園子
「間違っているのはお前だ!それを知らずに人を完全に否定して…。バカな奴だ。」
園子はそうして真っ黒になった瞳を横にやった。
「なんて、言ってみたいな。」
パチパチと火花を散らせていた花火が、一気にしゅんとしたようだ。
心配になって彼女の顔を覗きこむと、ガラスの瞳に引っ掻き傷で白く濁っているのがハッキリと見えた。
私は突然、彼女の輪郭を認識した。
これが彼女の本性である。
ある時は、孔雀のように鮮やかで、真っ直ぐな光を放ち、またある時は、真っ黒で何の光も通さない。
敢えてしていると言える程、彼女は多面的な人間であるように思っていた。
しかし、本質は同じである。
彼女はわざわざ眼鏡を、衣替えのように変えていた訳ではない。彼女の放つ煌びやかな光が、その傷を見えなくしていたのだ。夜になって月の灯りが、顕微鏡の如くガラスの傷を明瞭にするのである。
私は自分の勘違いに恥じた。
彼女の世界を軽蔑するような目つきは、決して彼女のせいではなかった。
親に何度も否定され、その度に園子は重めかしい憎悪の岩を必死で払い除けていたのだ。
そうして付いた傷は治る事なく、見て見ぬフリをするしか無くなる。
私が間違っていた。
そのガラス瞳ではきっと「美しい世界」は酷く霞んで見えるのだろうな。
そうやって同情してもらいたいな。