93話 ルカの優しさとリュートの悪巧み
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新居で迎えた朝のリビングの光景は、あの宿屋の部屋と同じ光景を再現していた・・。
ただ1人、纏う空気が違うルカはソファで苦しむリュートを無言で見下ろし、その後ろでレナが姉の背中を見て身震いしている。
「・・・・・・」
「うぅ・・ルカ、助けてくれ」
「・・・・・・」
「ルカ様、お願いします」
「・・リュート様」
ただ無表情で見下ろすルカは、リュートに救いの手を差し伸べるか悩んでいると背後からレナの声がする。
「ルカお姉様、主様に慈悲を・・」
「レナ、これは自業自得なの。いくらリュート様であっても身をもって学んでもらなわなければなりません」
「だけど・・」
「私は、いま・・心を鬼にして耐えます」
「ルカお姉様・・」
ルカはそう呟くと1人キッチンへと姿を消して行き、リビングにはソファで苦しむリュートとミウと、どうしたら良いかわからなくなったレナは、リュートの手を握ることしかできなかった・・。
それから時間はゆっくりと流れていき、昼になった頃にリュートとミウの体調も復活し元通りとなった。
「レナ、ありがとう」
「主様・・」
キュルルル・・・・
朝から何も口にしていないリュートのお腹が鳴ると、刺激されたのかミウのお腹も小さく可愛く鳴った・・。
「ちゃんと、できていますよ」
2人の空腹の音を聞いていたのか、ルカがキッチンから現れて食欲をそそる香りを漂わせる皿をテーブルに優しく置いた。
「ルカ・・」
ルカの好意に感動するリュートは、ソファから身体を起こしテーブルに置かれた皿を覗き込む。
「リュート様、ミウさん・・昨日買った食材を使って作ったスープです。味は薄めにしていますから」
リュートとミウは、優しく微笑むルカに感謝を伝えスープを口にする。
「うまい・・」
「美味しい・・身体に染み渡ります・・・・」
ゆっくりとルカ特製スープを飲んでいる2人を見守っていたルカは、再びキッチンへと戻り再びリビングに戻って来ると両手にコップを持っていて、片方をレナに差し出す。
「はい、レナ・・ハーブティーよ」
「お姉様、ありがとうございます」
ルカからコップを受け取るレナは、ミウの隣りに座りハーブティーを一口飲む。
「美味しいです、お姉様」
「良かった・・私とレナの好みはリュート様と同じだから」
「はい、そうですね」
和やかな昼の時間を4人で過ごした後に、復活したリュートが突然ソファから立ち上がる。
「リュート様!?」
驚いたルカ達は視線をリュートに向けると、リュートは自慢げに宣言する。
「今日から、王都のこの家で俺達の店を開店する!」
「「「 はい??? 」」」
「だから、この家で店を開くの・・行商人から商人に格上げされたしね?」
「リュートさん、おめでとうございます」
「ありがとう、ミウ。それで、今から開店準備をする事にするよ」
「「 わかりました 」」
リュートの決心が決まると、ルカとレナは同意してリュートの手伝いをするため片付けを素早く終わらせると、旅の護衛としてついて来ていたミウは、これからの自分の身の振方を頭に過った。
すると、リュートはミウの考えに気付いていたのか彼女に問いただす。
「ミウ、俺達の旅は一先ず王都のここで終わるけど、ミウが一緒にいてくれるなら俺は大歓迎だよ」
「リュートさん、私もここに居ても良いんですか?」
「もちろんさ。俺の魔力もミウに譲渡しているから、ただの商人と護衛冒険者の関係じゃないだろ?」
「リュートさん、それは恥ずかしいです・・でも、ありがとうございます。これからもお願いしますね」
「おうよ」
リュートは、ルカとレナの片付けが終わると3人を連れて1階の店舗スペースへと移動する。
「あっ!・・あのブラックシダーは、あそこに取付けたんですね」
「そうだよ、ミウ。あそこに商品を並べて、あの窓を開けて客と対面して商売するんだ」
「それじゃ、この中に人は入って来ないって事ですか?」
「そうだよ、知らない人間が俺達の家に入って来るのなんか嫌じゃない?」
「そうですけど・・お客さん来てくれますかねー」
「きっと来るさ・・うん。中から俺が声をかければ、立ち寄ってくれるハズだよ。それに・・・・」
「それに?」
「・・・・ルカとレナが、通りで客引きをしてくれるから」
「最初から、他力本願じゃないですか!!」
「えへへ・・」
「えへへ・・じゃないですよ?リュートさん」
「ミウさん、私は構いませんよ」
「レナもだ!主様の願いであれば、応えるのが当然だからな」
「ルカさん、レナさん・・」
リュートに同意するルカとレナに対して、抵抗があるミウはどうするものかと悩んでいるとリューが予想外の事を
言ったためミウは驚く。
「別にミウに客引きをする事を求めてないよ・・ミウは冒険者だからな」
「リュートさん・・それなら、私は何をすれば?」
「そうだね・・店の護衛しながら俺の話し相手かな?それか、冒険者ギルドで王都の状況を調べに行くとか?」
「ふふっ・・そうします」
「決まりだね・・それじゃ、開店準備を始めるよ」
それからリュートはアイテムボックスに大量に収納しているポーション瓶を取り出し床に置いて、陳列の仕方をルカ達に説明した後に3人に作業を任せて1人家を出て商店へ買い物へと出掛けた。
「ルカさん、リュートさんは一体何を買いに行ったのでしょうか・・」
「ミウさん、私も何を買いに行ったのかは・・わかりません」
「ですよね・・・・」
ミウは買い物へと出掛けて行くリュートの背中を見送った後に、店内へと戻り3人でリュートに言われた通りにポーションを並べ作業を進めて行き、夕方になった頃にリュートは戻って来た。
「ただいま〜!」
「おかえりなさい、リュートさん」
「ただいま、ミウ」
「ルカとレナは?」
「夕飯を作りに上に行ってます」
「そっか・・ポーションの陳列は終わったようだね。お疲れ様」
「いえ、3人で作業しましたから、すぐに終わりましたよ」
ミウは、恥ずかしげに答えるとそっとリュートに近寄り見上げる素振りを見せていると、リュートはミウの頭を撫でた。
「えへへ・・」
満足そうな表情になるミウは嬉しさのあまり小さく声を漏らしていると、リュートは顔を上げて2階にいるルカとレナを呼んだ。
「ルカ!レナ!・・ちょっと下に降りて来てー!」
少しの間が空いた後にルカとレナが足音を響かせながら階段を降りて来て、リュートの前に姿を見せる。
「リュート様、お待たせしました」
「おかえり、主様」
「ただいま。早速だけど、2人に来て欲しい服があるんだ」
リュートはアイテムボックスから大きな袋を取り出して、ルカとレナに手渡す。
「私とレナに服をですか?」
「あぁ、客引きの時に来て欲しい服だよ・・奥の部屋で着替えて来てくれるかい?」
「わかりました。着替えて来ますので、待っていてください」
「うん。楽しみにしてるから、急がなくて良いから」
リュートは、満面の笑みで手を振りルカとレナが奥の部屋のドアを開けて着替えに行くのを見送るリュートの表情をみたミウは、女の勘が働く。
「リュートさん、2人に何か変なのを着させようとしていませんか?」
「はぇ?・・べ、別にそんなことないよ?うん。決して、俺の願望の服を2人に着てもらおうだなんて下心は皆無だから安心してくれ」
「リュートさん・・・・私は、そこまで聞いて無いんですけど?」
「えっ?」
リュートは、自分をジト目で見上げているミウから視線を逸らして、数歩横に移動し誤魔化すように陳列されたポーション瓶を手に取り眺めていたのだった・・・・。




