第38話 再会
賞金の金貨3枚をもらった私は、ほくほくになってお買い物を楽しんでいた。
腕相撲大会の主催者さんとゴリラさんは悪いことでもしてたかのように、そそくさと退散していった。
集まっていた人たちから、嬉しいのとそうでない両方の賛辞を浴びながら私は、内側にくすぶっていたものが減って心が軽くなっているのを感じていた。
心なしか、大会中の私は、まるでロコちゃんが乗り移ったような思考をしていたような気がする。一緒にいるとどんどん似てきてしまうかも?
バザールのお店で簡単な昼食をとって、食品を少し買い込んだ後、私は帰り道の眺めを楽しみながらゆっくりと歩いていた。
――そういえば、初めてロコちゃんと会ったのはこの辺だったわね?
「ノワラ・クロン」と「聖女パーラ」、2つの顔を使い分けての生活は、あの日の出会いから始まったんだ。怖い思いもしたけど、彼女と出会ってからの生活はとても楽しい。
――むずかしいことは考えないようにしよう。
連れ去られた一件以降は、ご公務の際の警備がとても厳しくなっている。こうして身代わりの私でもきちんと守ってくれているんだ。裏でなにかしてるとかは知らないけど、少なくとも聖ソフィア教団は今の私の味方だ。
夕日を眺めながら、のんびり歩いていると思ったより帰宅が遅くなってしまった。家で待ってる人はいないから関係ないけど……。
石造りの白い壁をした1階建ての、なんの変哲もない自宅の鍵を開け、私は家の中に入った。
そのとき……。
背中を強く突き飛ばされた。
バランスを崩して、玄関に倒れ込んだ。買ってきた食材の袋を落として、トマトが何個か床に転がってしまった。
開いたままの扉から誰かが家に入ってきて、それはゆっくりと閉じられた。
どうする? 大声をだす? それとも戦う? 今度はもう臆さない!
――両方だ!
大きく息を吸うと同時に、右手の拳に力を込める。
腕相撲大会優勝のこの右手を舐めないでよね!
「申し訳ありません! ですが、どうか落ち着いて下さい!」
耳に飛び込んできたのは、知っている声だった。この声は……、たしか。
「……ガーネットさん!?」




