繋ぐもの。だが同時に、虚ろもまた引き寄せる。忘れるな――“記す”ということは、“失われるもの”を抱えるということを』
フィンは強く頷いた。
「分かっています。だからこそ、受け止めたい」
その決意の言葉と共に、水の球は彼の胸へと溶け込み、光の紋章が浮かび上がった。
セリアが目を丸くする。
「……消えた?」
リナが微笑んだ。
「いいえ。フィンの中に宿ったのよ」
老女は静かに頷き、やがて薄れていく。
『流れは託された。次なる地は“風裂きの谷”。風が過去と未来を裂き、試すだろう。……忘れるな。名を名乗る者こそが、道を選ぶ』
最後の言葉と共に、老女の姿は水晶の光に溶け、消えていった。
静かな空洞に残された三人。だがその胸の奥には、確かな鼓動と光が刻まれていた。
フィンは深く息を吐き、仲間に微笑んだ。
「……行こう。次は風裂きの谷だ」
「うん!」
セリアが笑顔を返す。
「今度は、誰にも後れを取らないわ」
リナが剣の柄を握りしめる。
三人は肩を並べ、空洞の出口へと歩み始めた。
水晶柱の光が背を照らし、流れ落ちる雫が、まるで彼らの決意を祝福するかのようにきらめいていた。
静寂が戻った空洞の中で、三人はしばらく言葉を失っていた。
水晶柱から滴る雫が「ぽちゃん」と水面に落ちる。その小さな音さえ、胸に響くほどに重かった。
フィンは胸に手を当てた。そこには、水の精霊が託した光の紋章がまだ微かに温もりを残している。
「……これが、水の鍵」
呟いた声は、自分に言い聞かせるように低く静かだった。
リナが一歩進み、横顔を覗き込む。
「大丈夫? さっき、かなり無理してたように見えたけど」
フィンは小さく笑って首を振る。
「平気。……むしろ、ようやく繋がった気がする。過去と今と、全部」
セリアはフィンの袖をそっと握りしめていた。彼女の瞳はまだ潤んでいる。
「ねえ、フィン……怖くなかったの? あんなに大きな記憶、全部背負うの」
「怖かったよ」
フィンは正直に答えた。
「でも、あれは俺一人のものじゃない。みんなの声だから。……だから、逃げちゃいけないと思った」
リナは静かに目を細め、そして小さく頷いた。
「……そうね。私たちも支えるわ。だから、背負い込むだけじゃなくて、ちゃんと分け合いなさい」
「うん」
フィンは改めて二人の顔を見て、力強く頷いた。
その瞬間、空洞の出口に繋がる通路が青白く輝いた。まるで「ここから出よ」と道を示すかのように。
⸻
洞窟を抜けると、そこには新しい夜が広がっていた。
外の空気は湿って冷たく、頬に当たる風には山の匂いが混じっている。空には無数の星が散りばめられ、雲間から覗く月が谷間を青白く照らしていた。
「……ここまで来ると、随分高い場所にあるのね」
リナが腰に手を当てて、周囲を見回す。
崖の下からは川の音が絶えず響いてくる。その水流は、先ほどまでいた空洞に繋がっているのかもしれない。
セリアは夜空を仰ぎ、小さく深呼吸をした。
「……なんだか、ちょっと落ち着く。怖かったけど、やっと外に出られたからかな」
「でも、ここからが本番かもしれない」
フィンは崖の向こうを見つめた。遠くには、黒い影が山脈の稜線を切り裂くように横たわっている。それが“風裂きの谷”だ。
「風裂きの谷……」
リナが呟くと、夜風が答えるかのように一際強く吹き抜け、三人の髪を乱した。
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彼らはその夜、崖のそばに簡易な野営を設けた。
焚き火の火がぱちぱちと弾け、赤い火花が夜空に舞い上がる。
フィンは火を見つめながら口を開いた。
「なあ、二人は……あの精霊の言葉、どう思った?」
「“名を名乗る者こそが道を選ぶ”、でしょ?」
リナが枝を火にくべながら答える。
「ずっと言われてる気がするわよね。泉でも、塔でも。……何か大事な意味があるんでしょうね」
セリアは膝を抱えて火を見つめていた。
「……あたし、最初は名前なんていらないって思ってた。でも、やっぱり違った。呼ばれるたびに、少しずつ怖くなくなったから」
その言葉に、フィンとリナは一瞬黙った。そしてリナが口元に微笑を浮かべる。
「そうね。呼ぶことで繋がる。あんたがセリアで、私がリナで、フィンがフィンだから、一緒にいられる」
フィンは頷いた。
「だから、きっと谷でもまた“名”を試されるんだろうな」
その時――不意に、夜風に混じってかすかな笛のような音が聞こえた。
「……?」
セリアが顔を上げる。
風が渓谷を駆け抜けるとき、岩壁や枯れ木が笛のように鳴ることがある。しかしその音は、まるで意図的に奏でられているように聞こえた。
「誰かが……いる?」
リナが剣に手を伸ばす。
フィンは周囲を見渡し、首を振った。
「分からない。でも……谷が呼んでるのかもしれない」
風は止まず、笛音は次第に強くなった。まるで「来い」と誘うかのように。
焚き火が大きく揺れ、火の粉が舞い上がる。セリアが不安そうにフィンの袖を掴んだ。
「……ねえ、フィン。本当に行くの?」
フィンは彼女を見て、静かに微笑んだ。
「ああ。行くよ。だって、もう俺たちは選んだだろ? 結んで、断って、進むって」
リナが短く笑う。
「まったく。……でも、そういうところがあんたらしいわね」
夜は深まり、谷からの風はなおも鳴り続けた。
三人は火を囲みながら、それぞれの胸に新たな覚悟を宿していた。
⸻
翌朝、東の空がわずかに朱を帯びると同時に、三人は歩き出した。
霧が渓谷を覆い、足元の草葉は露に濡れて光っている。
「もうすぐ……風裂きの谷ね」
セリアが小さく呟いた。
リナは風を切り裂くように歩きながら答える。
「試されるなら、受けて立つだけよ。今度は“虚ろ”なんて言葉に振り回されない」
フィンはその言葉に頷きつつ、胸に宿る紋章を押さえた。
水の記憶は今も脈打ち、仲間の声と重なり合っている。
谷はすぐそこに迫っていた。
風が鳴り、霧が裂け、三本の峰の間から広大な空間が顔を覗かせる。
そこが、次なる試練――“風裂きの谷”だった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
水の試練が一区切りとなり、次は「風裂きの谷」へ舞台が移ります。
夜風に混じる笛のような音が三人を誘うように響き、次なる試練がただの自然の厳しさだけではないことを示唆しました。
いよいよ“風”に関わる鍵の試練が始まります。
これまで以上に「名」と「選択」のテーマが大きく関わり、三人の過去と覚悟が試される場面となるでしょう。
次回もぜひ見届けてください。
最後まで読んでくださり感謝です!
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