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パンツの回

「あ、そうそう。美咲のパンツ見てたら思い出したんだけどね、シマウマはね、、、」


「ちょっ!待って!ハズいから!」


「ははっ。でね、、、」


「いや、ふつーに続ける?私は別に夕に見られてもいーけどさ、見たならもっといいリアクション欲しいワケ。そんな何でもない風だとさ、悲しいよ。見られ甲斐がないよ?」


「バカだな美咲。僕だってね、男だよ?そんなん見たらね、大変なの色々と。ね?だからね、あ、しましま模様だな、これはシマウマの話して冷静になならなきゃな。と、こーなるワケ。美咲のパンツ見えたら嬉しいに決まってるでしょ?頑張ってるんだよ僕は。」


「う、嬉しいなら良かったけど…。なんかなー、頬赤らめる的な?欲しかったなー。」


「欲しがりだねー美咲は。」



二週間後に行われる文化祭に向け、校内の飾り付けに必要なアレコレを作成するため、実行委員の僕と美咲は放課後の空き教室に集められていた。

今は向かい合わせに床に座ってダンボールを切ったり色を塗ったり等の作業をしている。

さっきから短めのスカートから惜しげもなく披露される縞パンが気になってしまうので、わざと話題に出したらリアクションについて指摘をされた。

女心ってやつなのか?

この欲しがりめ。



「で、シマウマの件だけど。」


「いや、あんたさ、やっぱ私のこと女として見てなくない?傷つくんだけど。」


「なんでそーなんの?めんどくさいなー。ドキドキしてるよ?美咲はすっごく魅力的な女の子なんだよ?だから、敢えて気のない素振りをしていないと、エッチな気持ちになるから頑張ってるんだってば。誘惑しないでよ。我慢すんのだって大変なんだから。」


「へへ♡最初からそー言ってよ♡」


「言ったじゃん。」


「分かりにくかった!ねぇねぇ、もっと見たいって思った?」


「思った。」


「だはは♡夕のエッチ♡」


「そーだよ。免許皆伝だよ。」


「ふふ♡そっち行っちゃお♡」


「いいけど。でもこっち側は壁だから僕にしか見えなかったけど、ジャージ履かないと皆シマウマの話始めちゃうよ?待ってるから履いといで?」


「うん♡すぐ戻るからね♡」


「うん。」


まったく、女心を主張する前に少しは男心も理解して欲しいもんですよ。

しかし、なんだろね、水着はよくて下着はダメってね。

不思議だけど、見る方もさ、実際そうだもんね。

きっと見ちゃいけない、見せちゃいけないものっていう風にさ、いつの間にかカテゴライズされてんだよね。

例えば裸族がさ、急に下着をつけ始めたらさ、きっとドキドキしだすよ、男は。

そんな男の視線を感じた女裸族はさ、急に恥ずかしくなるんだよ、きっと。


つまり、下着はリンゴだ。

アダムとイブのリンゴだ。

羞恥心を生み出す禁断の果実だ。


そんな事を考えていると、僕の前に二つのリンゴが並んだ。

青りんごと、白りんごだ。


「あ、見た?やだー♡」

「ちょっと神田君、恥ずかしいよー♡」

「……悪魔め。君らも僕を誘惑する気かい?ふふ。喜べ。僕の負けだよ。完敗。そして乾杯。ダブルパンツに。」

「何言ってんの?」

「分かんないけど、私達のパンツの勝利みたいよ?」

「ふふ♡なんだろ、もっと困らせたくなる♡ふふ♡」

「気持ちは分かる。けどやめよ友紀ちゃん。はしたないよ。でも…あと少しくらいは…」

「ちょっと!遥ちゃん、君おしいね。『でも…』から後がなければね。二人共手伝いに来てくれたんでしょ?ジャージ着てきて。ゴー!」

「「はーい。」」


クソッなんだよ、床め。

周りを見れば、チラホラパンツが見えている。

なんだ?床って凄くない?机と椅子がないだけで、こんなにもパンツの森になっちゃうの?凄い事発見したよ。学会に発表しようかしら。


「ゆーくん♡来ちゃった♪」

「あ、僕のベイビーちゃんだ!あはは!でもジャージ履いてきて。ゴー。」

「なんで?!」

「なんでも。」

「なによ!フン!分かったよ!すぐ戻るからね!」

「転ばないでね。ラビュ。」

「らびゅー♡」


…かわいい。

しかしね、神田クリーニング店店長として洗濯の一切を任されている僕としては、カゴに入っている下着はもはや敵。

今日楓ちゃんが履いているパンツだって、僕が洗い、干し、丁寧に畳み、引き出しにしまったものだ。

汚れを倒し、浄化し、生まれ変わらせたものだ。

なんなら我が子だ。

なのに、楓ちゃんが身に纏っている間は、いやはやどうして…どうして…有り難い。

この一言である。


「夕、ただいま!へへっ、皆と会った。揃ってジャージ履きに来てた!だから隣り取られる前に急いで来ちゃったー♪」


「おかえりー。見てよこれ。いつの間にかダンボールをパンツ型に切っちゃった。美咲のせいだ。」


「アハハハッ!バカだねー、でも面白いね。これさ、何個か作って隠れ◯ッキー的に飾らない?」


「あ、いいかも。でさ、全部見つけた人にはお菓子とかプレゼントしよっか!」


「いーね!それ!うちらの部活やる事なくてお茶出すだけだもんね!」


「うん、でも隠れパンティーを探せってなんだろね。文化交流部ってなんだろね。」


「いいじゃん!パンツから始まる交流だってあるさ。」


「あるの?」


まぁ…いいか。

何年後かに、「何やってたんだろねうちら」って笑えたらいいよね。


その後、皆で部員の数だけダンボールパンツを作った。

僕と高志の分はトランクスタイプにした。

本当に、何やってんだろ。

全部、床のせいだ。

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