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飯塚 高志と藤崎 深雪②

告白を断った後、校舎裏で一人佇みながら深雪さんの事を考えていた。

俺達って何なんだろうな…。



「部長はあれだ。ピュアだ。ピュア過ぎて嘘が怖いタイプだ。いつも嘘ついてる高志とは逆だね。」


なんだよ、それ。


「怖がりだから、話せない。怖がりだから、笑えない。でも部長は本当は明るい。そして誰よりも優しい。傷付くのが怖くて、傷付けるのが嫌だから、関わらない。」


じゃどうすればいいんだ?


「それは、高志。まずはお前が傷付けよ。」


は?意味分からねー。


「好きなんでしょ?高志は既に傷ついてるでしょ?傷付いてたって好きだよって、伝えなきゃ。部長は安心出来ないと思う。格好つけてたら、きっとダメなんだ。」


……格好つけてねーし。



いつかの会話を思い出す。


クソッ、クソッ、あいつの言って

る事がさっぱり分からねー。

なんだよ……深雪さん…どうしたらいいんだ?

クソッ、なんか、会いてーなー。

分かんない。何なんだよ…。

分かんないけど…会いたい。


俺は猛烈に深雪さんに会いたくなった。怖くなった、苦しくなった…なんだか無性に笑顔が見たくなった。

セミを呼ぶべきか?いや、違う。

俺に、俺に笑いかけて欲しいんだ。

会う約束はしていない。

もう帰ったかもしれない。

けど、走った。

いつの間にか涙、涙、涙。

クソ、らしくない。クソ、クソ!なんだよ?なんなんだよ!なんだよこれ!ちくしょー!!

叫び、名前を呼び、めちゃくちゃに泣きじゃくって、ただ会いたくて、会いたくて、会いたくて…来たのに…来たのに…なのに…なんで……なんで?


部室は、閉まっていた。


「……はぁー。なーにやってんだかなー。」


部室の扉を背に、崩れるようにうなだれながら呟く。

…最近のセミ達のせいだわ。これ。青春しちゃたな。ハズいわ。走ってたな、さっきの俺。ははっ格好悪いなー。ウケる。あいつらには損害賠償請求しなければ。

はぁーさてさて、深雪さんにラインしてみ、、、


「はぁ、はぁ…たかくん?」


長い黒髪を指で耳に流しながら、息を弾ませて俺を覗き込む深雪さんが…いた。


「み、み、深雪さん…」


思わずガバっと抱きついた俺。何かわかんねぇ。めっちゃ涙出てくる。でも、離したくない。


「わ、わわ、わ?」


「俺、あんたが好きだ。好きなんだよ。だから、だから俺にも笑って?…笑ってくれよ…寂しいよ…。お願い。」


「あ、あ、ごめんね。ごめんね。」


「ねぇ…手も繋いで?それから…キスもして?俺の事を見て?いや…もう何でもいい、何でもいいから…お願い…笑って?笑ってくれたら、それでいいから…君の、君の笑顔が見たいんだ…」


…あぁ、あぁ、やべー。何言ってんだ?何甘えてんだ?気持ちわりー。ガキみたいだ俺…。深雪さんコミュ障だし、めっちゃ困ってるわコレ。どうする?どーしよう、、、むにっ…むにっ?キスだ…キスしてくれた…。


「可愛い。たかくん。可愛い。」


ビビっていつの間にか目を瞑っていた俺が、キスに驚いて目を開けると、涙を流した満面の笑みの彼女が…いた。見たくて見たくて仕方なかった彼女の笑顔…もう、泣いた。わんわん泣いた。


「よしよし。大丈夫だよ?もう泣きやんで?ね?」


っう…なんだよ…これ。あったけーなーちくしょー!

…よし、そろそれガチでヤバい。冷静になれ、冷静に。


「ご、ごめんね深雪さん!俺、俺どうにかしてた…。困らせた。ごめん。あの、でも、嬉しかった。」


そう言って、下手な笑顔を浮かべる。


「謝らないで!私は、初めてたかくんを知れた気がして、嬉しかった!」


「俺を…知れて?」


「あ、あのね、今までだって好きだったけど、格好良いし、経験豊富そうだし、緊張してしまって、どうしても上手く話せなかったの。私、こんなだし、すぐ捨てられると思ってた。怖くて顔も見れなくて…。だけど、さっきたまたま泣きながら走っているたかくんを見て、いてもたってもいられなくて、来ちゃった。そしたら…私を想って泣いてくれるたかくんがここにはいて…可愛い事ばっかり言うたかくんがいて…私は今まで、勝手に、想像だけであなたを見ていたと、思い知ったの。向き合う事がどんなに大切か、分かったの。あのね、私はたかくんが大好きだよ。誰にも渡したくないよ?」


「マジか…。」


「マジだよ。ちなみに、さっきのがファーストキスだよ。まだ、手も繋いだこともないのに…。へへ♡」


「マジか…。」


「マジだよ♡てゆーか私、本当はおしゃべりなんだよ!セミ君には、初日でバレてたけどね!アハハハハ!」


「は、ははははは!マジか!マジか!はははははっ!セミのやろーはマジで魔王だな!ははっ!敵う気がしねー!でも、深雪さん!俺は、君の初めても、これからの全ても欲しい!あいつのハーレムには入れさせやしねー!」


「セミ君が魔王?ハーレム?アハハ!確かにそうかもね♪でもたかくん?本当のあなたはそんな格好良いセリフ言わないでしょ?ね?さっきみたく言って?甘えんぼのたかくんがいーな♡」


えー…。うそだろー…。


「え…えっと…ずっと側にいて欲しい…な?」


「それそれー♡可愛いー♡分かりました!側にいてあげるね♡」


「くっ…あ、ありがとうございます…。あの、今日はデートしてくれる?…手も繋いで…くれる?」


「嬉しい♡いこ、いこ、たかくん!抹茶ぜんざい食べたい!手を繋いで、ね♡」


「う、うん!すげー!和風バンザイ!」


この日、図らずも "らしくない "自分で向き合う事になった二人。それは、4ヶ月目にしての告白のようで、まるで今日から付き合い始めた恋人のようにはしゃいだ。

恥ずかしくて、格好悪くて、暑くて、熱い。互いに繋いだ掌から、そんな夏を感じながら。


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