63話 2つ目の街ザイエン
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謎の集団を率いるゾクシス達を迎え討ったリュート達は馬車を走らせ山を越えると、山道も緩やかな下り勾配となり木々の向こう側に見える景色も少しづつ広がりはじめ、御者をするルカの視界に広がる平野にポツンとある街並みが見えた。
「リュート様、街が見えました!」
ルカの弾む声に反応したリュートは、ルカの横へと移動し左肩に手を置いて景色を眺める。
「・・ルカ、あれはザイエンっていう街みたいだよ」
「ザイエン・・ですか」
「あぁ、まぁオレも初めて行く街だから名前しか知らないんだけどね」
「リュート様も知らない街・・何があるか楽しみです」
そう呟くルカの頭を撫でながら、リュートは荷台へと戻ると早く街へと行きたいのか馬車の速度が少し速くなり麓へと下りて行くも、日没が先に訪れ始めたため山を下りたところで野営をすることになった。
今夜の野営は街から近い距離でもあり、テントを設営することなく夕食も簡単に携行食で済ませた4人は、夜を迎え辺りが暗くなったと同時に眠りにつくことになった。
「・・・・リュート・・さま・・」
寝静まった荷台にルカの小さな声がリュートを呼ぶ。
「・・どうした?」
「・・あ、あの・・朝のお約束を・・」
「あっ・・そうだったね。ゴメンゴメン」
リュートの右側で横になっているルカを抱き寄せるリュートは、月明かりで見えるルカの不安が混じる瞳を見つめると笑顔を見せ安心させてから口付けを交わした。
そのまま近くで寝ているミウやレナが起きないよう音を出さずに魔力譲渡が始まると、リュートの魔力を注ぎ込まれていくルカの身体は次第に熱を帯びて呼吸が深く荒くなっていった。
「・・ルカ、これ以上は」
「もう少し、リュートさまぁ・・あと少しだけでいいので、お願いします」
「しょうがないな・」
すでにルカの保有魔力量の限界を超えているのにもかかわらず、ルカ本人が珍しく求めてきたためリュートは一時的に止めていた魔力を再び注ぎ込むと、すぐにルカに変化が起きはじめる。
「んぁ・・」
我慢できず甘い声を漏らすルカは、ギュッとリュートを数秒間強く抱き締めた後に力尽きるかのように脱力し無言のまま潤んだ瞳でリュートを見つめている。
「今夜は、コレで終わりだからね」
ゆっくりとうなずいたルカは満足そうな笑みを浮かべて、瞳を閉じながら仰向けとなり活動休止状態へと移行し再び荷台は静寂に包まれ、そのまま朝を迎えるハズだった・・。
「・・主様」
リュートとルカの魔力譲渡の一部始終をこっそり見ていたレナは我慢できず、リュートからルカが離れた隙をついてレナが反対側から身体を寄せ密着する。
「レナ・・」
「まだ必要のない私ですが・・ほんの少しだけでもいいので、レナにもお情けを・・」
普段見せているレナのサバサバした口調とは違い、恥じらいを感じさせるレナの仕草にリュートの心はドキドキしている。
「んぉ・・おぅ」
姉のルカとは正反対に積極的ではなく遠慮気味にリュートから魔力譲渡を終えたレナは、何も言わずリュートに背中を向けて活動休止状態へと移行していった・・。
少しだけ間隔を開けて横になっていたミウは、リュートとの魔力共有の繋がりが僅かながらあるため2人の魔力譲渡が行われていることに気がつくものの起き上がることなく終わるのを待っている。
(いいなぁ・・私も魔力譲渡受けたいけど、キスなんて恥ずかしくてできないよ・・)
キスに躊躇うミウは、一歩踏み出すことができず諦める決断をして必死に別のことを考え気を散らしていると、いつの間にか寝落ちしていたのだった・・。
たまたまリュート達が野営した場所は、魔物が出没しない場所だったようで深夜の襲撃もなく無事に朝を迎えていく。
最初に起きたのは活動休止状態になっていたルカとレナの2人で、ほぼ同時に起き上がると自然と互いに顔を向け笑顔を見せ合う。
「おはようございます、ルカお姉様」
「おはよう、レナ。どうやら、貴方もリュート様から貰ったようですね」
「は、はい」
「良い顔つきになっています。さぁ、リュート様が起きる前に朝食の支度をしましょう」
「お手伝いします」
小さな声で言葉を交わす2人は荷台を揺らすことなく外へと出ると、ルカが朝食の準備をはじめレナが馬の世話を素早く終わらせルカの元へと向かう頃に荷台からミウが姿をあらわす。
「おはよ〜です〜」
「おはようございます、ミウさん」
「おはよう、ミウ」
眠たそうな目を擦りながらミウは、ルカとレナがいる場所へと歩き、置いてあった野外イスに座り朝陽を浴びながら瞳を閉じると、そのまま二度寝をしてしまう。
そんな子供のようなミウの寝姿にルカとレナは苦笑いしながらも、まだ荷台で寝ているリュートが起き上がる前に急いで朝食を作り終えると、タイミングを測っていたかのようにリュートが荷台から出てきた。
「リュート様、朝食の支度は整っています」
「・・ありがと〜」
ルカが朝食ができたことをリュートに伝えると、返事をしてくれたものの本人は馬車の裏へと移動して行く。
「リュート様?」
リュートの行動が理解できないルカは、そのまま対応に困っているとレナが先に動きリュートの後を追う。
「私が様子を見て来ます」
ザッと地面を蹴り馬車の裏へと姿を消すレナの背中を見送ったルカは、短く溜息をついた後に朝食の配膳を始め2人が戻ってくるのを待つことにした。
しばらくした後に、リュートとレナが戻ってくる姿はいつも通りで心配をしていたルカは1人安堵し、何も言わずそのまま2人を出迎え、ミウを起こした後に4人で朝食を摂る。
朝食を食べ終えた後は、まだ野外イスに座り朝陽を浴びながら動きたくないと愚痴をこぼすリュートを、ルカとレナが抱き抱えて荷台へと無慈悲に運ぶ様子にミウは、あわよくば自分も座ったままでいようと思っていた気持ちをすぐに排除し急いで片付けを手伝い荷台へと乗った。
「出発します!」
ルカの掛け声の後に馬車が動き出し、昨日見えていた街のザイエンへと向かい、昼過ぎ辺りに無事に辿り着くと門兵から受ける点検でルカとレナは使用人だと告げ、通行料銀貨2枚を支払い街へと入ることができるとそのまま馬車を預け街の大通りを4人で歩く。
「初めて来た街だけど、前居た街より人が多い気がするね」
「そうですね、この街から3方向へと続く街道の先にある街へと行くための起点となる街ですから」
「へぇ〜そうなんだ・・」
「はい、私も故郷を出て冒険しながらこの街に寄りましたから。ちなみに、次に向かう都市は北門を出ますからね」
「冒険者としての経験は、俺よりミウの方が経験豊富だね」
「いえ・・ただ依頼を受けながら旅をしていただけなので」
そんな会話をしながら街を歩くリュート達は、宿屋を探しながらついでに途中にある商店で買い物をして楽しい時間を費やしているのだった・・・・。




