62話 レナとリュートの戦力差
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リュートが荷台から勢い良く飛び降り地面に着地する後ろ姿を、荷台から1人ミウが心配そうに見守る・・。
「あっ!」
短く息を吐くように小さなミウの口から漏れた声は、着地に失敗し派手に転がっているリュートの残念な姿を見て無意識に出た彼女の反応だった。
「あっ・・足がっ・・」
漆黒のドラゴンとの戦いで失った両足は、ルカの治療魔法で再生したもののリハビリが十分できていなかった影響で、今まで通りの運動能力を発揮することができずリュートの意思とは関係なく着地の衝撃に耐え切れずそのまま残念な姿を晒すことになってしまったのだ。
「いってぇ〜マジかよ〜」
片手剣を地面に垂直に突き刺し杖代わりにして、両足を小刻みに震わせながら立ち上がるリュートは元冒険者だけあって武器を手放すことはなかった。
「おい!・・なんだ、てめぇは!!」
視線を足元に向けていたリュートは男に声をかけられ顔を上げると、7人の男達が自分を取り囲んでいる状況に陥っていた。
「い、いつのまに!?」
「あんな派手に転べば、こうなるのは当然だろ!?・・お前は護衛冒険者か?」
「護衛?・・ただの行商人だ!お前らこそ、誰だ?」
「これから死ぬ奴に、教える必要はない!」
リュートに声をかけた副リーダーのホエルが告げると同時に仲間の男達がリュートへと襲いかかる。
ドンッ!!
不意に耳を塞ぎたくなるような爆発音とともに視界を奪う砂煙が大量に舞って、ホエル達とリュートの視界を奪い身動きが取れなくなったと同時に、リュートは左手を掴まれてしまう。
「・・主様。レナの後ろへお下がりください」
リュートは、返事を返すいとまもなく優しく左手を引かれた方向へと移動すると、レナの背中が目の前にあり掴まれていた手が解放されると、リュートは無意識にレナの背中に触れる。
「はぅ・・主様・・」
レナはリュートに背中を触れられたことにより、全身にビビビッと心地良い電撃が流れるような錯覚になると同時に忠誠心が心の底から湧き溢れ感情が一気に昂ってしまう。
「んぅ・・あははははは・・」
何かが壊れたように狂気に笑うレナは、左手を背中に回しリュートの手の上にソッと置いてリュートの感触を確認した後に、まだ視界が悪い中へと駆け出しリュートの視界から姿を消す。
「うぎゃっ!!」
「どこだ!チクショー!」
「やめろ!・・オレだぁ・・がぁっ」
姿を消したレナをリュートは気配探知スキルで気配を追っていると、素早い動きで男達を斬り倒しているレナの気配があった・・。
「すげぇ、Sランク冒険者のようだ・・」
そう呟いているリュートの視界を遮っていた砂埃は、少しづつなくなり正面に立っているレナの後ろ姿と地面に倒れ絶命している7人の死体が無惨に転がっていた・・。
「主様・・」
クルッとリュートの方を向いたレナは、右手に持っていた片手剣を地面に一振りして刀身に付着していた血糊を吹き飛ばすと、片手剣は姿を消し手ぶらのレナが笑顔で歩み寄って来る。
「レナ・・ケガはないかい?」
「はい、擦り傷も受けていません」
「そうか・・それよりも、道を塞いでいた男達は?」
「一撃で排除し・・いえ、いつのまにか死んでいましたから問題ありませんでした」
レナはいつもの笑顔でリュートを見つめる。
「つ、強いなレナは・・」
「いえ・・私の強さは、主様の実力には程遠いです」
謙遜し下を向くレナを見ながらリュートは、レナの右手を握る。
「わかったよ。そういうことにしておこうな・・さぁ、馬車へ戻ろう」
「あ、主様・・」
リュートに強引に手を引かれ、引っ張られるように歩き始めるレナはリュートの後ろ姿を見て微笑みながら少し足早に歩き隣りを歩き歩幅を合わせる。
少し先で止まっている馬車へと向かう2人に、ミウとルカが走り寄って行く。
「リュートさ〜ん!」
「ミウ、情けない姿を見せちゃったね・・」
「まだ完璧じゃないんですから、無理しないでくださいよ・・もう、心配したんですからね?」
「ごめんごめん・・まさかコケるとは思ってもいなかったよ・・」
顔を見上げながら心配するミウの隣りにルカが立ち並ぶ。
「リュート様、無理だけはしないでください・・できれば、しばらくは単独行動を控えて欲しいです」
「・・・・だよね?結局レナに助けてもらったしな」
恥ずかしそうに頭を掻くリュートを見つめるルカの青紫色の瞳は潤んでいて、今にも涙が零れ落ちそうになっていた。
何事もなく合流したリュート達は、道の先の隅で絶命しているゾクシスの所持品を調べると冒険者が持つギルドカードがあり、どうやらAランク冒険者だったようだ。
「・・コイツ、Aランクだったんだ」
「みたいですね、リュート様」
「死体の放置は、マズいかな?」
リュートはルカ達3人に顔を向けると、ミウが口を開いた。
「放置だと、魔物が死臭を嗅ぎつけて集まってきますから良くはないですね・・」
「ならば、燃やして炭にしてしまえば問題ないのでは?」
「おぉ・・それも一理だね、レナ」
「主様、このレナにお任せを・・」
レナは片膝をついて、リュートに頭を垂れる。
「ここは、レナに任せた方が良いな。よろしく頼むよ」
「はっ!・・仰せのままに!」
レナは立ち上がると、再び片手剣を魔力で実体化させるとともに白銀の刀身が紅炎に包まれ、そのまま切っ先をゾクシス達の死体へと向けるとボッ!っと大きな音がゾクシス達の死体から聞こえるとともに紅い炎に死体が包まれ一瞬で炭化し上昇気流に乗って空へと散っていった・・。
「「「 ・・・・・・ 」」」
レナの動きを見ていたリュート達3人は、ただただ無言でその姿を見守っているだけだった。
「終わりましたぞ!主様!!」
「お、お疲れ様・・それじゃ、この山の向こうにある街へと急ごう」
馬車に乗り込んだリュート達は、山を超えた先にある街へと目指し山道を移動し始める。その目指す街は、あの逃げて行った2人が向かった同じ街だと知ることもなく・・・・。




