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65話 村の子供

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 早朝から地方都市ザイエンの北門から1台の馬車が出て街道を走る・・その馬車を見送る門兵達は、普段とは違う行動をしているように見えるが、次の街を目指すリュート達の視線は街道の先へと向いていた。


 街道を数時間何事もなく走り続けていたリュート達の馬車の向かう先に10 才に満たない子供3人が道端に立ち手を振っている。


 その光景を見たルカは、リュートに同意を求めることなく個人の判断で馬車の速度を緩めゆっくりと子供達の前で止まり声をかけた。


「ボク達、どうしたの?」


「うぅ・・・・お、お姉ちゃん!父ちゃんと母ちゃんを助けて欲しいんだ!」


 真ん中に立つ男の子が、涙目に声を震わせながらルカに訴えると、男の子を挟むように立つ双子の女の子は涙を流し号泣し始めると訴えてきた男の子も連鎖反応するように号泣する。


「ど、どうしましょ・・・・」


 突然のことに対処法がわからないルカは戸惑っていると、荷台にいたリュートがルカの隣に座る。


「どうした、ルカ?」


「あ、あのリュート様・・この子達に呼び止められ要件を聞いた途端に泣かれてしまいまして・・」


「・・そうか。まぁ、ここは俺に任せて」


「は、はい・・申し訳ございません」


「気にしないで良いさ」


 ルカの頭を撫でたリュートは御者台から飛び降りて泣いている子供達の前に屈み視線の高さを合わせてから、ゆくりとした口調で子供達に声をかける。


「どうした?コレでも食べるか?」


 リュートはアイテムボックスに収納していた袋を取り出し、赤色や緑色そして白色の小さな球体を取り出し見せる。


「お兄ちゃん、コレはなぁに?」


 向かって右にいる女の子が泣き止みリュートに聞く。


「アメちゃんだよ」


「・・アメちゃん?」


「あぁ、アメちゃんだ。甘くておいしいぞ?口の中に入れてみな」


 リュートは白色のアメ玉を手に取り自分の口の中に放り込む。


「ん〜甘いなぁ〜」


「お兄ちゃんのほっぺが膨らんでる・・」


 リュートの右頬が丸く膨らんだのをみて女の子に笑顔が戻ると、いつのまにか男の子ともう1人の女の子も泣き止みリュートをジッと見つめている。


「あ〜んして」


「あ〜んむ・・・・あま〜い!お兄ちゃん!!」


「だろ?」


「ソ、ソニア・・人から貰ったらお金が・・」


「金なんかとらねーよ・・ほら、2人も口を開けて」


「あ〜〜んむ・・あまいね〜お兄ちゃん!」


「あっ・・ソフィアまで・・」


「ほら、妹2人が食べて兄貴だけがいつまでも食べないなんて情けないぞ?」


「くっ・・あむ・・あまい・・初めて食べた」


 長男と思える男の子は、覚悟を決めてリュートが持つ袋からアメ玉を1つ手に取り口に入れると初めての味に驚き再び涙を流す・・。


「3人とも落ち着いたか?」


「「 うん、お兄ちゃん 」」


「 ありがとう 」


 3人は笑顔を取り戻したところで、リュートは事情を聞く。


「それじゃ、俺は行商人をしているリュートだよろしく。声をかけたのは女の子はルカ。あそこで剣を持っているのがレナ。その隣にいるのがミウだ」


「お、俺はレオハルト」


「私は、姉のソニアだよ」


「わたしは、妹のソフィア」


「よろしくな、レオハルト、ソニア、ソフィア」


 3人同時に頷くところは、さすが3人兄弟だなとリュートは笑顔で頷き納得していると、レオハルトが思い出したかのようにリュートに迫る。


「リュート、俺達のと父ちゃんと母ちゃんを助けて欲しいんだ!」


「わかった。君たちの家に案内してくれるかい?」


「もちろん!」


「なら、馬車に乗って」


 リュートはレオハルトを抱き上げルカが座る御者台に座らせ道案内役を頼むと、続けてソニアとソフィアを抱き抱え荷台に乗り込んだ。


「「 きゃはっ・・たか〜い!! 」


 ソニアとソフィアは双子の影響なのか、反応が同じだった。


「怖くないかい?」


「「 へいき〜!! 」」


 ソニアとソフィアは人族では稀な銀髪銀目を持つ双子少女で、兄のレオハルトは赤髪赤目を持つ男の子だったがリュートは容姿が違う理由は聞かなかった。


「なら安心だ。ルカ!レオハルトの案内でこの子達の家を目指そう!」


「はい、リュート様」


 ルカは馬車を走らせ街道を移動し、途中の目立たない分岐路で細い道へと入って行くとしばらくして村が見えてきた。


「・・リュート様!村が見えてきました」


 村の柵は簡易的なもので一部は朽ち果てているものの、魔物が蹂躙した痕跡は無いが警備をする衛兵が誰1人もいないことにリュートは違和感を感じていた。


 村の中に入りとある家の前で馬車が止まると、レオハルトがルカと御者台を降りて1人家の中へと入って行く。


「「 お兄ちゃん、私たちも!! 」」


「わ、わかった」


 リュートはソニアとソフィアを抱いて荷台から降り2人から手を離すと、小走りに2人が家へと入って行く。


「リュートさん、やけに村が静かではありませんか?」


 後から降りて来たミウの問い掛けに、リュートは遅れながら村の雰囲気が異様なことに気づく。


「確かに・・この時間に外を歩く村人が1人もいないのは異様だ・・」


「主様・・周囲を探りますか?」


「いや、戦力が分断するのはマズい・・ここはしばらく一緒にいてくれ」


「はっ・・仰せのままに」


 レナは僅かに頭を垂れると周囲を警戒する行動を取り始める。


「・・・・リュート!早く来てー!」


 家の中からレオハルトがリュートを呼ぶ声が聞こえたため、リュート達は家の中に入り中途半端に開けられたままのドアを開けると、そこには布団に横たわり顔面蒼白の成人した男と女の姿があった。


「リュート、朝起きたら父ちゃんと母ちゃんが・・こんなことになってたんだよ!」


 2人の異常状態に気付いたリュートは、アイテムボックスからポーションを取り出しながら横たわる2人に駆け寄ったのだった・・・・。


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