プロローグ
タイトルは、狼姫と書いてロウキと呼びます。よろしくお願いします。
武装した一群の携えた松明の炎が、洞窟の闇をあかあかと照らしている。
赤光を照り返して浮かび上がる洞窟内部の景観は地獄絵図のようにおどろおどろしい。
壁面にうねる大量の襞、上方から幾重にも折り重なって垂れ下がる鍾乳石。岩石でできているとは思えないほど複雑かつ有機的なそれらの造形は、罪人の魂をむさぼる化け物の口内を思わせる。
実際にこの空間は、構造だけでなくその果たす役割も、化け物の口、あるいは食道そのものと言えた。
明かりに驚いた蝙蝠たちがせわしなく飛び交う悪夢じみた魔窟の中に、片手に松明、片手に武器を携えた戦士たちの姿がある。
化け物退治の一隊だった。この地で人間を喰らい続ける悪魔を成敗するための。言わば正義の戦いに身を投じる、銀の鎧に鎖帷子で身を固めた兵士たち。とはいえ内実はほとんどが賞金目当てで招集に応じた傭兵崩れであるが。
彼らは全員固唾を飲んで、人がようやく二人すれ違える程度に狭く曲がりくねった洞窟の中、一列に並んで前方に目を凝らしていた。
いくら洞窟の奥を伺おうと曲がりくねった道でのこと、岩壁に視界を阻まれる。それでも彼らは凝視せずにはいられない。
けれど、彼らに視覚をはたらかせる必要はない。先行した仲間の行く末を知るためには。
耳さえ機能していれば十分だった。
またも、骨が噛み砕かれる嫌な音と共に仲間の絶叫が響き渡る。これで7人目だ。