82話 待ち構える騎士団
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「・・そろそろ主様を起こす時間か」
深夜に姉のルカと野営を交代したレナは、荷台の幌の上で腕を組んだまま周囲を警戒していたちょうど視線の先の東の空が少しづつ明るくなったのを見て呟いた。
スッと音も立てず荷台を揺らすこともなく幌から飛び降り、荷台に着地したレナは2歩だけ歩き勢いを殺すと流れるような動きで寝ているリュートの横で膝をついた。
「主様・・主様、時間です」
「・・・・ん〜ありがと」
レナに肩を優しく揺らされたリュートはゆっくりと目覚め背伸びをしてから起き上がると、右側で横になっていたルカは先に起きてちょうど背を向け着替えている途中で、フリフリと揺れるルカのおしりを見つめた後にミウに視線を向けると、彼女はまだ夢の中のようだった。
「ミウ、朝だよ・・」
リュートはモソモソと移動し寝ているミウの左頬を指先で軽く突きながら起こすと、寝ぼけているミウはムクッと起き上がりリュートの右手人差し指をパクッと咥えて吸い始める。
ハムッ・・チュパチュパ・・・・
「・・・・んふぅ〜〜」
寝ぼけ眼でミウは幸せそうな表情のまま咥えた指を離さないでいると、リュートの指先にピリッと刺激が走った直後に魔力がミウへと一気に注ぎ込まれる現象が起きてしまい、慌ててリュートはミウの口から咥えられた指を強引に引き抜くもすでに手遅れだった。
「んぁ!!」
喘ぎ声と共にビクンッ!と全身を痙攣させたミウは、恍惚の表情で意識を失い脱力したまま横たわってしまった・・。
「ミ、ミウ!?・・おーい!ミウ??」
リュートが慌ててミウを呼ぶ声に異変を感じたルカとレナが、急いで荷台へ上がって来た。
「リュート様!どうしましたか?」
「・・ミウが、ちょっとね」
気不味そうな反応をするリュートに、ルカは足元で頬を紅潮させ汗ばんでいるミウの顔を見つめ観察していると、彼女の魔力に変化が起きていることがわかってしまう。
「そうですか・・リュート様。ミウさんに魔力譲渡されましたか?」
「えっ??っとその・・ミウが寝ぼけながら俺の指を咥えて吸っているのが面白くて見てたら急に魔力回路が繋がってさ、一気に魔力が注ぎ込まれちゃって力づくで指を抜いたんだけど手遅れだったみたい」
「指からですか?それは新しい楽しみ方が・・ではなく、今の彼女は魔力酔い状態かもですね。しばらく放置していれば、そのうち目覚めると思います」
「そ、そうだよな。とりあえず、周囲の馬車が動き出しそうだから俺達も遅れないよう準備を済ませよう」
「はい、リュート様」
商人ゼニダが率いる馬車が動き出し、その後ろにいたリュート達も後を追って動き出す。入門の受付は、日の出の時間から始まっているも普段以上に混み合っているため、動き出して3時間経った頃にリュート達の番になった。
「待たせたな、お嬢さん方」
「いえ、お勤めご苦労様です」
「お疲れ様です」
「ありがとう。そう言ってくれるのは、お嬢さん達だけだよ・・他の連中は、目が合えば文句ばかり好き放題言いやがって・・おっと、すまない」
「いえ、溜まった鬱憤は吐き出さないとスッキリしませんから。それで、王都は毎日こんな状況なのでしょうか?」
「普段は、この半分程度ぐらいかな・・身分証見せてくれるかい?」
ルカは、リュートから預かっていた商人ギルドカードを提示し、ミウは目覚めたようで細い腕を必死に伸ばし冒険者カードを提示していた・・。
「へぇ、商人の使用人さんか・・君は、護衛の冒険者なんだね・・。えっと、リュートっていう人は?」
「・・すいません、俺です」
荷台から御者台へと移動し、ルカとレナの肩に手を置いて門兵に姿を見せると、リュートの容姿を見た門兵は不動の姿勢をとり頭を下げる。
門兵の突然の行動にリュートは驚き頭を上げるよう伝えると、門兵は恐る恐る顔を上げた。
「突然頭を下げて、どうしたのですか?」
「し、失礼しました!召喚者様の馬車とは知らず・・申し訳ございません!」
「「「「 え???? 」」」」
リュート達は驚きの声を上げると共に、ルカとレナそしてミウはリュートを凝視する。
「ちょ、ちょっと待ってください!俺は行商人で、召喚者ではありません!」
「し、しかし・・黒髪黒目を持つ方は、召喚者様で間違いありませんから」
門兵から出た言葉に理解が追いつかないリュートは、混乱したまま話を続ける。
「一ついいですか?もう、召喚者様は既に召喚されたのですか?」
「い、いえ・・まだその情報は来ていませんが・・国王陛下様が極秘に召喚の儀式を執行していれば、貴方様は伝説の召喚者様だと私は信じます」
「ち、違いますから。俺は、ただの商人・・じゃなくて行商人ですから。ギルドカードをよく確認してください!」
門兵は、ルカが持っていたリュートのギルドカードを受け取りじっくり見た後に詰所へと持って行き、しばらくして戻って来た。
「はぁ、はぁ・・平民と確認が取れました・・とても容姿を見ると信じられませんが・・」
「平民の行商人ですから・・落ち着いてくださいね」
門兵は、黒髪黒目のリュートを見ると動揺してしまい、深く深呼吸をしてから口を開くも声は震えている。
「それで、王都に来た理由は?」
「はい、ハイゼン伯爵令嬢様が騎士団へ入団のため寮に私用品を運びに来ました、あとはハイゼン伯爵様から直接王家様に家宝である特別な荷物を届ける依頼を受けています。
「ハイゼン伯爵から?・・」
門兵の顔色が明らかに変わりリュートに指示を出す。
「あそこの詰所の前へ移動し待っていてくれ」
「わかりました」
門兵の指示で、ルカは詰所の前へと馬車を移動させ待っていると先程の門兵より上位者に見える青年が部下を3人連れて姿を見せる。
「こんにちは、ちょっといいかな?」
リュートは、青年の呼び掛けに応じて荷台から降りて青年の前に移動する。
「どうも・・」
「えっと、リュート殿がハイゼン伯爵様から依頼を受けた行商人で間違いないかな?」
「はい、間違いないです」
「そうですか・・遅れながら僕は騎士団所属で、第106大隊長のシフィード=マスカルです。いくつか僕の質問に答えてくれると助かるんだけど・・」
「いいですよ」
「ありがとう。先に伝えて置くけど、僕はとあるスキルを持っているから虚偽の報告はわかるからね?」
「別に、貴方に隠すほどの身分じゃないですよ」
「そっかそっか・・」
シフィードは、笑顔になり腕組みをして、リュートから警戒を解いて質問を始める。
「初めに、その容姿は本物?」
「はい、生まれ持ったものですよ」
「そう、後ろの3人は?」
「御者台にいる2人は、俺の使用人で荷台にいる子は護衛の冒険者」
「ふんふん、ハーレムだね・・実に羨ましいぞ?僕だって、いずれ必ず・・」
「ちょっと・・シフィード大隊長?」
背後にいる部下が声をかけるも、シェフィードは無視してリュートへの質問を続ける。
「さて、ここからが本題だ。リュート殿は、空間魔法を使えるのかな?」
「使えますよ」
「それなら、アイテムボックス持ちであるよね?」
「はい・・」
リュートは腰あたりから、毛布を1枚取り出し見せると、シェフィードの部下達から驚きの声が漏れた。
「なるほど・・それはもう片付けていいよ。それじゃ、最後の質問だ」
「・・・・」
シェフィードの表情が真剣になりリュートは無言で身構える。
「ハイゼン伯爵様から直接預かった例のモノはなんだい?」
「・・高貴なる剣です」
「いいでしょう。合格です。アレは認められた人・・そう勇者様にしか手にすることができない剣だからね」
「そ、そうですか・・だから持ち運びが大変だったんですね・・」
(・・やべぇ・・聖剣のあの子と仮契約しちゃってるよ)
「さぁ、ここからは僕達騎士団が王城へとリュート殿達を案内しよう」
「でも、門の警備は?」
「門の警備?騎士団の任務で門兵の仕事はしないよ。僕は、地方都市から運んでくる例のアレを運んでくる人を待つのが与えられた任務だったんだ。良かったよ、僕が担当する門に君達が来てくれて」
笑顔で告げるシェフィードに連れられて王都に入ったリュートは、前を歩き人々を手際良く退かしていく騎士達に先導されながら大通りを馬車で移動し見上げるほど高くそびえ立つ王城を目指したのだった・・・・。
やっと王都に辿り着きました。これからリュートの周辺で色々イベントが起きていきます。
そして、登場人物も増えていきます。
引き続き完結までお付き合いをお願いします。




