9話 リュートの裏仕事①
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リュートがリーナの帰りが遅いことを気にしてしばらくした時に店のドアが勢いよく開かれ誰かが飛び込む姿がリュートの視線に捉えられる。
「すいませぇ〜ん!たっだいま戻りましたぁ〜!」
両手いっぱいに荷物袋を持ったリーナが息を切らしながら店に入り自分へと近づく姿をリュートは、気にしない素振りで顔を逸らし口を開く。
「遅かったな・・まぁギリギリ閉店時間内だ。遅れたら野宿させようと思ったけど。とりあえず、部屋にその荷物を置いてきな」
「はい。わかりました」
リーナは野宿という言葉に一瞬青い顔をしたが、リュートが本気でないことに気付き笑顔で返事をして店の奥の階段を駆け上り2階の与えられた部屋に荷物を放り投げ売り場に戻る。
閉店準備をしているリュートの後ろ姿を見ながら、リーナは売り場の掃除を終わらせ昼間の商店で出会った冒険者パーティーに聞いたことをリュートに聞く。
「あの・・リュートさん」
「なんだ?」
「昼間に商店で、お店に来られていたバーナスさん達にお会いしたんですが・・リュートさんは、昔はバーナスさんと同じ冒険者だったのですね?」
(バーナスの野郎、リーナに余計なこと言いやがって)
「リュートさん?」
「・・・・まぁな。所詮はFランク止まりの素人冒険者だったけどな」
「Fランク・・Fランク冒険者だったんですね」
窓際から外を見ていたリュートは、ゆっくり振り向きポーション陳列棚の前に立つリーナを見つめ笑いながら口を開く。
「あぁ、最下位ランクのFランク冒険者さ。だから、あいつらの方が格上冒険者でギルドにも貢献しているパーティーなのさ」
「でも・・」
リーナは、どこか寂しそうな瞳をするリュートに気付き、喉元まで出かけた言葉を飲み込み2人の間に静かな時間が流れる。
「 ・・・・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
「よし、閉店時間だ」
「はい、リュートさん」
リュートとリーナは、店のドアに営業時間外の木の看板を掲げ鍵をした後に一緒に2階のキッチンへと向かう。
「リーナ、嫌いな食べ物はあるのか?」
「ないですよ」
「そうか、わかった」
調理をしながら背後にいるリーナに質問し、夕食を手際良く作るリュートの背中を椅子に座り見つめながら答える。
それからキッチンに食欲をそそる香りが広がり、リーナのお腹が鳴ったのを合図に夕食が出来上がりリーナを呼ぶリュートが皿への盛り付けと配膳を手伝わせる。
「さぁ、食べよう」
今夜の夕飯は、野菜炒めに肉を加えた物と黒パンとスープがテーブルに並び、久しぶりの豪華料理にリーナが驚いている。
「こ・・こんなに食べてもいいんですか?」
「あぁ、飯は明日への活力だからな。食べれる時に食べる主義だからな」
そのまま食事を始めるリュートに対し、リーナは1つ1つリアクションするため賑やかな食事となった事に、幼き頃に両親と食べていた時間を思い出すリュートだった。
食べ終わった2人は食器を片付け、自由時間として自分の部屋へと入って行きくつろいでいるリュートは、微かに聞こえる隣の部屋で荷物整理をしているであろうリーナの音が聞こえなくなった頃に、ベッドで横になっていたリュートは起き上がる。
「・・・・そろそろ、いい頃かな」
自分の部屋を出るリュートは、廊下で隠密スキルを発動し自らの気配と姿を消しながら階段を降りて家の裏口から外へ出る。
(あれっ?リュートさんの気配が・・)
寝ていたリーナは、僅かに感じていたリュートの気配が変化したことを感じ意識が覚醒する。
人族ではないリーナは、周囲の変化に敏感であるためリュートが隠密スキルを発動したときの僅かな魔力を感じたため自分の部屋を出て、リュートの部屋のドアの前に立つ。
「・・リュートさん?」
ドア越しにリュートの名を呼びかけるが、中から返事は無く無意識にドアの取手を握るが冷たい感触を感じ思い止まった。
「勝手に開けるのは、さすがにダメだよね・・」
そう呟きながらリーナは自分の部屋へと戻っていった。