8 ヒロイン登場
文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
視察の内容は、点在している村にたちよっては村人たちから現状や問題ごとがないか聞き、トラブルがあればそれを解決し、そして最後に周辺の大地の気を整える。
そんなことの繰り返しだった。当然ほとんどアメリのサポートは必要としなかったが、時々息抜きと称してシメオンは膝枕を要求した。
「君といると落ち着く……」
そう呟くと、よほど疲れているのかシメオンはすぐに眠りにつくのだった。
そうして過ごすうちに、ついにゲーム内でシメオンがリディと出会うバッカーイの町に到着した。
いつもとまったく変わりない行程を経て、翌朝の出発時間まで特に何事もなく過ぎ、出発前にシメオンは大地の気の流れを整えた。
もしかして、このまま何事もなく終わるかもしれない。
そう思っていた時、シメオンが森の方を少し散歩しないかと誘ってきた。アメリは嫌な予感がしながらも、誘われるまま手を引かれ森へ向かった。
森の中へ入るとシメオンは少し躊躇いがちに立ち止まると、アメリに向き直った。
「アメリ、次のワカナイに行く前に君に話しておきたいことがある」
アメリは身構えた。
もしかして、気づかなかっただけでシメオンとリディは接触していたのかも知れない。そう思いながら、シメオンが話すのを黙って待った。
「実は話すか迷っていたのだが……」
そこで言葉を切り、シメオンはアメリの背後を見つめた。
「シメオン様? どうされたんですか?」
そう言ってアメリが振り向こうとした瞬間、シメオンは叫ぶ。
「アメリ、振り向くな!」
そう言ってアメリを抱きかかえて、地面に伏せる。アメリは何がなんだかわからなかったが、シュッという音と続けてタンッ!! と何かが木に当たったような乾いた音がした。
慌てて、音のした方向を見ると木に矢が刺さっていた。
驚き、はっとする。
「シメオン様! ご無事ですか?」
シメオンは腕に浅い傷を負っているだけで、特に深い傷は見受けられなかった。だが、額にうっすら汗を浮かべており苦悶の表情を浮かべていた。
そうして怪我の確認をしている間にも、みるみるうちに顔が真っ青になっていく。
きっと毒矢だわ!
アメリはシメオンを仰向けに寝かせると、迷うことなく治療魔法を使った。シメオンの前で跪くと、祈るように顔の前で手を組む。
そして、念じるとアメリの体から大量の光の粒が解き放たれ、そしてシメオンの矢で傷を負った場所から流れ込んだ。
すると、パン!! と言う音ともにシメオンの体から光の粒が飛び散って消えた。
「アメリ?」
シメオンがうっすらと目を開いたその瞬間、アメリは激しく真横から突き飛ばされた。
突然のことでまるで受け身を取れず、アメリは地面に強く額を打ち付けてしまった。何があったのかわからず、打ちつけた場所をそっと触りその手を見ると手に血が付いていた。
もしかして先ほどこちらを狙った者かもしれないと思い、振り返ってシメオンを見るとそこにはリディがいた。
そして、リディはシメオンの手を取り話しかけている。
もしかして、私を突き飛ばしたのってリディ?
そう思いながら、二人に気づかれないように治療魔法で自分を治療する。そして、スカートについた土を払っていると、リディが振り返りアメリに言った。
「ちょっと、そこの。何してるの? ボケッとしてないで早く誰か呼んできなさいよ、役立たずね」
そう言うリディの後ろでシメオンが何か言いたげに口を動かす。
それに気づいたリディがシメオンに向き直り声をかける。
「大丈夫ですか? 今私が治癒魔法で治療をしましたわ。でも、しばらくはじっとなさってくださいませ」
アメリは二人を見つめ一瞬呆然としたが、我に返ると急いでフィリップのところまで走ると、森での出来事を話した。
それを聞いたフィリップは、何人かの領民を連れて慌てて森の中へ入っていった。
アメリは今あったことにショックを受け、森に戻る気にはなれず馬車の中でフィリップたちが戻ってくるのを待った。
数十分たち、シメオンがフィリップに肩を貸りて戻って来た。その横にはリディもいる。
馬車の前で何か揉めているようだったが、しばらくしてシメオンたちは馬車に戻らず向きを変え向こうへ歩き始めた。
そして、馬車の御者が戻ってくるとアメリに言った。
「シメオン様は体力を回復するために、森で会ったあの令嬢の屋敷で少し休まれるそうだ。私たちは昨日世話になった屋敷で待機だと」
アメリは仲睦まじくしている二人をそばで見るよりは、他の屋敷で過ごした方がましだと思った。
こんなこと、覚悟していたはずなのに。
そう思いながら馬車を降りると屋敷へ戻った。
アメリは特になにもすることがなく、かといって一人で部屋にとじ込もっていてはシメオンとリディのことをどうしても考えてしまうため、屋敷にいる婦人たちに混ざり、くたくたになるまで食事や洗濯の手伝いをした。
そうしてアメリにとってのつらい一夜が明けると、不意に今日から自分の仕事がなくなるのではないかという不安に駆られた。
だが、そうなればここで惨めな思いをしなくてすむので、それはそれでありがたいかもしれない。
そんなことを思いながら食堂で朝食の片付けを手伝っていると、部屋の入り口の辺りが騒がしくなった。
何事かとそちらの方を見ると、そこに立っているシメオンと目が合った。
「アメリ、無事でよかった!」
シメオンはそう言って、嬉しそうに微笑んだ。
アメリはいよいよ自分がお役御免になる時が来たと思い構えたが、シメオンは予想に反してアメリに駆け寄り抱きしめた。
そこにいた者たちが、一斉にアメリとシメオンを驚いて見つめていた。アメリは恥ずかしくなり、体を離そうとするがシメオンにさらに強く抱きしめられるだけだった。
「シメオン様? あの、どうしたというのですか?」
シメオンはアメリの質問には答えず、少しだけ体を離すと、アメリの顔を見つめる。
「アメリ、怪我はどうした? 大丈夫だったのか?」
「もちろん大丈夫です。シメオン様に守っていただきましたので」
すると、シメオンは軽く額に触れた。
「君は昨日、ここを怪我していたね」
いつ見られたのだろう?
そう思いながら、魔法を使ったことがばれてしまっては困るので慌てて誤魔化した。
「シメオン様、なにを仰っているのですか? 怪我をしたのはシメオン様の方ではありませんか。私はなんともありませんよ?」
すると、シメオンは何かを思い出したように怒りに満ちた顔で壁を睨むと、アメリに視線を戻して心底ほっとしたような顔をした後、もう一度強くアメリを抱きしめた。
「怪我をさせてしまったが、君が無事でよかった。本当によかった」
そう呟くと、その後もずっとアメリを離さなかった。アメリはそんなシメオンを落ち着かせるために、優しく背中を撫で続けた。
毒矢を受けて、もしかしたらシメオン様も混乱なさっているのかもしれない。
そう考えた。
その後、シメオンの命令ですぐにバッカーイを立つことになり、アメリはシメオンに抱きかかえられて馬車へ乗り込んだ。
誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。
私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。