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白と黒の聖女  作者: 武尾 さぬき
第6章 疑惑
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第34話 大会

 聖女パーラ様が連れ去られた事件は、人々に周知の事実となっていた。一度はかん口令も敷かれたようだが、現場の目撃者があまりに多く、意味をなさないと判断されたようだ。




 聖女様は1日で無事に救出された。主犯の男は治安維持隊によって捕まり、自ら命を絶った。こうした結果も合わせて情報は人伝に広がっていったようだ。そこに「捕まった聖女様は身代わりだった」という情報は存在しない。





 聖女のご公務は警備こそ厳しくなっていたが、以前と同じように行われ、その半分は私が入れ替わっていた。




 ボルツ率いる反・聖ソフィア教団は、ずっと前から教団の治安維持隊が追っている組織だったそうだ。今回の事件は結果だけ見ると、聖女様は無傷――、というより、本物は関わってすらおらず、危険視されていた組織のリーダーを消し去ることができたわけだ。




 巻き込まれた私からすれば、とても「よかった」の一言では済ませられないけど、教団としてはとても()()()()のだと思う。





 今日のご公務は、ロコちゃん本人の日。私は午前中に荷下ろしのお手伝いを終えた後に、バザールまでお買い物に出かけていた。


 聖女様の影武者を務めるようになってから私は、ヘアバンドで髪をまとめ、丸っこい淵の眼鏡をして外を歩いていた。




 街にいるときは、ロコちゃんと出会う前となにも変わっていない。外の陽射しを体いっぱいに浴びて、鼻歌を歌いながら屋台の並ぶ道を歩く。時には、お肉の串焼きだったり、冷えたフルーツを買って食べたりもする。




 まずはバザールを一通り歩き回って楽しんだ後、最後に必要なものをまとめて買って帰るのがいつもの決まりだ。





 軽い足取りで歩いていると、広場の辺りに人だかりができているのに気が付いた。路上で楽器を奏でる人や見世物をする人がよくいるところだ。今日もなにかやっているのかな?




 人込みをかき分けて先頭に顔を出してみると、大きな酒樽がいくつかあって、そこに体の大きい男の人が並んで立っていた。





「はいはい! あと1人! どなたかいませんか!? 力自慢の方はまたとないチャンスですよ!?」





 黒いスーツに赤の蝶ネクタイをした男が大きな声で叫んでいた。手にもってる看板になにか書いてある。




 なになに……?





【力自慢求む! 腕相撲大会】





「あと1人で締め切りですよ! 我こそはという方おりませんか!!」




「あと1人で……! おっと! 手が上がりましたね!? そこの――、おや?」




 蝶ネクタイの男は、私を指差して顔を見た後に首を捻っていた。私の周りにいる人たちもびっくりした表情をしている。




 それに反して私は、内側から溢れる自信に顔が緩みそうになるのを必死に堪えていた。

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