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第5話 追走

 なにやら露店の並びで騒ぎが起こっていた。




 ワタシは白いスヌードを頭巾のように頭から巻いて人込みの中からこっそりと様子を覗いてみた。




『あっちゃー……、あれ絶対ワタシを追って来たやつらじゃんね?』





「お店の人ごめんなさいっ! けど、私はノワラなんです!」





 大の男をぶん投げたように見えた女の子は、そう叫んで走り去っていった。その後ろを教団の親衛隊2人が……、やや遅れて投げ飛ばされた1人も追っていった。




『なーんかよくわかんないけど、あの子ひょっとしてワタシと間違われてる系?』




 ワタシは少し前に買ったばかりの串焼き肉を口に押し込んで、彼らの後をこっそりと付けていった。




 以前に脱走した際、買っておいた麻の服とズボンに身を包んだ姿、どこからどう見ても庶民のワタシ。――というか、「聖女様」なんかに選ばれなかったら本当にただの庶民のはずだったんですけどね。





 適度に距離を保ちつつ彼らの背中を追っていくと、街の路地裏へと入っていった。




 角をいくつか曲がったところで立ち止まる。どうやら逃げていた女の子は行き止まりに来てしまったようだ。


 物陰から様子を覗いて見ると、親衛隊の男が1人彼女に歩み寄っていく。




『ああ……、なんかごめん。お願いだから手荒なことはしないであげてね』




 心の中でそんなことを願っていたら、すぐ近くで大きな()()が落ちてきた音がした。




 ――はっ? こいつ、私の護衛でよく見かける男よね?




 なんでこんなところで寝てんの? ――っていうか、いつの間にここに?





「何度も言わせないでっ! 私の名前は『ノワラ』よ!」





 行き止まりの方から大きな声が聞こえてきた。




『ノワラちゃん、っていうのか、あの子……、こっからじゃ親衛隊が邪魔で顔がよく見えないじゃないのよ?』




 次の瞬間、ワタシは目を見開いた。きっと傍から見たらすっごいまぬけ面をしていたと思う。




 「ノワラ」と名乗った女の子は、急に視界から消えたかと思うと隣りの民家の屋根の上に立っていた。




『ちょっ…!? なにあの子、化け物じゃん! 超おもしろいんだけど!』




 「ノワラちゃん」はワタシの好奇心に火を点けていた。

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