66話 村人達の異常と森に潜む集団
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「おい!何があった!?」
布団に横たわる男の横に膝をつき声をかけるリュートの声に閉じていた目を開け天井を見た後にリュートを見る。
「・・・・あぁ・・貴方は?」
「父ちゃん!俺が連れて来た行商人のリュートだ」
「ぎょ・・行商人?」
「そんなことは今はいい・・コレをすぐに飲むんだ」
リュートはレオハルトの父親の体を強引に起こし、ゆっくりとポーションを飲ませると少しずつ顔色が戻りまともに喋れるようになった。
「・・助かりました・・できれば妻も・・」
「安心しろ、奥さんにも飲ませたから」
リュートがレオハルトの父親にポーションを飲ませている間ルカとレナが協力して飲ませていた。
「こんな私にまで、ありがとうございます」
「「 お母さん!! 」」
自らの力で座ることができる母親に抱き付くソニアとソフィアを優しく抱き寄せる姿を見てリュートは微笑んでいると、父親が暗い顔になり正座をして頭を床につける。
「え?・・急にどうしたの?」
父親の態度を見て、瞬時にことの重大さを理解した母親も同じように頭を下げる姿勢をとり固まる。
「お?・・奥さんもどうしたんですか?」
「リュート殿・・私と妻のハルカに使ったポーションを支払うほどの財が手元にありません・・ですが、幼い兄弟を身売りすることもできません・・助けてもらった私を奴隷商に・・・・」
「リュート様!どうか、子供達だけは・・この老いた身体ではありますが、街の娼館で数回程でもこの身体で・・」
「奥さん!それ以上は、子供達の前で言ってはダメだから。それに、ポーション代を支払えなんて言うきも無いし」
「で、ですが・・無償で頂くわけには・・」
父親はリュートの言葉にたじろぐ。
「なら、行商人リュートの店名であるリューノスを覚えていてくれたら、それでいい」
「リューノス・・この店の名を覚えるだけでいいのですか?」
「あぁ、もちろんさ。それよりも、この村全体が異様に静かなんだけど住んでいる人が少ない訳じゃ無いですよね?」
「はい、数十の家族がこの村で生活していますから・・」
「ですよね・・代表の・・この村の村長に会ってみるか・・」
「村長なら、出て右にしばらく行った先の少し大きめの屋敷に住んでいます」
「わかった・・2人は動けるようになったら他の家の様子を見てください。見知らぬ俺達よりもマシなので」
リュートは、アメ玉が入った袋をレオハルトに手渡し家を出て村長が住む屋敷へと急いだ。
ドンドンドン・・ドンドン!
閉まっている家の引き戸を強く叩き、リュートは呼びかける。
「すいませーん!体調が悪くなっていませんかー?」
家の中で気配を感じるものの応答はない・・。
「・・警戒しているのかな?」
「リュート様、もしかしたら声を出せないぐらい悪化しているのでは?」
「かもしれないな・・男の俺が入るよりルカ達の方が少しはマシかもしれないから先に入って確かめてくれるか?」
「はい、リュート様」
ルカとレナが警戒しながらゆっくりと引き戸を開けて中を覗き込み、屋敷の中へと入って行き中からルカの声が響く。
「ごめんくださーい。少しお尋ねしたいことがありましてー」
ルカの大きな声にも村長らしき人物からの反応は無く、ルカの声が奥の方へと遠ざかっていく・・。
「リュートさん」
「ミウ、どうした?」
隣りで待っていたミウがリュートを呼びリュートが顔を向けると見上げているミウは、すでに魔眼スキルを発動し紋章が光り輝き浮かんでいる彼女の瞳と視線が重なる。
「・・村の東の方向の外れに集団がいます」
「魔物?」
「いえ、人のようです」
リュートは気配探知スキルを発動しミウが顔を向ける方向に意識を集中すると、確かに集団の気配があった。
「うん。たしかにいるね」
ミウとリュートが集団の動きを探っていると、引き戸が大きく開きルカが家から飛び出して来た。
「リュート様!先程の夫婦と似たような症状の家族がいます!」
慌てて出て来たルカの言葉を聞いたリュートは、アイテムボックスからポーションを取り出しながら先に家へと入ると、足音に気付いたレナがリュートを呼ぶ。
「主様!こちらです!」
レナの声を頼りに奥の部屋に入るリュートの視界には、4人分の布団が横一列に敷いてあり手前に横たわる男からポーションを飲ませる。
「おい!この村に何があった!?」
「・・うぅ・・家族を・・助けて・・ください・・」
「まかせろ・・」
リュートは、回復し始める男をゆっくりと寝かせると隣りで仲良く眠る幼い女の子2人に近づき抱き上げた・・・・。
「そんな・・」
男の隣りで寝ていた幼い女の子を抱き抱えた瞬間に、リュート手に伝わる冷え切った感触と曲がらない硬直した身体の感触。
次の子はと視線を移すも、既に事切れていることが女の子の顔色を見て理解してしまう、せめて大人である母親をとリュートは願うものの彼女もすでに息絶えていたのだった・・。
「・・ちくしょう。こんなことがあって良いのかよ・・」
もう自分の力ではどうにもならない現実にリュートの黒い瞳から涙がこぼれ落ちる。
「リュート様」
「主様・・」
「リュートさん」
悲しむリュートを見て、ただ名前を呼ぶルカとレナの2人とは違い人間であるミウだけは、リュートを抱き寄せ冷たくなった両手を包み込んだ。
「・・・・ミウ」
ただ1人行動に出たミウの姿に、まるちどぉーるであるルカとレナは自分がリュートと同じ人族では無いことを猛烈に悔やんでいた。
(リュート様の悲しみに寄り添うことができない私は、愚か者です)
(主様の悲しみがわかっていても、するべきことを知らない私は・・)
「すまない、家族を助けられなくて・・」
「・・そうですか。いえ、わかってはいたのですが、貴方が姿を見た時に期待した私が悪いのです」
しばらく黙り込む中で、男は顔を上げてリュートを見る。
「・・私は、村長のメシウスです。朝起きたら突然全身に激痛が襲い痺れて意識を失い気付いたら貴方達がいました」
「さっきの家族と似たような感じだな・・メシウス村長、俺は行商人のリュート。この村には、どれくらいの住人が?」
「今は、131人ほどの人間が生活しています。もしかしたら、私の知らないうちに街へと出かけている者もいるかもしれませんが・・」
「そうか、歩けるようになったら村人達を屋敷前に集めておいてくれ。俺達は、他の家も確認してくる」
「わ、わかりました・・もう少しすれば、きっと動けると思います」
リュートは村長の家を出ると、ルカとレナにポーションを100本手渡し他の家で倒れている村人を助けるように伝え先に行かせると、ミウを連れて東の外れにいる集団へと向かうことに決めた。
「ミウ、一緒に来て」
「はい!」
ミウは止めていた魔眼スキルを再び発動させると、リュートはミウの右手を掴み走り出し途中の家の壁際で止まった後に隠密スキルを発動し姿を眩ましてから村の外へ出て潜んでいる集団の元へと向かったのだった・・・・。




