7話 招かねざる客①
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アンナが不機嫌になり店を出てドアを見つめていたリュートは、隣にいるリーナを見る。
リュートの視線に気付いたリーナはリュートを見つめるが理解できず首を傾げていた。
「なぁ、リュート。その子をずっと雇うのか?」
バーナスのパーティーメンバーで盾役のリックスが口を開く。
「あぁ、リーナは接客が中心だ。その分、俺が楽できるし」
盾役でガタイの良いリックスは、リーナの全身を見て何故か頷いている。
「なんだよリックス・・うちの新人は渡さないぜ」
「リュート、この子の容姿なら向かいの店みたいに客引きをやらせたら、十分対抗できるんじゃないか?」
どうやらリックスは、リーナの美少女レベルを見て、客引きに使えると判断したようだ。
しかし、リュートの反応は鈍く窓の外に見える客引きお姉様を見ながら口を開く。
「リーナをそんな扱いはしないな。俺のポリシーに反するし、すでに目の保養になるお姉様達がいるし」
「へぇ〜意外だな、おまえ」
それ以上、リックスは何も言わなくなりバーナスが未使用のポーション瓶をカウンターに並べている。
「リュート、とりあえず、10本ずつ返しておくからな」
「あぁ、代金はリーナに渡してくれ」
バーナスは、リーナに使用したポーション代の銀貨20枚を手渡す。
「リーナちゃん。お釣りはいらないから」
「は、はい。ありがとうございます!」
「リーナ、銀貨20枚ならピッタリだから釣りなんかねーよ!」
「はぅ・・」
バーナスは笑いながら店を出る前にひと言伝えた。
「リュート、ダンジョン行く時にまた寄るから」
「わかった。早くポーションに頼らないぐらい強くなれよな!」
「うっせーよ!ばーか!」
バーナスは、捨て台詞を吐いて店から出て行く。
バーナスから銀貨20枚を受け取ったリーナは、どこにしまえばいいかわからず、1人狼狽えている。
「・・ど、どうしよう。こんな大金なんて初めて持ったよ」
店主のリュートは、銀貨の存在なんか忘れたようにソファへと座り外を眺めている。
すると、リュートが思い出したかのようにリーナに告げた。
「リーナ、それで必要な日用品とか買ってきな」
「えっ?・・でも・・」
「初仕事の初給料だ。早く行かないと商店が閉まるぞ?」
リーナは、リュートが言っている事が冗談だと思い、両手から溢れそうな銀貨をソファ前のテーブルに置く。
「わ、私は無給だと・・」
外を眺めていたリュートは、リーナを見上げ口を開く。
「んなわけねぇーだろ!そこまで俺は鬼畜じゃないさ。早く行かないと、本当に無給にするぞ?」
「ひゃいっ!」
リーナは、慌ててテーブルに置いた銀貨を拾い上げて店の出口へと向かう。
すると来客があったようで、不意にドアが開き入って来た客と出ようとしたリーナがぶつかる。
「きゃっ‼︎」
「おっと、大丈夫かなお嬢さん」
真っ黒なスーツを着た男が倒れそうなリーナを支える。
「は、はい。失礼しました」
「私は大丈夫ですよ。さぁ、どうぞ」
「すいません。ありがとうございます」
リーナは頭を下げながら店から出て行き、それを見送る男がゆっくりドアを閉めリュートを見る。
「チッ!」
リュートは、店に入った優男が厄介な青年だと気付き盛大な舌打ちで反応した。