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世界一高いダンジョン

 キュウたちは、作戦会議をしていた。


「勇者を倒すには、秘宝が必要だと思う」


 ウィルバートはそう言った。


「それってどんなんなんや? ウィルバートはんは知ってるん?」


 キュウはウィルバートに質問をした。ウィルバートの口角が上がる。


「ああ。知っているとも。秘宝とは、高難易度のダンジョンにのみ存在すると言われている、大きな力を持ったマジックアイテムのことだ。俺様が知っているのは、世界一高いダンジョンだと有名な『バベルの塔』のお宝部屋にのみ存在するという、『願いの杖』と呼ばれるものだ。これは、持ち主が願えばなんでも叶えることができると言われる代物で、過去には一国の王になった者もいるらしい」


 ウィルバートは少し得意げだった。その様子はまるで、子供が好きなことを自慢しているようにも見えた。


「へぇー、すごいやんか。でも、バベルの塔がどこにあるのか分かるん?」


「ああ。俺様は長い旅の中でそれを偶然見つけた。でも、攻略は諦めた。なぜなら、そこはSランク帯の魔物がわんさかいる場所だからだ。だが、今のキュウと俺様なら行けるはずだ。あの塔を攻略したら、もう誰にも負けることは無いだろう」


 キュウはそれを聞いて、驚いた。ウィルバートは本当にこの世界の全てを見てきたのかもしれない。そう思うほどだった。


「ウィルはん、ほんまに色々知っとるなぁ。ウィルはんはやっぱり賢いお人や。一緒に行こな、バベルの塔へ!」


「ああ、だが今日はもう遅い。明日の朝出発だ。いいな?」


 キュウはコクリと大きくうなずいた。そして二人は明日のために寝ることにした。


***


 次の日、早朝に出発した。


「ウィルバートが帰ってきただか!」


 トンきちたちは、ウィルバートの帰りを喜んだ。


「ああ、だが、俺様たちは勇者を倒すため、バベルの塔を目指さないといけないんだ」


「へへ……バベルの塔か。そんなものが実在するんだな」


「僕はおとぎ話でしか聞いたことないよ?」


「私もよ」


「ふっ、俺様は長い旅の中で見つけたんだ。そこを攻略すれば、ヘンリーを倒すための秘宝が手に入る。だから、俺様はキュウと一緒に向かうつもりだ」


「ウチ、ウィルバートはんと行ってきます!」


「そうか、がんばってくるべ!応援するっぺよ!」


 こうして、村の人たちに見送られながら出発した。


 キュウたちが向かったのは、世界の中心とも言われている『バベルの塔』だ。


 そして、ようやくたどり着いた。


「ここがバベルの塔やな……、凄い存在感があるわ。うちらが入っても大丈夫なんかいな?」


 キュウは不安そうな顔をしながら、塔を見ていた。


 しかし、ここで立ち止まっていても意味が無いと思い、意を決して中へと入った。


「いいか?ここは危険度S+のダンジョンだ。すべての敵はまともな手段じゃ倒せないものと思え。だから敵を倒そうと思うな。状態異常を駆使して逃げながら進むんだ」


「わかった。気ぃつけるよ。まずはどうしたら良いんかな?」


「そうだな、俺様は眠りの雲で睡眠を撒き散らす。階段を見つけたら、即座に上るぞ」


「うん、それでいこう」


 ウィルバートは眠りの雲を発動して、眠りの雲の中にいるモンスターたちをキュウが呪いの監獄に閉じ込めたり、混乱させたりしていった。


「さあ、今のうちに駆け抜けるぞ!」


 こうして、キュウたちは逃げながら最上階まで登った。すると、そこには一際目立つ大きな扉があった。


「ここがボス部屋だな。ボスからは逃げられない。だが、ボスはSS+ランクの化け物だ。普通に戦えば確実に負ける。キュウは俺様の指示通りに行動しろ。俺様はお前を守りきれないかもしれん。それでも、最後まで全力でサポートする。いいな?」


「分かった。頼んだでウィルはん!うちはがんばるから!」


 そして、二人は部屋に入った。そこには、とても神々しいオーラを放っている悪魔がいた。


「あれはバベルだな。奴には物理攻撃はほぼ効かない。それに魔法も状態異常も、ほとんど通用しないと思って良い。俺様はあいつに勝てる未来が見えねぇ。だが、キュウだけでも生きて帰れるように、全力を尽くす」


 そう言って、ウィルバートは技を繰り出した。


「俺様はワールドヴァンパイア。平行世界の自分を召喚して戦わせることができる。さあ、いくぞ!まずは大魔法使いウィルバートだ!」


 すると、どこからともなくローブを着たウィルバートが現れた。


 そのウィルバートは、右手を前に出して魔法を唱える。


「ブリザード!」


 氷属性の魔法のようだった。その威力はとても強く、バベルは一瞬にして凍りつく。


「コウモリブラスター!」


 そこへ、追撃するように闇のレーザーを無数に撃ち込む。それは命中した瞬間に爆発し、巨大なダメージを与えていた。


 そして大魔法使いウィルバートは時間切れで消滅する。すると次は、大剣を持ったウィルバートが召喚される。


 大剣士ウィルバートが切り込んで行く。


「パワーブレイド!」


 するとバベルは体を大きく振って攻撃を弾き飛ばす。そこに大槍のウィルバートが現れる。


「雷光穿撃!」


 波状攻撃で、さらにダメージを与える。すると、今度は弓使いのウィルバートが現れて矢を放つ。


「影縫之矢!」


 これはバベルが避けようとしたところに先読みして放たれたため、見事に命中したが、移動を封じることはできなかった。


「やはり、普通の状態異常は効かないか。なら、これはどうだ?ブラッディーウィルバート!」


 すると、血塗れのウィルバートが現れ、その体から大量の血液を流し、血のプールを作った。


「彼岸!」


 血のプールから次々と亡者の腕が現れて、バベルを引っ掻いたり、掴んだりして攻撃した。


「コウモリブラスター!」


 そこに闇のレーザーを無数に撃ち込む。


 そして最後に、黒いマントをまとった魔王ウィルバートが呪文を唱えた。


「ダークバースト!!」


 すると、無数の闇弾が発射され、バベルに命中して破裂する。


 バベルは苦しそうだが、まだまだ倒れそうにない。


 その戦いを見ていたキュウは、自分も戦わなければと思い、攻撃した。


「メテオフォール!」


 バベルの上空から隕石が降り注ぐ。脳天に直撃し、地面も揺れたが、それでも倒れる気配はない。


「狐火!」


 青白い炎がバベルを焼く。しかし、対して効果はないようだ。威力が低すぎるのだ。


「キュウ!あんまり効いてないみたいだぞ!なら、どうするべきか分かるよな?効かないなら、効かないなりに対処法はある!」


「せやな!狐火!」


 キュウの放った青白い炎は、バベルの目を覆い隠した。前がちゃんと見えなくなり、バベルの動きは鈍くなる。


「隙だらけだぜ!いけっ!パイレーツウィルバート!」


 大海原を思わせるような水玉模様の海賊衣装に身を包んだウィルバートが飛び出してきて、手に持っている刀を振りかざす。


「斬魔一閃!」


 それはまるで水の刃のように鋭く、それでいて、どこか荒々しい攻撃だった。


「くらいやがれ~ッ!コウモリブラスター!」


 そこに無数のレーザーを撃ち込み続け、ようやくバベルは倒れて魔石へと変化した。


「やった!勝ったぞ!キュウ!俺様たちはSS+ランクのモンスターに勝ったんだ!」


 ウィルバートはキュウの手を取って喜ぶ。キュウも喜び、2人は勝利の余韻に浸った。


「この魔石はお前が食べろ」


 そう言って、バベルの魔石をキュウに渡す。キュウはそれを食べると、体が光輝いた。


「ウチ、進化するんやね」


 キュウは獄狐から進化して、C-ランクの封狐になった。そして、新たな力〈封印〉を修得したのだった。


「さあ、願いの杖を拾いに行くぞ」


 ウィルバートとキュウが歩いていく。そして、お宝部屋に着いた。そこにある、豪華な宝箱を開けると、そこには確かに杖があった。


「これが……願いの杖やな……!」


「そうだ。これで、願いが叶うかもしれない。俺様たちの戦いはこれからだ」


 そして、ウィルバートは杖を掲げて祈った。すると、黒い翼のある少女が現れた。


「私は堕天使であり、この世界の管理者である神。ルシファーです。さあ、願いを言いなさい。どんな願いでも一つだけ叶えて差し上げましょう」


「俺様は強く、賢く、カッコよくありたい!全てのものを守れる、そんな存在になりたい!どうか、勇者ヘンリーに勝てる力をください!」


「わかりました。あなたに力を与えます。魔王になり、人類を滅ぼすのです。しかし……」


 ルシファーが少し間を空けてキュウの方を見る。


「キュウ、貴女は願わなくても良いのですか?このままだと、彼が世界最強の魔王となってしまうのですよ?」


 ルシファーの言葉を聞いて、キュウは動揺する。


「ウチはただ、人間と仲良ぅしたいと思ってた……。そやけど、人間を恨んどるモンスターも多い。このままやと、いつか人間と戦う日が来るかもしれへん。せやけど、今は力が足りんかったんよ。今のままでは魔王になる資格はない。だから、せめてウィルバートはんの役に立ちたいんや。そして、ウチは自分の力だけでウィルバートはんを止めてあげたいんや。それがウチが、今までずっと悩んでたこと。これからは、それを実行していくつもり。たとえ魔王になってもええんよ。もう迷わんから。魔王になったらなったで、今度はウチが止めるまでよ。ウチは人間を守りたいと本気で思うとる。だから、お願い。ウィルバートはんを魔王にしてあげて!」


 キュウは涙を浮かべながら、必死に懇願する。


「そうでしたか。そこまでの覚悟があるなら仕方ありませんね。いいでしょう。彼の願いを叶えることにしましょう」


 すると、ウィルバートは光に包まれた。そして、その光が消えると、背中には大きな白い翼が生えていた。


「おおっ、すげぇ、体が軽くなったぜ。それに、魔力の量も段違いだ。ありがとうございます、ルシファー様」


「フフフ、貴方はSS+ランクのゴッドヴァンパイアになりました。これからはモンスターの王として君臨するといい。魔王となったことで貴方は、あらゆるものを守る強さを手に入れ、逆に人間は貴方に滅ぼされるだけの弱者となりました」


 キュウはその言葉を聞きショックを受けるが、なんとか堪えた。


「さあ、それではお行きなさい。貴方の望む道へ」


「はい。行ってきます。行こうぜ、キュウ」


 こうして、キュウとウィルバートはヘンリーを倒しに向かうのだった。

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