83話 王城へ・・そして新たな出会い
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リュート達は、多くの人達で賑わう王都の街並みを見渡しながら王城の正面に権威を象徴するかのような立派な門が鎮座しており、その門の前に長槍を構える2人の兵士の姿があった。
「106大隊長のシフィードだ。国王陛下へ上納する荷物を持った商人一行を同行させ入城の許可を求む」
「お待ちください。近衛兵長に確認をとります、シフィード106大隊長」
「わかった」
対応する衛兵の1人が王城門脇にある通用門の扉を開け入ると、別の衛兵が通用門から姿を見せ門の前に立ち警戒をしてしばらくしてから報告のため姿を消した衛兵が通用門から出て来てシフィードの前に立つ。
「お待たせしました。近衛兵長の許可を確認しましたので、第1詰所へと移動してください」
「ありがとう」
すると王城門がゆっくりと開き、先導する騎士達が門を通るとシフィードが手招きをしてリュート達が乗る馬車を中へと呼び寄せる。
リュート達の馬車が王城門を通過すると速やかに閉門され、少し進んだ場所にある平屋の前で馬車を止め降りたリュート達は平屋の中に案内され、テーブルとイスが置かれた簡素な部屋で待たされる。
「・・・・待合室かな?」
「そのようですね、リュート様」
リュートは部屋を見渡し呟くと、ルカがその問いに答える。
「主様、数人の気配が近づいて来ます」
レナがそう呟くと、部屋のドアをノックする音が聞こえ開かれると5人の騎士と先導してくれたシフィード達騎士団が纏う鎧と違う格好の騎士が3人部屋に入りリュート達と対面する。
「・・・・貴方が、ハイゼン伯爵から依頼を受けた行商人リュート殿か?」
「はい、そうです」
「私は、近衛兵長のリーヴスと申します。ここで、例のモノを見せていただけますか?」
「わかりました」
リュートは、アイテムボクスからハイゼン伯爵から預かった聖剣を取り出しテーブルに置く。
「なっ!・・リュート殿は、コレを片手で持てるのか?」
リーヴスは目を見開きリュートを見つめる。
「はい。コレは、鞘に入っていれば勇者様でなくとも持てることはできるようです・・あの、持って見ますか?」
「いやいや、冗談を・・適性のない者が持つと一瞬で命を失うと聞いておりますので」
「そ、そうなんですか?」
リュートは宿屋で抜剣したことを思い出し、死ななくて良かったと背中に冷や汗を流す。
「それでは、事実確認ができましたので・・ここから近衛兵の私達が騎士団から引き継いで王城へと案内します。ソレをアイテムボックスに収納してください」
「は、はい・・」
リュートはテーブルにおいた聖剣を重みを感じさせることなく右手で持ち上げアイテムボックスに収納する。その姿を見ていたリーヴスとシフィードは驚きつつも表情を変えず見守っている。
「それでは、案内します」
騎士団のシフィード達に見送られながら部屋を出るリュート達は、近衛兵に前後を挟まれながら先頭を歩くリーヴスについて歩いた。
しばらく歩き王城内の中庭を歩くリュート達を巡回する近衛兵やすれ違う使用人達の視線を浴びながら王城内へと進むとリーヴスは立ち止まり振り向きリュートを見る。
「リュート殿、ここから先は勝手に行動され姿を晦ますと問答無用で斬り捨てられますからご注意を・・」
「わ、わかりました。はぐれないように気を付けます」
「ご協力に感謝します」
ニッコリと笑うリーヴスを見て、男の笑顔は気持ち悪いなとリュートは心の中で思うと隣に立つルカとレナはクスクス笑う。
真っ赤な絨毯が敷かれた長い廊下を歩き、何度か曲り角を曲がると階段が姿を見せて背中を向けたままリーヴスが口を開く。
「この階段を使い上層階にある謁見の間へと向かいますが、先に謁見前の客間へと案内します」
金属製の鎧が擦れる音を鳴らしながら近衛兵達は軽快に階段を上がっていき、5階層上へと階段を上がった後は廊下に出て再び歩き出し、とあるドアの前でリーヴスは足を止め振り向く。
「この部屋が、謁見前に待機する部屋です。私が呼びに来るまで部屋から出ることなく、お待ちください」
「・・わかりました」
リーヴスが部屋のドアを開けて、リュート達は部屋の中へと入った。部屋には平屋で待たされた部屋と違い、ソファや座り心地の良さそうなイスが置いてあり、テーブルには見たことのないお菓子のような物が皿に置いてある。
「それでは、謁見の準備が整うまでお待ちください」
そう呟き部屋から出る近衛兵長リーヴスと入れ違いに若いメイド3人が部屋に入り、リュート達に飲み物の支度を始め、コップにハーブティーを注ぎ手渡すとメイド3人は、笑顔で部屋の隅へと移動し並び立つ。
「・・・・なんだかな〜」
「リュ、リュートさん・・」
「どうしたミウ?」
「こ、ここ紅茶に味がしません・・」
「んなバカな!?」
リュートはメイド3人を見ながらテーブルに置かれたコップを手に取り、一口飲んでみる。
ゴクッ・・・・
「出涸らしじゃねーか!」
思わず漏らすリュートの声が聞こえたのか、メイド3人はクスクス笑い表情を戻す。
「はぁ、所詮平民の俺達をもてなす気は微塵も無いってことか・・」
「それじゃ、この美味しそうなお菓子も・・」
「あぁ、食べると腹壊すの確定だろうな・・」
「そんな・・食べてみたかったな」
ミウは残念そうな表情をして僅かに俯いていると、それを見たリュートはアイテムボックスから飲み物とお菓子を取り出す。
「ミウ、こっちの方が良いぞ」
「ありがとうございます、リュートさん」
ミウは、果実水入りの瓶と蜂蜜入りカステラのハニカラが入った紙袋を受け取り口にする。その姿を見たメイドの1人が詰まらなそうに小さく舌打ちをしたのをリュートの耳は聞き逃すことはなく、そのメイドを睨むようにリュートは殺気を乗せ視線を向けると、表情を青くしてメイドは意識を失い倒れ床と激しくキスをする。
バタンッ!
「メリア!」
突然倒れたメイドのメリアを隣りに立っていたメイド2人が慌てて介抱していると、部屋のドアがノックされ10才くらいの水色のドレスを纏う少女が入って来て、リュートと視線が重なり固まる。
「「 ・・・・・・ 」」
「・・ゆうしゃさま??」
先に口を開いたのは青いドレスを纏う金髪碧眼の少女で、クリッと大きな瞳を輝かせながらリュートに尋ねる。
疑う余地もなう程の品のある少女を王族の関係者と判断したリュートは、言葉を選びながら告げた。
「お嬢様、初めまして・・私は勇者ではありません。平民で行商人のリュートと言います」
「でも、リュートは黒髪黒目だよ?」
「たしかに、私は召喚される勇者様が持つと聞く黒髪黒目を同じように持っていますが、この世界で生まれ育った男ですよ」
「・・・・そうかな?クリスティーネは・・リュートが、ゆうしゃさまだと思うの」
「あはは・・クリスティーネ様。お気持ちだけありがたく頂戴いたします」
「うん、わかった・・リュート、こっち」
「はい」
クリスティーネに笑顔で手招きされたリュートは、椅子から立ち上がり彼女の前で片膝を付いて頭を垂れる。
「そうそう、そのまま動かずにね」
「はっ・・」
リュートの短く小さな返事の後に部屋のドアが開き誰かが入って来るも、頭を垂れているリュートは遊びでも今ここで顔を上げるのは良く無いと思い動かずにいると頭上でクリスティーネが告げる声をそのまま聞く。
「第1王女クリスティーネが、ここに宣言します。行商人リュートを、専属護衛騎士と任命する」
「はっ!・・第1王女クリスティーネ様の専属護衛騎士を僭越ながらも拝命いたします」
リュートがゆっくりと顔を上げて、片膝をついた姿勢でも少しだけ高い位置に小さな顔があるクリスティーネは笑顔でリュートを見つめ額にキスを数秒間続けた後に離れると、クリスティーネの背後から男の叫ぶような声が部屋に響き渡った。
「クリスティーネ王女様!・・なんていうことを!!」
声の大きさにビクッとしたクリスティーナは、涙目で自らの意志で任命したリュートの背後へと抱き付き隠れると、リュートは反射的にクリスティーネの身体に左腕を回し守る態勢をとる。
「リュート・・」
小さく弱々しく呟いたクリスティーネ第1王女は、リュートの背中の温もりに安心し瞳を閉じて顔を埋めたのだった・・・・。




