79話 王都へ
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地方都市タジリンから王都へと繋がる街道は、整備されていて馬車が走りやすくなっていて、道に大きな穴がある事はなかった。でもただ1つ違う光景がある。
「・・多いです・・とにかく多いですね」
御者をするルカは独り言のように呟いている。
また彼女の隣り座っているレナも膝に肘を突きながら呟いていた。
「のんびりですね、お姉様・・いつもよりかなり遅いですよ」
「そうね・・これでは、走った方が速いわ・・」
リュート達の馬車の前には数十台の馬車が連なっていて、全ての馬車が王都へ向かう馬車のようだ。2人の不満に気付いたリュートは御者台へと移動し、ルカとレナの間から顔を出して前を見る。
「混んでるね・・このままだと予想以上に時間がかかりそうだ」
「リュ、リュート様・・」
「ん?」
リュートがルカに顔を向けると、あと少しでルカの頬にリュートの口が触れそうに距離になっている。
「い、いえ・・」
恥じらいを見せるルカの反応を見て楽しんでいたリュートは、左を向いてレナの顔を見ると不意に彼女と唇が重なってしまった。
「ん・・」
レナは、リュートとルカが見つめ合う姿に嫉妬し、あわよくばと思い少しだけ顔をリュートの方へ近付けて待っていると、予想が的中しリュートが自分を見てくれたタイミングでさらに顔を寄せて唇が偶然触れてしまうよう仕向けた。
(やった・・主様と外で・・)
「おっと、ごめんレナ」
「い、良いのです。主様が求めてくださるのであれば、レナはいつでも・・」
「レナ!・・偶然とはいえ、はしたないですよ」
「ごめんなさい、ルカお姉様・・」
口では謝るレナであったが、表情は恍惚としていたのだった。
それから、相変わらず馬車は普段の半分以下の速度で移動し日没が近づいてきた頃の時間になると、前方を走っていた馬車が少しづつ街道脇へと逸れて止まる光景が目立ち始めた。
「・・リュート様、そろそろ野営する場所を決めませんか?」
「そうだね、とりあえずもう少し先へ進んでくれるか?」
「はい、リュート様」
リュートはルカにまだ先に進むよう伝えた後にミウを呼ぶ。
「ミウ、ちょっと良い?」
「どうしましたか?」
「スキルを使って、あの商人達の馬車がいないか探ってくれないか?」
「わかりました。少しだけ待っていてください」
「よろしく頼むな」
「はい」
ミウは魔眼スキルを発動し、周囲にいる者達の中にサギエル達がいないか探す・・。
「リュートさん、私が探せる範囲にはいないようですね」
捜索が終わり、スキルを発動したままリュートを見上げるミウの瞳には紋章が浮かび上がり輝いている。
「ありがとう、ミウ、スキルを止めて良いよ」
「はい」
ミウの瞳に浮かんでいた紋章の輝きは消えると、瞳から紋章がスッと消えて普段のミウの瞳へと戻っていった。
「ルカ、良いところで馬車を止めて野営をしよう」
「はい、リュート様」
ルカは平坦な場所を見つけると街道から少し外れ馬車をゆっくりと止めると、その直後に3台の馬車がリュートの馬車の隣りに並んで止まる。
「なんか距離が近過ぎないか?ミウ」
「そうですね・・明らかに悪意を感じる止め方です」
冒険者経験のある2人は隣りに止めてきた馬車に違和感を感じるも、まるちどぉーるのルカとレナは経験が浅いため、特に気にする素振りもなく野営の支度を始めている。
「ミウ、今夜はテントなしでも良い?」
「はい。その方が何かあった方が対処しやすいですからね」
「ありがとう」
リュートとミウは荷台から降りて、ルカとレナと合流し集めた薪に火をお越して早めの夕食を食べていると、男達数人が隣りに止めた馬車から姿を現したのだった。
「こんばんは・・一緒に飯でもどうかな?」
「いえ、結構です」
キッパリと断るリュートに声をかけてきた金髪の男は、眉をピクピクさせながら食い下がる。
「まぁまぁ、そんなことをアンタに聞いてないんだよ。お嬢さん方、静かな夜を過ごすより俺達と楽しい夜を過ごさないかい?」
「「「 無理です!!! 」」」
息を合わせたかのように3人が同時に返事をしたことに、明らかに苛立ちを見せた金髪の男は声を大きく出す。
「はぁ?この俺たちを見て、誘いを断るのかな?・・もしかして、俺達のことを知らないのかな??」
金髪の男の周囲にいる男達はニヤニヤとしている。この先、自分たちの正体を知った後に3人の女達の反応を楽しみにしているからだ。
「全くもって、興味ありません・・お引き取りください」
ルカは野外イスから立ち上がり、リュートの数メートル後方に立つ金髪の男を見ながら告げた。
「おいおい、本気で言っているのかな?」
「冗談に聞こえますか?・・私達は、こちらの男性と共に旅をしていますので」
ルカは、あえてリュートの名前を出さずに告げる。
「へぇ・・俺達より、その男の方が良いのか」
「当然です」
金髪男は大袈裟にため息を突きながら、仲間達と顔を見合わせた後にルカを見て告げる。
「俺らは、Aランク冒険者様だぞ?・・そこの男よりも強くて財力も上だ・・」
「Aランク冒険者様でしたか・・・・」
「やっと理解できたか・・それなら、向こうの俺らの場所で気持ち良くなろうぜ・・」
「はぁ・・リュート様、よろしいでしょうか?」
「うん・・レナ、やっちまいな」
「はっ・・仰せにままに・・」
レナは立ち上がり一礼すると、帯剣していた片手剣を抜刀することなく右手を下に下ろす。
「おい、俺らはAランク冒険者だぞ?」
「AランクAランクと雑魚が煩い・・・・リュート様に害なる存在は、斬り捨てるのみ」
レナから放たれる殺気に男達は反射的に抜刀し構える。
「貴様ら、剣を抜いたな・・」
「黙れ!お前が殺気を俺らに向けるからだ!」
「そよ風程度の殺気で、怯み抜刀したのか?・・底が知れるな・・」
ズンッ・・
さらに圧の強い殺気レナが放つと、金髪男の後ろにいた仲間の2人が意識を刈り取られ卒倒する。
「くっ・・クソが!」
金髪男が1歩踏み出す前にレナは一瞬で間合いを詰めて打撃技で吹き飛ばし、奪い取った片手剣で仲間の男達の片腕を斬り落としていく。
周囲に血飛沫を散らし倒れる男達を、ルカが時間差で治癒魔法ヒールをかけて止血し命だけは奪わないようにした。
「あっ・・忘れてた」
レナは、殺気で気絶し倒れていた男2人のことを思い出し、トコトコと歩み寄ると無表情のまま2人の右腕を斬り落とす。
「あらあら・・レナは無慈悲ですわ」
「ルカお姉様・・私は慈悲深い女ですよ?ちゃんと、皆と同じ姿にしてあげたのですから」
「はいはい、そうですね」
ルカは、意識が無い2人がレナに右腕を斬り落とされても無反応な姿を見ながら、ある程度赤い血を流させた後に治癒魔法ヒールをかけて止血させる。
「ルカお姉様の方が、無慈悲ですよ?」
「どうしてかしら?私は、傷を治してあげてますのに・・」
「お姉様、すぐに傷を治さずに流れる血を見ていたではないですか?」
「うふふっ・・だってすぐ治すのは優しくないじゃない・・失うモノは、ちゃんと失ってからじゃないと・・ね?」
そんな2人の会話を座って聞いていたリュートとミウは、恐怖のあまり2人抱き合って震えていたのだった・・・・。




