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70話 リュートの危機

アクセスありがとうございます。



 ・・・・・・


「なんだ、絶望感に浸っているかと思って楽しみにしていたのに余裕じゃねーか」


「そう見える?・・もう絶望しまくりで涙が枯れちまったんだ」


 リュートは自由になっている両手を背中に回しゴクドに気付かれないようにした。


「ふん・・そろそろ着く頃だから、そのまま大人しくしておけよ?」


「大人しく・・ね。なぁ、1つ聞いても?」


「・・・・なんだ?」


「あの騎士団・・偽物だろ?」


「・・・・」


 無言のゴクドの眉毛がピクリと動き、間を開けて答える。


「寝言は寝てからにしな・・」


 そう呟いたゴクドはリュートから視線を外しシーツを下ろし去った。


(アイツ、嘘が下手だな・・確実に動揺していたし)


 ゴクドの仕草でそう感じたリュートは、自由になっている両手で再び聖剣をアイテムボックスから取り出し抜剣するも、あの女の声が聞こえることはなかった・・。


「なんだ、気のせいか・・」


 納得しながらリュートは聖剣の切っ先を鉄格子に当てると抵抗もなくスッと切断していく聖剣に驚愕し、そのまま手を止めることなく3本の鉄越しを切断できた事に興奮し囲んでいる鉄格子を切り落としはじめ、気が付いた時には檻は鉄屑へと姿を変えていたのだった。


「やベぇ、やっちまった・・」


 ふと我に返ったリュートは足元にある鉄屑の山を見た後に荷台を見渡すと子供が隠れられそうな木箱が2箱あり、興味本位に左側の木箱を開けて覗き込む。


「おぅ・・」


 覗き込んだ瞬間にリュートの鼻を刺激する香りが広がり、麻袋を持ち上げたリュートは聖剣を軽く突き刺し抜くと、小さな黒い粒が零れ落ちる。


「・・・・香辛料?」


 穴が開いた麻袋をアイテムボックスに急いで収納すると、木箱に入っている残りの麻袋を全てアイテムボックスに収納し蓋をして隣りの木箱へ視線を向けた。


「こっちは、何が入っているのかな・・」


 もう1つの木箱を開けると麻袋ではなく小さな木箱が何段も重ねて積まれてあって、その1つを手に取り開けるとキラキラと輝く宝石が入っていた。


「おぉ!・・宝石じゃん・・ってなんていう宝石か知らないけど・・」


 感動したような声を漏らすも、ただ宝石は高値で取引されるとしか聞いたことがないリュートは、宝石の知識は皆無なため流れ作業の手付きで次々に宝石が入った木箱をアイテムボックスへと収納していく。


「結構な量だったな・・でも、何も残さないで置くのもなんかアレだな・・」


 そう呟いて考えるリュートは、妙案が浮かんだ。


「コレなら俺も満足だ・・」


 リュートは大きな木箱に銅貨1枚を投げ込み満足すると、荷台の隅の方にある袋を開けて見るも欲しい物が入っていなかったため次の行動へ移る事にした。


「さてと・・収穫があったことだし、そろそろ帰りますか・・」


 

 聖剣をアイテムボックスに収納したリュートは、気配探知スキルを発動し周囲の敵の位置を把握した後に隠密スキルを発動し、風になびいている幌を少しづつ捲り顔を出す。


 リュートが乗せられた馬車の後方には、偽騎士団が5名いたが視線は馬の進む方向に向けられているため、幌が捲られている事に気がついてはいなかった。


(今が好機だ・・)


 そのまま大胆かつ豪快に外に出たリュートは幌の上へと筋力と全身のバネを利用し飛び移る。


「よっと!」


 ゴンッ!!


「ぐぇっ!」


 リュートが幌の上へと飛び乗った直後に進行方向から幌より若干高い位置に伸びていた拳大サイズの太さがある木の枝がリュートの後頭部に直撃し、鈍い音と共にリュートは意識を刈り取られ幌の上から転がり落ちる。


 ドスッ!・・


 ゴロゴロッ・・


 気絶したリュートは受け身をとることなく地面に叩きつけられ、転がると馬車の後方を走っていた騎士の馬に蹴飛ばされ人形のように弾き飛ばされ結果、道の隅へで放置された死体のようにうつ伏せで倒れている。


 リュートを蹴飛ばした偽騎士団の騎士が乗る数頭の馬は足運びが一瞬おかしくなるものの、隠密スキルで姿を眩ませているリュートに騎士達は気が付くことなく走り去って行く・・・・。


 道端で全身がボロボロになっているリュートは、意識が戻らないため発動していたスキルが不安定になり隠密スキルが解除され姿が暴露されるもののサギエル達の馬車は遠く離れ見つかることはなかった・・。


 それからどれくらいの長い時間が経過したのだろうか、リュートは何かの影響で意識を取り戻しゆっくりと目を開く・・。


「うぅ・・寒い・・」


 全身の激痛に襲われるリュートは、ただ目を開けるだけで体を起こすことができないでいる。


「雨?それに真っ暗だ・・・・今は夜か?」


 リュートの意識が戻らず日没を迎えた頃に雨が降り出し容赦無くリュートの体温を奪っていく。


「そうだ、ポーション」


 弱々しく呟いたリュートは、重く感じる右腕をゆっくり動かしアイテムボックスからポーションを取り出すも、左手の握力が足りず瓶のフタを取ることができない・・。


「マジかよ・・このフタはちょっと考えものだったな・・」


 右手に持つHP回復ポーション瓶のフタを取ることができないリュートは、飲むのを諦めて瓶を転がり落としコロコロと中身が入った瓶は道の真ん中へと転がって止まる。


「こんな夜に通るのは魔物くらいか・・」


 動かない身体で普段なら倒せる魔物も脅威と感じるリュートは、せめてもの抵抗なのか気配探知スキルを発動し周囲を探ると、偶然にも近くに魔物の気配はなかった。


「ふぅ・・とりあえず生き延びたな・・」


 寝返りもすることができないリュートは、降りしきる雨の中でただ顔に雨粒を受けながら目を閉じて朝が早く訪れることを願ったのだった・・・・。


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