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白と黒の聖女  作者: 武尾 さぬき
第9章 ふたりの決断
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第61話 使命

「ロコちゃんの決意は揺るがないんだね?」




 私は目の前の街並みに見つめながら、隣りの彼女に問い掛けた。今、目に映っている街のほとんどの人が聖ソフィア教団を信じ、聖女パーラ様を慕っているんだ。




「うん、足りない頭でワタシなりにいっぱい悩んで考えたんだ。けどさ、やっぱり今のまんまはおかしいと思う」




「そうね……。私だってそう思うわ」




 ロコちゃんは街の光の反射を受けて神々しいほど輝いて見えた。私、ホントにこの子とそっくりなの? と疑いたくなるほど聖女パーラ様の姿は美しかった。この街の人にとって彼女はいつだってこうして光り輝いているんだろうな。




「きっとすんごく大変なことになると思う。この国から出て行かないといけないかなあ? むずかしいことわかんないし、無責任とも思うけどさ……。あれこれ考えてなにもしないのはワタシ、嫌なんだ」




「私たちがうまくやったら、その後は助けてくれる人たちがいるの。ちゃんと全部話した上で協力してくれるって言ってるから安心して?」




「ははっ! ワタシそんなに心配はしてないよ?」




 明るい笑顔をこちらに向けてロコちゃんはそう言った。心配は……、してないんだ?




「ワタシだけだったら絶対無理だけどさ、ノワちゃんが一緒なら――、ふたりだったらなんだってやれる気がするし全然怖くないよ?」




「ロコちゃんは私を過大評価してるわよ? そんなに頼られたらそれこそ責任感じちゃうわ?」




「ノワちゃんのことはワタシ、この世で一番信頼してるよ!? それにノワちゃんと一緒なら最悪、失敗してもいいかなっとも思ってるし」




 私となら失敗してもいい? ちょっと意外な感じがした。




「なんてーかさ、ノワちゃんとなら絶対うまくやれると思ってるよ! だけど、ダメになってもノワちゃんとならワタシは納得できると思うんだ。他人に対してこんなふうに思ったのノワちゃんが初めてだよ?」




 この人とならダメでも納得できる、か……。ロコちゃんてすごいな。人に対してそんなふうに考えたことないかもしれない。だけど、それはとてもとても素敵なことだ。




「ありがとう、ロコちゃん。私もロコちゃんとだったら絶対うまくいくと思ってる! 失敗なんてさせないわ!」




「うん、どっか別んとこに行くことなってもワタシとノワちゃんはずっと一緒だからね?」




 彼女は左手の小指を差し向けてきた。そういえば、初めて会った時に友達になる約束をしたっけ……。


 その指に私の左手の小指を絡める。お互いにきゅっと力を入れた。お互いに絡み合った指を見つめた後に、街の光景を見下ろした。




「この街の――、いいえ、この国の人たちを女神ソフィア様はずっと救ってきたんだよね?」




 私の問い掛けにロコちゃんは無言で頷く。





「うん、そうだよ。だから……、ソフィア様を救ってあげるのがワタシたちの使命なんだ」

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