68話 策略にはまる行商人リュート
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「行商人ごときが・・」
小さく呟くサギエルの声は近くに立つリュートでさえも届くはずもない声量のはずだったが、まるちどぉーるの聴力は人族を遥に凌駕していた。
「今、なんと!」
先にルカが抗議するかのように一歩前に踏み出すと、リュートは反射的に左腕を水平に伸ばしルカを静止する。
「も、申し訳ございません」
ルカもリュートの腕に触れた途端に反射的に謝り後ろへと下がる。
「行商人は使用人の調教もまともにできず、商売が成り立っていくと思うのかね?」
「あんたには、関係ないね・・それで、この村に何のようなんだ?」
リュートは、あえて挑発的にサギエルに問う。
「行商人に教える必要なぞない・・」
サギエルは、リュートから視線を外し村長メシウスの前に移動し威圧的に話しを始める。
「村長、今日までの未払い金である金貨10枚を払っていただけますかな?」
「き、金貨10枚をですか・・・・毎月銀貨5枚とのお話しでは?」
「今日までは、その話しで間違いありませんが、その契約期限は今日までということを忘れていませんかな?」
「あっ・・・・」
村長メシウスの表情は一気に青ざめ、身体が震え始めているとリュート達を村へと呼んだレオハルト3兄妹がやって来た。
「リュート!一緒にメシ食べようぜ?・・母ちゃんが呼んで来いって」
レオハルトに付いて来たソニアとソフィアの姿を見たサギエルの醜い瞳が宝石を見つけたように輝き見つめていた。
「レオハルト、本当か?」
「嘘じゃないさ、早く行こうぜ」
「「 お兄ちゃん、いこ? 」」
ソニアとソフィアがトコトコと歩きリュートの手を掴み見上げながら引き寄せる。
「わかったよ、ソニア・・ソフィア」
「「 うん 」」
この場にサギエル達が存在していないような空気が生まれ、リュート達がレオハルト達の家へと行こうとした時に我慢の限界を超えたサギエルが口を開く。
「待て待て!村長さん、ほんとに素晴らし逸材がこの村にあったのですね?」
「サギエルさん?・・どういうことでしょうか?」
「いや、もう彼女らは素晴らしく価値ある存在です。もう莫大なお釣りが出るほどですぞ?」
村長メシウスは、サギエルの言葉で状況を理解する。
「この子達を身売りしろと?」
「他で支払いができますかな?」
「それは・・」
「なら成立です・・ゴクド
「はい・・」
「チノトスと2人で、あの銀髪の子を丁重に私の馬車へと案内しなさい」
「心得ました・・チノトス」
「はっ!」
ゴクドと呼ばれた男は、森でサギエルと会話をしていた男でチノトスと呼ばれた男はゴクドと共にリュートの手を握っているソニアとソフィアへと近づいた。
「お嬢ちゃん・・今から街に行くよ?」
「おじさんは、だれ?」
「お父さんとお母さんの友達だよ?」
「嘘だ・・」
姉のソニアはリュートの左手をギュッと掴み否定する。
「あはは・・本当だよ。お、おじさんはレクトバニアさんの弟だから」
「あのレクトバニアおばちゃんの弟?」
「そうだよ、だから一緒に街に行くよ?」
「でも・・」
「ソニアお姉ちゃん?」
「ソフィア、どうしよう?」
「はぁ・・そんな嘘話を俺の前でしてもな・・はいそうですかと2人を渡す訳ないだろ?お前らバカなのか?」
ゴクドはリュートの言葉を無視してソニアに語り掛けた。
「ソニアちゃん、あの馬車に乗れば毎日美味しいご飯とお菓子が食べれるから・・さぁ、その人の手を離してこの手を掴んで・・」
「・・・・」
僅かにソニアの握る指先の力が緩んだことに気づいたゴクドは、隙をついてソニアを抱き上げ走ると反射的にソフィアがリュートの手を離し姉のソニアを追いかけてしまい、チノトスがソフィアを背後から抱き抱え同じく馬車へと駆け出してしまった。
「ま、待て!」
突然の行動にリュートは対応に遅れ2人を連れ去られてしまう失態を犯してしまった。
予想以上に銀髪少女の確保に成功したサギエルは、当初の目論み通り奴隷商に売り飛ばす人材を確保出来たことにほくそ笑むと背後にいた部下達は連携良くリュート達を囲み初動をさらに遅滞させる。
「そこをどけっ!」
「さて、なんのことでしょう??」
「「 お兄ちゃ〜ん!!・・・・ 」」
囲む男達の向こう側からソニアとソフィアの叫び声が遠くなっていく。本当の兄であるレオハルトは、幼すぎるためか現状が理解できず呆然と立ち尽くしているだけだった。
「理由無き斬り捨ては、投獄の対象ですぞ?」
「人攫いをしたお前らが、言える立場か!?」
「ふふ・・濡れ衣ですぞ?あの子とゴクドは共通の知人の名前を知っていましたから」
「ふざけんな!」
リュートは、近すぎる間合いのため数歩下がりアイテムボックスから片手剣を抜剣し構える。
「うわぁ〜!そんな物騒なモノを出すなんて・・皆さん、逃げなさい」
サギエルの言葉に囲んでいた部下達は離れサギエルの後ろへと移動した直後に、村の入り口の方から男の低い声が村に響いた。
「おい!騒々しいぞ!貴様らは、何をやっている!?」
リュートは片手剣を構えたまま男の声がする方向を見ると、そこには1人の騎兵がいて、その後ろに同じ格好をする騎兵達10人が隊列を組んで姿を見せたのだった。
「おぉ!・・これはこれは、騎士団の方ではありませんか・・もしや戦ですか?」
「各地の定期巡察だ・・ん?貴方は、商人の・・」
「はい、サギシグループ会長のサギエル=ハビコルです」
「そうでしたか・・サギエル殿の店で何回か買い物をしたことがありますぞ」
「それはそれは、ご利用ありがとうございます」
「さて、なぜ君はサギエル殿に剣を向けているのかい?事によっては、キミを捕縛せねばならん・・」
「・・ち、違う!コレには正当な理由があるんだ」
突然姿を見せる騎士の男に驚きつつ、抜剣をしているのは自分だけだと現状を理解してしまったリュートは取り乱してしまう。
「正当な理由か・・まぁ聞いてやろう」
リュートは、今まで起きていたことを必死に説明するも騎士の男がサギエルに問いただすと全て虚言だと覆され、すでにソニアとソフィアの2人は馬車へと連れ込まれたため騎士達の視界には2人が見えないためリュートよりサギエルの言葉を鵜呑みしてしまう。
(・・ヤバイ・・このままじゃ非常にヤバイぞ・・)
内心かなり焦っているリュートの心で乱れた魔力に反応するかのように、ルカとレナが傍によりリュートの手を握る。
「・・・・そうか、概ね事情は理解した。行商人リュート・・騎士団第1派遣隊長のフェニクス=カーキーが告げる。騎士団はキミを捕縛することを決定した」
「なっ!!」
その言葉を聞いたリュートは抗議の声を上げるものの聞き入れられず、密かに表情が歪むサギエルに殺意が芽生えるものの、フェニクスの宣言により部下の騎士がリュートを取り囲みロープで拘束し目隠しをした。
「リュート様!」
「主様!」
「リュートさん!」
ルカとレナ、そしてミウがリュートの名前を呼び近づこうとするも大盾を持つ騎士達に行手を阻まれ傍へ行くことができなかった・・。
そして、突然の出来事にどうしたらいいかわからない3人は、ただ連行されて行くリュートを黙って見つめることしかできなかったのだった・・・・。




