78話 ミウの存在
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ルカとレナは、宿の部屋のドア前で立ち止まっている。ドア越しにリュートがいるため、どうやって会えば良いかわからず戸惑っている。
「・・ルカお姉様」
「えぇ、わかっているわ」
ルカは覚悟を決めて、ドアノブを握りゆっくりとドアを開け始めたときだった・・。
「おかえり」
突然背後から声をかけられた2人は、バッと振り向き声をかけてきた主を見るとそこにはリュートが立っていた。
「・・リュート様」
「主様・・」
「ほら、部屋の前で突っ立てないで中に入れば?」
「「 はい 」」
リュートが2人に近付くと押されるような感じで2人は部屋の中へと入り、後から入ったリュートは部屋のドアを閉めてソファへと座る。
・・・・・・
ルカとレナは、借りてきた猫のように部屋の隅の方で立ったまま静かにしている。一方のリュートはソファで手紙に書かれている文字を読み2人に視線を向ける事はなく時間だけが過ぎていく。
手紙を読み終えたリュートは、未だに部屋の隅で立ったままの2人に顔を向けると、視線が重なったルカとレナは思わず顔を逸らしてしまう。
(あ〜顔を逸らされたか・・)
このまま声をかけて終わろうと思っていたリュートは、2人に顔を逸らされたことで次の行動を躊躇ってしまいタイミングを逃してしまう。
その日の夜に関係を修復できなかった3人は、微妙な距離感を保ったままリュートが先に眠りについた後にルカとレナは隣りの布団に入り魔力節約のため活動休止状態へと移行し静かな夜を過ごし朝を迎える。
いつものようにルカとレナは、同じタイミングで休止状態から活動状態へと移行し起き上がり、習慣となっていたリュートを起こす行動のため身体を起こすも隣りの布団にはリュートの姿はなく、ルカは思わず右手を布団の中に手を入れるも、リュートの温もりを感じる事はできなかった・・。
「リュート様!」
ルカはリュートを探すため部屋を飛び出そうとドアを開けた瞬間に左手を掴まれ制止される。
「お姉様!」
「放して、レナ!」
「ダメです!!」
「どうして!?リュート様が・・」
「お姉様!・・その格好で外に出るのですか?」
「あっ・・」
リュートからの教えで、寝る時は寝間着で寝るようにしていたため、ルカとレナは互いに薄着の格好をしている。それに気が付いたルカは、その突発的な行動を恥じて冷静さを取り戻すことができた。
「お姉様、着替えてから主様を探しましょう」
「レナ・・そうですね」
妹のレナに諭されたルカは、素早く着替えを終わらせレナと共に宿屋を出ると目の前に見覚えのある馬車が止まっていた。
「おはようございます」
「ミウちゃん?」
宿屋を出た2人に声をかけたのは、この街で生まれ育ったミウだった。
「はい、ミウです」
「ミウ、主様が・・いなくなったのだ」
「・・・・何を言っているんですか?ちゃんといますよ・・リュートさん!2人が起きてきましたよ〜」
「あいよ〜今行くから〜」
馬車の向こう側からリュートの声が聞こえ、視線をミウからリュートの声が聞こえた方へ向けると、リュートが馬車の向こう側から姿を見せる。
「おはよ・・ルカ、レナ」
「お、おはようございます」
「おはよう、主様」
「もう少しで出発するから準備してくれる?」
「「 はいっ 」」
何気ない会話を交わした3人は、それ以上言葉を交わすことなく自分の役割を果たすため行動を始める。そんな光景を見ていたミウは、溜息を着きながら小さく聞こえないように呟いた。
「もう、素直じゃないんだから・・」
ややあって、リュート達の出発準備は無事に終わった。
「出発します」
いつもの元気を取り戻したルカは、出発の合図をだし馬車を走らせる。
「ミウ!元気でね〜」
「また会おうね〜」
馬車が門の前に着いた時に道端から、アンジュとマリンの姿がありミウの見送りに来てくれていた。
「アンジュ、マリン・・また帰って来るから〜」
「「 またね〜!! 」」
「またね〜!!」
ミウは荷台から身体を乗り出し2人に大きく手を振って別れを告げる。その顔は笑顔であったものの瞳からは大きな粒の涙を流している。
馬車が門を通り過ぎても、手を振り続けているアンジュとマリンにミウも姿が見えなくなるまで力一杯手を降り続け応えたのだった。
「・・はぁ、見えなくなっちゃった」
「ミウ、街に残らなくて良かったのか?王都から帰る時にまたこの街に寄るのに・・」
「良いんですよ、リュートさん。2人は家の仕事を継いで街を拠点に・・私は、まだ冒険者ですからリュートさん達と共に生きていくと決めたんです」
「そうか・・まぁ、俺は行商人だからいずれは街に拠点を置くけどな」
「もう、そんなこと言われたら固く決めた意志が揺らぎまくるじゃないですか・・」
「わりぃ・・」
「次はやっと中央都市・・王都ですね?リュートさん」
「そうだな・・これでやっと貴族様の依頼も達成できるよ・・」
そう呟きながらリュートは荷台から見える景色を眺めていた・・・・。




