8話 招かざる客②
アクセスありがとうございます
このストーリーは、不定期に投稿しています。
リュートの店に入ってきた青年はそのままソファに座り顔を合わせると、リュートは嫌な顔をしながら長いため息を吐きながら口を開く。
「今回はなんだ?」
「・・まぁまぁ、話す前からそんな顔をしないでくれ。今回は、情報収集が主な依頼なんだよ」
「その感じじゃ、また貴族野郎の仕業か?」
リュートを見つめる青年は、少し笑みを浮かべながら上着の内ポケットから1枚の紙をテーブルの上に置いた後に告げる。
「商人ギルド職員が他国の人間を不法に入国させている情報があった。その主犯格を見つけ出し報告してもらうまでが依頼だよ」
「ふ〜ん・・っで、依頼主は?」
その言葉に青年は周囲を気にする仕草を見せるが、リュートは表情を変えることなく小さく伝える。
「安心しな・・すでに遮音魔法を発動している」
「・・相変わらずだね。商店店主の肩書きより大きな名声を欲しくないのかい?」
「俺は、ただの商店店主で十分満足してるよ。あの頃みたいに疲れたくないからな」
「はぁ、そうだったね。話は戻るけど、依頼主は商人ギルド長のジェシカ=アイゼンなんだ」
「ギルド長自らか?しかも、アイゼンって公爵家の?」
青年は笑顔で頷き肯定する。
「もちろん。ギルド長は、アイゼン公爵家の長女だしね」
「マジか・・・・」
今回の依頼主が商人ギルド長だったことに驚いたリュートだったが、さらに高級貴族の公爵家長女だったことに愕然としている。
「それで、この依頼受けてくれる?」
「はぁ・・もう、どうせ他に断られて最後に残った俺のところに来たんだろ?」
「・・・・・・」
「図星かよ!・・それで報酬は?」
「金貨5枚だ。期限は5日後の昼に私がここに来るまでだよ」
ソファを深く座り直し天井を見上げるリュートは、金貨5枚と小さく呟きながら依頼を引き受けることにした。
「それじゃ、5日後の昼に来るから」
そう言い残した青年は、ソファから立ち上がる際にもう1枚折り畳んでいる紙をテーブルに置いて店を出て行く。視線だけ動かし青年を見送ったリュートは、テーブルに置かれた紙を取り内容を読む。
「ギルド男性職員ハンザ。年齢は25歳で容姿は金髪碧眼でエルフ族と間違えられやすいが人族である・・か。えっと業務は接客と依頼書類の整理が担当で、街の西側住宅地に暮らし独身」
読み終わった紙をリュートは、内容を憶えたようで生活魔法で焼却し灰とさせ、窓の外に顔を向けるとすでに外は暗くなり始めていて、通りを歩く人達もまばらになっている。
「そういえば、あいつ遅いな・・」
リュートはそう呟き、無意識にリーナの帰りが遅いことを心配していることに気付いていないようだった・・。