幕間・・尋ね人
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リーナSide
長い眠りから目覚めるかのように目をゆっくりと開けるリーナの視界には、見慣れた天井があり自分の部屋にいることを認識するまでにそう時間はかからなかった。
「ゔぅ・・」
リーナは急激な喉の渇きに襲われ、自分の声じゃないひどく擦れた低い声を漏らすとバーナスが覗き込み視線が重なる。
「リーナ!」
「・・バ・・バーナス・・さん」
「心配したぞ?突然倒れ意識を失っちまうんだから・・まぁ、店の方は臨時休業にしているから安心してくれ」
「あ、ありがとうございます」
「2日も目覚めなかったから、どうなるかと思ったけどな・・」
「ふっ・・2日もですか!?」
リーナはバーナスの言葉に驚き勢いよく上半身を起こす。
「む、無理すんなよ!?たった2日だけだ・・きっと疲労が溜まってたんだよ」
「・・・・」
リーナはバーナスから過労で倒れたと告げられ反論できずにいると、不意に気を失う前の記憶が蘇りあの言葉が聞こえてくる。
『・・・・私は全て知っているんだから』
ここにはいなはずの女剣士メリナの冷淡な声が耳元で囁かれるように聞こえ、全身が硬直し一瞬だけ見えた気がするメリナの殺意を向ける眼差しを思い出す。
「っはぁ・・はぁ・・」
「お、おい大丈夫か?顔色が悪いぞ・・まだ寝ていた方が」
「いえ、だいじょうぶ・・もう元気になったから」
自身の不調を否定するかのようにリーナは掛け布団を退かし立ち上がると、自分の部屋を出て1階の売り場へと向かう。
階段を少しフラつきながら降りたリーナは売り場を目にすると、商品棚に陳列されている商品がまばらに置いてある状況だった。
「・・・・あれ、どうなっているの?」
急に部屋を出たリーナの後を追ってバーナスも売り場へと姿を現し、リーナが思っていることがわかっているかのように口を開いた。
「リーナが倒れた後にな、商人ギルド長が偶然来たから落ち着くまで店の手伝いをしてもらったんだ」
「そう・・なんだ。お礼を言いに行かないと・・」
「あぁ、落ち着いたら茶菓子でも持って一緒に行こう」
「・・はい」
店内を見渡しながら歩いていたリーナは、返事をした後にバーナスの前で立ち止まる。
「バーナスさん・・」
「あのな、リーナ・・俺のパーティーが2人抜けちまってそろそろ新しいメンバーを加入して金になる依頼をしないと貯蓄の方が心許無くなりそうなんだ」
「・・それって、日帰りじゃない依頼を受けるってことですか?」
バーナスの申し訳なさそうな表情を見たリーナは、心の底から不思議と安堵感が湧き上がったためクルッと回り背中を見せ僅かながら笑みを浮かべている表情を見られないようにしていた。
「すまない、リーナ・・」
「いいんです。バーナスさんは冒険者で私と違って街の外で活動するのが当然ですから。商人の私は、この店の中で帰りを待つだけですから」
「リーナ・・」
それから2人は2階のリビングで一緒に昼飯を食べ終えると、依頼を受けるため冒険者ギルドへと向かうバーナスを店先で見送ったリーナは、彼の後ろ姿が見えなくなると店の中に戻りポツンと置かれている椅子に座り外を眺めている。
「ふふっ・・やっと1人になれた」
笑みを浮かべ独り言を吐くリーナの瞳は何かを求めているような悲しい瞳をしていると店に誰かが来たようだ。
カランカラン・・
ドアが開き誰かが入って来たことを知らせる鐘が鳴り響き、入り口へと視線を向けると商人ギルド長ジェシカが姿を現す。
「リーナちゃん!・・倒れたって聞いたけど、ここにいて大丈夫なの?」
リーナの身体をペタペタ触るジェシカにリーナは驚きつつ答えた。
「・・はぃ。今はこのとおりです・・」
「よかったわ・・最初から1人で無理しちゃダメだからね」
リーナの隣に置いてある椅子にジェシカも座りリーナが倒れたことを話す。
「ありがとうございます、ジェシカさん」
「別に良いのよ・・体調が万全になったらまた商いを始めてね・・なかなか評判が良かったから」
「はい、頑張りますね」
カランカラン・・
リーナとジェシカが話しをしていると、新たな来客がドアを開けて入ってきたようだ。
「すいません、今日は営業してないんです」
「ん?・・あぁ、すまない。ドアに臨時休業と掲げられていのは知っている。俺は、ここの店の店主宛の荷物を届けに来たんだ」
男は、声をかけたリーナを見て答える。
「わたし・・店主にですか?」
「君が店主なのかい?名前からにして男だと思っていたが・・おっと、申し遅れた。俺はSランク冒険者のヨルンだ」
Sランク冒険者ヨルンは、短髪の金髪で金色の瞳を持ち腰には両手剣を帯剣している。
「この店の店主のリーナです」
リーナが椅子から立ち上がり名を告げて一礼すると、ヨルンは眉間にシワを寄せる。
「・・リーナさんか。これは参ったな・・リュート殿へ渡す物を預かり依頼主と約束したこの日になんとかこの街に辿り着いたというのに」
「・・・・リュートさん宛の荷物ですか!?」
ヨルンの口から出たリュートの名前に、リーナは強く反応する。
「あぁ、コレをリュート殿に渡すよう依頼されていてね・・」
ヨルンは空間魔法を使い手紙を取り出し2人に見せる。
「・・でも、もう貴方が探すリュートはこの店にはいないわよ」
ジェシカは、落ち着いた声でヨルンに告げると、リーナはジェシカの顔を見てすぐにヨルンの顔に視線を向ける。
「・・一足遅かったか」
「あの!・・良かったら、わたしがソレを預かりましょうか?」
「君は、リュート殿の居場所を知っているのかい?」
「いえ・・居場所は知りません・・でも、きっといつかここに帰ってくることは間違いないと思います。だから、私が預かっていた方が確実に彼に渡せると思います」
長い沈黙の中で、ヨルンは口を開いた。
「・・・・なぜリュート殿がここに戻ってくると?」
「そ、それは・・詳しくは言えません」
リーナはヨルンから目を逸らす。
(ん〜俺が持ち続けるよりも、預けた方が良いのか?)
ヨルンは考えてから答えを決める。
「わかった。コレは、君に預けよう。必ずリュート殿に渡してくれ」
「・・わ、わかりました。必ずリュートさんに手渡します」
「ありがとう」
ヨルンはそう言い残し店から出たのだった・・・・、




