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夜空浮かぶは絶えず消えずの導き手

作者: 堆烏

世界が回る。

視界が回る。

ぐるぐる。ぐるぐる。


ただただ、回れ。回れ右。

結局元の位置どおり。


要は袋小路。

迷ったあげくに動けない。

迷走というやつは、結局同じところを走り回ってるに過ぎない。

何をすればいいのか、どうすればいいのか。何故そうすべきなのかも分からない。


「何も考えなくていいんじゃない?」


誰かの声がする。白い息と広い域。

ぐるぐる。ぐるぐる。

頭の中がかきまわる。


迷ったところで結果は同じ。

いくら回ろうとたどり着くのは現在地。


ならば止まろう。留まろう。

思考なんてもんも止めてやろう。

時間は有限で揺蕩って。

針は静かに地に落ちる。

凍って泊まってここにいる。


「何か、考えてもいいんじゃない?」


また、誰かの声がする。

止まれの次はすすめの合図。

南?西?それとも東?

進んだところで意味がない。

思考すらも進むことなどないというのに。


哀しいことに、悲しいことに、その声はきっと自分の声。

鏡に囲まれたこの部屋で、声は常に自分に届く。

どんなに走ってもどんなに叫んでも、私の声は私には届かない。

鏡の私が嗤う。


「諦めてもいいんじゃない?」

「止まってしまっていいんじゃない?」

「ぐるぐる回って踊りましょ?」


嗤う。宣う。罵り合う。

誰かが泣いて、誰かが嗤って、誰かがただただ無言で見下ろす。

そんな私の、大集団。そんな私が、大団円。

客観的に見れるとしたら、ただのホラーの映画だろう。

寒さを耐えるためのおしくらまんじゅう


現実的に見たら、一人狂ってるただの人。常習化して目も当てられぬ。

寂しい寂れた侘しい人の、慣れの果て。


都会は疲れ、疲労と孤独で大渋滞。

田舎は寂れ、摩耗と不便で大殺界。


どこに行けばいいのだろう。

どこかにでも行けばいいのだろう。


私は周る。ただ、ただ周る。

誰も気づかず、知られない。鄙びた田舎の町娘。


「哀れに露わに踊りましょ?」


誰かの声が、私の声が、

私にだけに、降り注ぐ。


今宵は満月。踊りましょ。

ここから見えるかは知らないけれど。

空気はとても透明で。

世界は静かに病んでいく。


表面はやがて我。

氷面もやがて割る。


世界が回る。

死海が回る。

ぐるぐる。ぐるぐる。


ただただ、私だけが回らない。

私だけがいる世界。

我て割れてのあえてを終えて。


せめての終えての詠み人を

ここらで一つ投げ入れよう。


私を見上げて呼んでみて。

いつでも私はここにいる。



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