90話・・飲み過ぎの翌朝の惨劇と依頼報酬
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王都のとある宿の一室で獣が小さく唸る声が聞こえる・・・・。
「「 ゔぅ〜・・ 」」
昨夜の酒席でリュートとミウは、何杯飲んでも平然としているルカとレナに負けじとエールを浴びるほど飲んだものの2人に勝てることなくフラフラで宿戻り、気付くと朝を迎えるとともに、強烈な頭痛と吐き気に襲われベッドで唸り静かに踠いていた。
「・・リュート様」
そんな青ざめたリュートを心配そうに見つめるルカは、リュートがこんな状態に陥ることが初めてのためどうしたらいいかわからずベッドの横で狼狽えている。
「ルカ・・俺は、もうダメだ・・死ぬる」
リュートは、久しぶりの二日酔いで苦しみルカに弱音を吐く。
「そ、そんな・・」
リュートの言葉を真に受けるルカは、さらに不安になり隣りにいるレナに視線を向けるも、彼女も同じようにわからないため涙目で首を振る。
そんな2人をベッドでリュートと同じように二日酔いで苦しんでいるミウは、喉元の近くまで迫っているアレを出さないよう必死に耐えながら小さく呟く。
「・・治癒魔うぉっ・・ふひぃー・・」
ミウの必死な訴えを、リュートを心配する2人の耳には届かない。
(・・ダメよミウ・・私は、女の子・・絶対に出しちゃダメ・・)
孤独に闘うミウは、なんとかルカに治癒魔法ヒールをかけるよう必死に訴える。
「ルカ・・ヒールをっぽぅ・・ふぅ〜・・ヒール!」
背後から聞こえたヒールという言葉がルカの耳に届き振り向くと、涙を流すミウが見つめていることに気付く。
「ミ、ミウさん!?」
「・・ルカさん、ヒールを・・」
「ヒール?」
もう限界突破しているミウは、僅かに頷くことしかできない。
「ヒールですね・・」
ミウの必死の願いがルカに届くも、無情にもルカは先にリュートへと顔を向けて治癒魔法ヒールをかける。その後ろ姿を見ていたミウは、小さく絶望の声を漏らしながら口から大量に吐き出し布団を汚してしまう。
「オロロロロ・・・・」
ルカとレナは、治癒魔法ヒールの効果で普段通りの顔色に戻っていくリュートに安心していると、背後から変な匂いがすることに気づき振り向く・・・・。
「「 ミウちゃん!! 」」
ルカとレナが振り向き見た光景は、女の子が見せてはいけない光景だった・・
「ど、どうしたんだ?」
二日酔いが完治したリュートは起き上がりルカ達の横に移動すると、ベッドの上で横になっていたミウの惨劇に驚き固まる。
「・・・・」
それから3人は急いでミウの身の回りを綺麗にして二日酔いを完治させるも、あの光景を見られたミウは着替えた後に部屋の隅に座り落ち込んでしまった。
「・・はぁ、どうせ私なんて・・私なんて・・」
そんなミウを見ていたリュートは、落ち込んだミウを元気づけさせるため街へ買い物に行こうと誘う。
「ミウ・・天気も良いし買い物に行こう・・」
「・・はい」
俯いたままリュートの誘いに応えるミウは、ゆっくりと立ち上がる。
「ありがとう」
そう伝えたリュートは、出掛ける支度を始めていると、支度を済ませたルカが話かけてきた。
「リュート様、買い物のついでに王都の商人ギルドに行きませんか?」
「商人ギルドに?」
「はい、報酬の書簡に商人ギルドで手続きをすることがありましたから」
「・・・あぁ、そうだったね。ミウ、商人ギルドにも行って良いかな?」
「良いですよ・・なら、先にギルドに行きましょう。買い物はそれからで・・」
笑顔を見せるミウに、リュートは申し訳なさに礼を伝え4人で宿屋を出ると昨日に比べ通りの人が多くなっていた。
街の変化が分からないリュート達は、先に商人ギルドへと向かい建物に入ると目についた受付窓口へとリュートは列に並び順番を待ち、ルカ達は誰も座っていない長椅子を見つけリュートの手続きが終わるのを待つことにした。
「次の方、どうぞ〜」
手際良く受付業務を終わらせる受付嬢が、リュートを呼ぶ。
「どうもです・・」
「本日のご用件は?」
「えっと、これを見せるようにと言われまして・・」
リュートは、報酬としてもらった書簡を受付嬢に提示する。
「・・・・」
今まで手際良く受付業務をしていた受付嬢は目を見開き固まってしまう。
「もしもし?」
「ぬわぁー!ギルド長!!」
受付嬢は叫びながら椅子から立ち上がり受付窓口から逃げて奥の事務所へと駆け込んで行き、1人取り残されたリュートは周囲にいた商人達やギルド職員達の視線を一気に集めてしまいたじろいで俯き黙る。
受付嬢の不可解な行動を見ていた商人達は、会話を止めてしまいギルド内に異様な程静かな空気が流れ、窓口前に居づらくなったリュートはゆっくりと離れルカ達が座っている長椅子がある場所へと歩いていると、奥の扉が勢い良く開き、年配の男が慌てて姿を見せリュートを探す。
「リュート殿!・・リュート殿!!」
年配の男の後ろから姿を見せた、あの受付嬢は窓口から離れていたリュートを見つけ前に立つ年配の男に告げると、リュートと年配の男の視線が重なり、笑顔で年配の男が小走りに近付いて来る。
「リュート殿、お待たせしました。詳しい話は別室で聞きます」
「えっ?」
「リュートさま、さぁこちらへどうぞ」
年配の男と受付嬢のペースに飲まれたリュートは、そのまま2人の案内により別室へと連れて行かれる。その様子を見ていた3人は、ただ見ているだけでリュートに付いて行こうとすることはなく、ただ手を振っているだけだった。
(・・あれ?・・ルカ達は・・来ない、んだ・・)
歩きながら振り向くリュートは、ルカ達が長椅子に座ったまま手を振る光景に、寂しさを感じながら別室へと案内された。
商人ギルドの個室に案内されたリュートは、白いソファに座り対面には年配の男が座っている。
「はじめまして。王都商人ギルド長のアキン=ゴールダーです」
「行商人のリュートです」
「リュート殿・・先程、受付嬢に見せた王族の書簡を拝見させてもらっても?」
「あぁ、どうぞ・・コレです」
リュートは、書簡を商人ギルド長アキンに手渡す。
「ふむふむ・・これは、最重要案件ですね・・すぐに対応します。クレラ君、店舗情報簿冊の12番の3を持って来てくれるかい?」
「12番の3の簿冊ですね・・すぐに持って来ます」
受付嬢クレラは、ポニーテールの茶色い髪を揺らしながら部屋を出て行き、個室にはリュートとギルド長アキンの2人だけとなる。
「・・リュート殿、貴方はいったい何者ですか?」
「どこにでもいる、ただの行商人だけど・・」
「そのような方が、国王陛下直々の推薦状を持って来るとは・・それと、本日から行商人ではなく商人へと格上げとなります。ギルドカードを渡してくれますか?」
「別に良いけど・・」
リュートがギルドカードをアキンに手渡した頃に、受付嬢クレラが分厚い簿冊を抱えて部屋に入り、アキンとリュートの間にあるテーブルに置いた。
「ふぅ・・お待たせしました」
「ありがとう、クレラ君。それと、リュート殿のギルドカード更新をするから魔法具を持って来てくれたまえ」
「わかりました」
受付嬢クレラは一礼して再び部屋から出て行くのを見送ったアキンは、テーブルに置かれた分厚い簿冊を開き何かを探しはじめる。
パラパラ・・パラパラ・・・・パシッ
「・・おぉ、あったあった。この物件だ」
商人ギルド長アキンは、捲っていた指を止めて簿冊に記載されている物件情報を見せるため簿冊をクルッと回し、リュートに見やすくする。
「ギルド長、コレは?」
「国が・・いえ、王族が所有していた物件情報です。リュート殿が持っていた書簡には、この物件を報酬として譲渡すると取り決められています」
「・・・・」
「リュート殿?」
「はっ!すいません、意識が飛んでました。えっと、その・・なんの話しでしたっけ?」
「???・・あのですね、ここに記載されている物件をリュート殿に譲渡するということです」
「そういうことですね・・わかりました」
「まぁ、良いでしょう。ギルドカードが新しくなったら、担当の者に物件へと案内しますのでお待ちください」
「はい、待ちます・・」
しばらく個室で待つリュートは、今後のミウとの買い物のことを考えていると、受付嬢クレラが戻って来てギルドカードをギルド長に手渡す。
「お疲れ様、クレラ。ここの物件は、君の担当エリアだったよね?」
「はい、そうです」
「今日の受付業務は終わりにして、リュート殿を物件まで案内してくれ」
「わかりました。外回り用の服装に着替えてきます」
「よろしく頼むよ」
「はい」
クレアは部屋を出て行きギルド長アキンは、新しくなったリュートの商人ギルドカードを手渡す。
「ギルドカードに物件情報も取り入れているから、この物件は今の時間を持ってリュート殿の所有物となります。クレアの支度が整うまで、この部屋でお待ちください」
「・・わかりました」
急な物件引き渡しとなったため、ミウとの買い物が遅れてしまう事にどう言い訳するかリュートは受付嬢クレアが来るまで悩み考えていたのだった・・・・。




